白蛇伝追記　弥栄12 成就の雨

傘をさして成就の雨を確かめながら三人表に出る。
屋敷の角に不思議な道しるべ

よし子・・差し出がましくは御座いますが、お坊
様、御教え下さいませ。

僧侶・・・はい、

よし子・・何故、般若心経を始めに唱えて下さっ
たのですか？

僧侶・・・般若心経はたいへんに難しいお経です
が、「この世には不変のものなど、有りません。
人間がそう思うからこだわりが生まれるのです。
全てのこだわりを捨てて生きなさい。」と説か
　　　れたものです。
此方の霊体はご成仏を願っておいででしたし
ご家族の幸せも祈っておいででし
たので、このお経にいたしました。

よし子・・よく解りました。ありがとうございま
した。

(安代の為に改めていのるよし子。 )

僧侶・・・奈良原には先に生きている白蛇様が夜
のうちに玉川を登り移動されるはずで
す。

よし子・・なぜ奈良原だと思われるのですか？

僧侶・・・四国には南朝の長慶天皇様が奈良原の
地に来られた話があります。貴方の夢
を覗かせていただきますと、その山深
く川が流れる、全ての情景が、奈良原
と重なります。大変 由緒ある白蛇様
が、故郷となさるにふさわしい場所だ
と感じました。
又白蛇様と天皇家は昔から切り離す事
は出来ません。

よし子・・有り難い事です。白蛇様が今の奈良原
をお気に召せばよろしいですね。

巫女・・・奈良原の山も川も貴女がかつて夢で見
た風景のはずです。
また、先の読み取りのとき、かつて
昔、奈良原から今治の白蛇様に輿入れ
が有った事うかがいました。
見えない世界のことですが、白蛇様は
お里帰りされて ご満足だと思います。

僧侶・・・白蛇様が奈良原に戻られた。というこ
とは、天皇家のご繁栄弥栄でございま
す。さあ、我等もご祈念申し上げまし
ょう。

三人祈りを込めて手をあわせる。

ー暗転ー