【特別展望編】朝日杯FS、逆神様のお告げを賜りました――長柄高校馬事文化研究部活動記録㉙

璃子「お待ちかね。今回の部活は特別編として、今週末に迫った朝日杯フーチュリティステークスを展望するよ」
恵麻「今日は、朝日杯でしこたま馬券を買うであろう我らが顧問、田村宮子先生にもご同席していただきます」
宮子「当てるわよ!」
璃子「先週の阪神JFは惜しくも3連複をはずしてるだけに、気合入ってるねえ、宮姉。さて、レース展望の前にまず、このレースの施行条件を押さえとこっか」
姫「朝日杯フーチュリティステークスは、今年で73回目を迎える2歳馬によるGⅠ競走よ。牡馬、牝馬ともに出走できるけれど、前週に牝馬限定のGⅠ、阪神JFがおこなわれることから、こちらの朝日杯は実質的に牡馬の2歳チャンピオン決定戦にと位置付けられるわね。コースは阪神競馬場、外回りの芝1600m。コーナー2回の、いわゆる『ワンターン』のコース形態で、最後の直線は約470m。ゴール前には1.8mの勾配をもつ急坂もあるわ。枠順や展開によるまぎれは比較的少なく、どんな脚質の馬も力を発揮しやすいコースとも言われているわね」
璃子「かつて中山1600mでおこなわれていたころとは違う性格のレースになってるよね。今年は牝馬1頭を含む15頭が覇権を争うわけだけど、私たちのイチ押しは……?」
ハヤタ「ジオグリフだね」
恵麻「即答だねえ。この馬はデビューした時からかなりの大物と高く評価してきたもんね」
ハヤタ「筋肉質だけど柔らかみもあって、素晴らしい馬体だよ。ひと目見て一流馬の風格みたいなものを感じさせたよね。ストライドの大きさと回転の速さを両立できてるし、ここでも普通に走れば勝ち負け必至だと思う」
姫「前走、札幌2歳ステークスの勝利も『強い』のひと言だったものね。後方から進めてあっさりと馬群をかわし、ゴールまで後続を引き離す一方。搭載エンジンが違うといった印象だったわ」
璃子「いっぽうで、新馬戦も札幌2歳Sも時計面はそれほどでなく、相手のレベルが低かったのでは? って見方もあるけど、そのあたりはどうかな?」
ハヤタ「たしかに前走のメンバーは楽だった印象だけど、それでもジオグリフ自身もまだ全力を出しきってないように見えたから、大丈夫なんじゃないかな。相手が上がれば、それに合わせた競馬もできると思うよ」
璃子「なるほど。新馬戦で負かした2、3着馬はすでに未勝利勝ちして、オープン、重賞のレースでもそれぞれ好走してるからね。たしかに相手は上がるけど、実績は信頼していいってことか」
ハヤタ「時計面の心配点を挙げるなら、超スローペースになって究極の瞬発力勝負になったときかな。この馬はどちらかといえば持続力に長けたタイプだから、直線の前半で早いラップで突き放されると、最後届かないこともあるかもしれない」
恵麻「展開面だね。展開のまぎれは少ないコースとは言ったものの、ほかの馬との比較ということでは、瞬発力タイプがライバルになりそうってことだね」
姫「今年のメンバーを見渡すと逃げ・先行候補も複数いるからそこまで極端に遅い流れにはならないと見てるけど、いちおうリスクは頭に入れておいたほうがいいわね。瞬発力をもつライバルとなると、どの馬になるんだろう?」
ハヤタ「やっぱり、セリフォスじゃないかな」
恵麻「新馬、新潟2歳S、デイリー杯2歳Sと、重賞2つを含むデビュー3連勝で参戦してくる馬で、1番人気はこちらになりそうな気配だね」
ハヤタ「脚の長さもあって結構シャープな体つき。いい筋肉の付き方をしているし、この馬も一流の風格を漂わせてる。前走のパドックでは夏に比べて馬体面の成長も感じたよ」
璃子「ここまでの3戦はいずれもスローペースを速い上がりで勝ち切ってる。たしかに瞬発力は見せてきてるね」
恵麻「前走はクビ差の辛勝とはいえ、大外を回してのものだったからね。着差以上に強さを感じさせるレースだった。今回と同じコースを経験してる点も強みだよね」
姫「ひと叩きして中4週のローテーションも理想的だし、2歳戦に強いダイワメジャー産駒。大きなマイナス材料が見当たらなくて、1番人気になるのもうなずけるわ」
ハヤタ「うん。さっきも言ったように、展開が瞬発力タイプ向きになれば、ジオグリフを逆転してなんら不思議じゃないよ。勝つのはジオグリフかセリフォスのどちらかになる公算が高いと思う」
璃子「ジオグリフは3ヵ月半ぶりの実戦で、初のマイル戦でもある。調教過程は順調で、行きっぷりもかなり良くなってるそうだから距離の不安はあまりなさそうとはいえ、初物だけに心配点ではあるよね……。ううむ、そう考えるとセリフォスが勝ちそうな気もしてきた……」
恵麻「まあ結論は急がず、ほかの有力馬にも目を向けてみようよ。無敗での参戦ってことでは、ドウデゥースダノンスコーピオンドーブネの3頭もそうだよね」
ハヤタ「ドウデゥースはパワーあふれる馬体が目立つ馬だね。1800m戦で2連勝だけど、マイルも守備範囲だと思う」
姫「ダノンスコーピオンはデビュー前から評判も高かった1頭ね。前走は辛勝だったとはいえ、2着のキラーアビリティも力のある馬だし、着差以上に力は示してると思うわ」
ハヤタ「ただ、馬体の完成度という面ではまだ上がありそうかな。脚質的には持続力タイプだと思う」
恵麻「ドーブネはセリで5億円を超える高値で取引された馬で、これもずいぶん話題を集めた」
ハヤタ「お値段に見合うところまで行くかどうかはさておき、ディープインパクト産駒らしく俊敏な筋肉は目を引く。こちらは背中が短くて瞬発力タイプ。現状では行きっぷりが良すぎてマイル戦だとどうかなと思うけど、うまく脚を溜められれば上位に食い込んでも不思議じゃない」
璃子「素質馬3頭は現状でどこまで上位に迫れるか、といったところか。あと、馬券的におもしろそうな穴馬も何頭か考えたいよね」
恵麻「展開面から逃げ候補の2頭、オタルエバーとかブルパレイとかの逃げ粘りを期待していいんじゃないかな」
璃子「後ろが牽制しあうとやっぱり前にいる馬の残り目は気になるよね」
姫「あとはアルナシームもどうかしら。祖母がドバイマジェスティで、アルアインやシャフリヤールの近親よ。大舞台に強い血がここで騒ぐかもしれないわよ」
璃子「いいね。それじゃあ、シルシでまとめると、こんな感じかな。

