小粒なゴルシはピリリと辛い?――長柄高校馬事文化研究部活動記録⑥

 今日も今日とて、僕たち馬事文化研究部の部活は終了した。
 七月に入り、中央競馬の開催は福島、小倉、函館の三場に移行。「宝塚記念も終わって、炎の十番勝負の結果も出たし、ここからが本格的な夏競馬だよ」と室谷さんは言っていた。ちなみに十番勝負では残念ながら辻35ポイント賞はもらえなかったらしい。おもしろいけど難しいよね、十番勝負。
 ちなみにこの番組について室谷さんと阿久津さんと渡辺さんの三人は、
「そういえばさ、あの番組、VA〇da君だけ隔離する意味あるの?」
「フリップ芸キャラでしゃべらないし、どこから飛沫が飛ぶんだって話よね」
「むしろ無駄口を叩く三蔵さんのほうがよっぽどリスクなような」
 などと盛り上がっていた。
 ……あいかわらず危ない脇道に逸れてるな。三場開催になって新馬戦の数も増え、結果の検討にもますます時間がかかるようになっているんだから、なるべくさくさくいきたんだけど。あと、三蔵さんは軽快なトークで視聴者を楽しませているのであって、無駄口を叩いてるわけじゃないから。
 ……まあツッコめばツッコむほど藪蛇になりそうなので先に進もう。とりあえずはまず、先週分の新馬戦10レース分の出走全頭評価一覧を公開したい。

 それじゃあここからは、各レースについてのコメントを議事録からピックアップしていくよ。

7/3函館5R 芝1200m 勝ち馬:カワキタレブリー
評価☆3

璃子「勝ったのは3番人気のカワキタレブリーか。前半はちょっと追走に苦労してる感じだったけど、ゴール前できっちり二着馬を捕らえたね」
ハヤタ「パドックでは仕上がりの良さが目立った一頭だったよ。二着に負けたパスポートチェックもなかなか良い馬で期待できるし、今回は少し体が重かったアーサーズチェックなんかも絞れて条件が変われば好走可能だと思う」

7/3小倉5R 芝1200m 勝ち馬:シュンメキラリ
評価☆3

恵麻「このレースは夏の小倉恒例、九州産馬限定新馬戦だね」
ハヤタ「勝ったシュンメキラリは一番人気だったし、この中ではやっぱり馬体がいちばん良く見えたよ。脚が短めだけどそのぶん回転はきくから、やっぱり短距離向きだね」
姫「さすがに昨年のヨカヨカばりの活躍を、というのは酷かもしれないけど、この馬も九州産馬代表として頑張ってほしいところね」
璃子「そう考えると、ヨカヨカってやっぱりすごい馬だよねえ。まさか、二年連続で九州産限定新馬戦に名前が出てくるとは」
宮子「やめなさい、あれは実況の方が思わず言い間違えちゃっただけだから」
恵麻「ちなみにヨカヨカの妹はコウエイヨウカゴで、隣の枠のカッコヨカは名前は似てるけどきょうだいじゃないから、注意してね」
璃子「ややこしか……」

7/3福島5R 芝1200m 勝ち馬:ウィリン
評価☆4

姫「七馬身差の圧勝。ここは力が抜けてたってことかしら」
ハヤタ「そうだね。この馬は皮膚も薄く見えるし、筋肉が繊細なのかもしれない。蹄も薄いし、スピードの出る短距離コースは向いてる印象だよ」
璃子「こういう、新馬戦をスピードの違いで逃げ切り圧勝した馬って、クラスが上がって揉まれた場合にどうかって心配はあるから、次走の走りに注目しておこう」

7/3小倉6R ダート1000m 勝ち馬:シホノディレット
評価☆5

ハヤタ「馬体的にはもう少し距離があってもいいのかなと思ったけど、いい勝ちっぷりだった」
恵麻「レース後に浜中騎手も『跳びの大きいタイプでコーナーを回りづらそうでした』ってコメントを出してるし、今回がぴったりの条件じゃなかったのはたしかなんじゃないかな」
姫「それでいて勝ち切るっていうのはすごいわね。父はヘニーヒューズ系統のアジアエクスプレスで、きょうだいにはダートで三勝を挙げているコウソクスピードがいるわ。となると、このシホノディレットもダート路線で先々まで期待が持てそうね」
璃子「きついコーナーの克服がカギになるも、ひょっとして全日本2歳優駿まで……って期待も込めて、評価☆5だね」