◎ジオグリフ
〇セリフォス
△ドウデゥース
△ダノンスコーピン
△ドーブネ
△オタルエバー
△ブルパレイ
△アルナシーム

上位2頭が抜けた存在と見て、あえて黒三角なしで勝負だ!」
姫「となると、ジオグリフかセリフォスが勝ってほしいところね、私たちとしては」
恵麻「馬券はいろいろ買い方がありそうだけど……ここはひとつ、田村先生の見解をお聞かせ願えれば」
宮子「やっと出番が来たわね。ここまでの検討に、私が独自に仕入れた情報も加味して、買い目ははっきりしたわ」
ハヤタ「独自に仕入れた情報、と言いますと……?」
宮子「スポーツ報知の記事で読んだんだけれどね、ドーブネのオーナーである藤田晋氏は、馬主活動と併せて馬券も楽しまれてるらしいの。普段は1レース10万円までと決めてるんだけど、自分の馬とGⅠだけは特別に額を増やしているとのこと。そして今回はそのふたつの条件が同時にやってくる。となれば今回、藤田社長はドーブネの単勝に数百万はぶっこんでくると予想できるわ! セリフォスも人気を集めることも合わせ、ジオグリフの単勝はかなりおいしいオッズになると期待できる……! ここはもう、ジオグリフの頭にぶっこんでいくしかないでしょう!」
璃子「と、逆神様は申しておりますので、判断はみなさまご自由に」
宮子「誰が粗〇やねん!」
ハヤタ「セリフォスの人気はともかく、藤田社長がどう買うかは完全な憶測でしかないと思うんですけど……」
宮子「誰が〇品やねん!」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?