7/3福島6R ダート1150m 勝ち馬:イチネンエーグミ
評価☆4

ハヤタ「538キロの大きな体格で、胸前や蹄もダートをしっかり捉えて走れそうな造りをしてると思う」
璃子「やっぱりダートだとしっかり走りますね。フットワークが完全にダート向きって感じですからね」
宮子「なぜウイポの騎手コメ風……」

7/4函館5R 芝1800m 勝ち馬:アルナシーム
評価☆6

ハヤタ「毛色もあるのか皮膚は少し厚めに見せたけど、身のこなしは素軽い感じだった」
姫「道中は溜めをつくりつつ速い脚でさっと抜け出してきたレース振りはセンスの良さが光ったわよね。近親にアルアインやシャフリヤールもいるし、上のクラスでも期待できる一頭じゃないかしら」

7/4小倉5R 芝1800m 勝ち馬:フィデル
評価☆6

恵麻「勝ったフィデルは、先週の新馬戦ではいちばん前評判が高かった馬だね。メディアでもよく取り上げられてた」
ハヤタ「体はそんなに大きくないんだけど、筋肉の質が良いのかな、レースでは跳びが大きくて推進力のある走りができていてすごく良いなと思った」
璃子「もう少し伸びてほしいところではありますが……」
姫「ウイポ風コメントはいいから。まだまだ余裕のありそうな勝ちっぷりだったし、評価☆6は必要よね」

7/4福島5R 芝1800m 勝ち馬:ウインピクシス
評価☆6

姫「勝ったウインピクシスは父ゴールドシップ、母の父ロージズインメイで、今年のオークスの勝ち馬ユーバーレーベンと同じ配合よ」
恵麻「『軍団』期待の血筋だね。週中でも結構話題を集めてたみたい」
ハヤタ「小柄な牝馬だけど柔らかみのある良い筋肉を持ってて、パドックでも見ていて気持ちのいい滑らかな歩きだった」
璃子「けっこう瞬発力あるよね。走りっぷりを見てると、なんかホントに、ゴールドシップの小型版って感じがした」
姫「軍団の繁殖は小柄な馬を出すことも多い感じだけど、ゴールドシップとの組み合わせではかえってそれがハマるのかも。この馬も来年の牝馬クラシック戦線を賑わす一頭になりえるんじゃないかしら」

7/4小倉6R 芝1200m 勝ち馬:ショウナンマッハ
評価☆4

ハヤタ「お尻がすごく大きな馬だよね。パワーがあって、それが爆発的なスピードにつながるタイプ。芝はもちろん、ダートでも走れそう」
宮子「典型的な短距離馬ってところね。狙いどころがはっきりしてるのは馬券的にも助かるわ」
姫「いちおう言っておきますけど、先生、買い時には注意してくださいね? 相手関係とかもありますから……」

7/4福島6R 芝1200m 勝ち馬:ニシノレバンテ
評価☆4

ハヤタ「この馬も筋肉質で、今回のメンバーだと目立って筋肉が発達してたと思う」
姫「父はイスラボニータで、これが中央での産駒初勝利となったわ。今後の活躍が期待される新種牡馬の一頭ね」
璃子「なんか姫までコメントがウイポの牧場長風になってるし」
恵麻「大丈夫? 私たちの絵柄、若干劇画寄りとかになってない?」
ハヤタ「いや、僕たちに絵柄とかないから……」

 と、こう読み返してみると、やっぱり無駄口が多いような気も……。三蔵さんのことをまったくイジれない。
 まあ、これが僕たちの、そして三蔵さんのスタイルなのだから、仕方ないといえば仕方ない。
 次回もたぶんこんな感じでいくので、よろしくお願いします。

登場人物紹介

室谷璃子
将来は馬券生活者を目指すBAKEJO。馬事文化研究部部長。好きな馬券の買い方は二、三着を入れ替えた三連単フォーメーション。

阿久津姫
いずれ馬主になり「阿久津姫HD」を立ち上げる予定のヌシドンナ。馬事文化研究部血統班。好きな馬券の買い方は馬単・三連単軸一頭流しマルチ。

渡辺恵麻
馬の写真を撮ることが大好きなカメオンナ。馬事文化研究部データ班。好きな買い方はがんばれ馬券。名前も入ってなんかカワイイから。

田村宮子
華麗かつ健全にケイバを楽しむシュクジョ……のはず。馬事文化研究部顧問。好きな買い方は三連複五頭ボックス。なのに単勝万張りでしばしばやらかす。

天塩隼太
ニューマーケットから来た帰国子女。相馬眼を持つ男。馬事文化研究部馬体班。好きな買い方は初心者なので詳しくないけどわかりやすい単勝かなあ。

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