「筋肉の質が良い」ってどういうこと? あと体型から分かる馬の適性など――長柄高校馬事文化研究部活動記録⑳

10/16 東京3R 芝1600m 1着:エリカヴィータ
評価☆6

姫「牝馬限定戦のここは伯父にキンシャサノキセキがいるエリカヴィータが快勝。前半は先行集団を見ながら中段で進め、直線は外に出して34秒0の最速上がりで差し切ったわ」
ハヤタ「これはかなり良い馬だと思う。今回のメンバーでは筋肉の質が抜けて良かったよ」
姫「その『筋肉の質』ってどうやってわかるの?」
ハヤタ「言葉で表現するのはなかなか難しいんだけど……筋肉の質が良い馬ってやっぱり毛並みが良く見えるんだよね。服で言うとシルクのような質感というか。あと、肩の出やトモの出が滑らかで窮屈なところがないとか、びゅっと鋭く脚を引きつけていたりすると、筋肉の質が良いと感じることが多いかな。この馬は滑らかに歩けているタイプだよ」
姫「なるほどね。この馬はキングカメハメハ産駒で将来性もありそうね」
ハヤタ「うん。距離やコースもある程度オールマイティにこなせそう。ただ、筋肉の良さを生かすにはやっぱり広々としたコースのほうがいいイメージかな」

10/16 阪神4R ダ1200m 1着:ゼットノヴァ
評価☆4.5

璃子「ゼットノヴァが他の馬より1馬身くらい飛び出すロケットスタートを決めた時点で、勝負ありって感じだったかな。当然そのまま逃げを打って、前半3ハロンは37秒3のスロー。直線では一旦2着馬に並ばれたけど、差し返す脚を見せて結局3馬身半差。2着と3着は大差がついてたし、後方着順の馬たちもまただいぶ離されてる。ここは正直、メンバーや展開に恵まれた面もあるかな?」
ハヤタ「まあ、ダートの短距離戦はあまり合いそうじゃないタイプが多かったことはたしかだね。ただ、ゼットノヴァ自身はやっぱり短距離のスピード馬という体型をしているよ」
璃子「どんなところが短距離体型なの?」
ハヤタ「よく言われることだけど、いわゆる『詰まった馬体』は短距離馬の印象が強くなるよね。この馬も首が短くて背中と胴が短い。前脚も短くて、いかにもピッチ走法で走りそうでしょ?」
璃子「ああ、たしかにそうだね」
ハヤタ「小柄なんだけど比重としてはお尻が大きいところもスピードを出しやすくなる要素だよね。前脚と後ろ脚の長さのバランスもこのくらいだと先行タイプかな。室谷さんの言ったとおり、今回はスタートを決めた時点でかなり勝利を引き寄せたよね。ちなみにこのくらいの詰まった体型で後ろ脚が短ければ短距離の差し馬になるし、逆に胴に伸びがあって腰高になるくらい後ろ脚が長くなると1400mくらいで瞬発力を使うタイプになるよ」
璃子「前脚と後ろ脚の長さのバランスか。そんなところでも距離適性や脚質を予測できるんだね」

10/16 新潟5R ダ1800m 1着:ジャカランダ
評価☆5

恵麻「時計的には前半5F64秒3のスローペースだったんだけど、主張してハナに行こうとする馬がいたり、ペースが落ちた中盤で後ろの馬たちが押し上げたりと、なかなか出入りの激しい競馬になったね。ジャカランダは後ろから押し上げた組の1頭で、直線で先に抜け出した4着馬を捕らえると、追い込んできた2、3着馬も振り切ってデビュー勝ちを決めた。なんと馬体重572キロの超大型馬なんだね」
ハヤタ「いやもう、見た目というか、骨格からして大きいよね。曳き手の方もそんな小柄ではないはずなのに肩が高くて、体高があるもんね。もちろんダート向きではあるんだけど、筋肉の多さだけで馬体重があるわけではないから、エネルギー効率は案外悪くない。ストライドも大きいし、距離は2000m以上の長距離戦も得意にするんじゃないかな」
恵麻「少し特殊な流れのレースになったわけだけど、ほかの上位勢の評価はどうしたらいいかな?」
ハヤタ「4着のエグモンドは息の入りづらい流れになったけど、正攻法の逃げ先行で勝負できた点は収穫があったと見ていいんじゃないかな。馬体もいかにもダートの中距離が向きそうだし、外枠から楽に先行できるようなら勝ち上がるチャンスは近そう。2着カンピオーネも1600~1800mあたりで切れる脚を使いそうだし、3着トーセンエルドラドもやっぱり見どころがあった。トーセンはまだ余裕のある馬体だったから、絞れれば東京マイルとかでもおもしろそうだよね」

10/16 阪神5R 芝1800m 1着:フォースクエア
評価☆5

姫「1番人気に応えてデビュー勝ちを決めたのはフォースクエア。スタートは出負けしたけど、内から押し上げて直線まで先行集団の一角で我慢。直線でも開いた内から伸びて、外から追い込んできた2着馬を封じたわ。内枠先行有利なコースバイアスを生かしきった印象ね」
ハヤタ「筋肉量が適度にあってどっしりした印象を与える馬体。首は短く太いけど背中や胴は詰まりすぎてない。キレはないけどバテずに走ってこれる印象で、典型的なマイラー体型だと思う」
姫「スローの瞬発力勝負ではキレ負けするけど、先行有利な高速馬場で強いってイメージかしら」
ハヤタ「そうだね。あとは内枠に入ったほうがいいかも」
姫「逆に外から2着に追い込んできたゴールドローズは結構見どころがあったと思うのよね」
ハヤタ「勝ち馬とは逆に、胴が詰まって脚が長い体型で、瞬発力に優れたタイプだと思う。差して届かないことも多くなりそうだけど、展開がハマれば突き抜けそう。あと、3着サクセクドレークはダートでも良さそうだよ」
姫「芝のここでも3着にまとめたし、ダート替わりで狙いたいわね」

10/16 東京5R 芝1800m 1着ライラック
評価☆5

姫「ライラックは札幌2歳S勝ちのブラックホールを兄に持つオルフェーヴル産駒よ。スタートを決めて先行集団で進めると、直線は楽な手応えのまま逃げ馬をかわして、2着馬の追撃も振り切ったわ。前の馬群がばらけ気味でプレシャーを受けずに走れたし、展開に恵まれた面もあるかしらね」
ハヤタ「小柄であまり特徴のない馬体だけど、良い意味でまとまっているんじゃないかな。筋肉の質感はなかなかよくて、滑らかに歩けている点は好感が持てた。軽い、高速馬場が良さそうだね」
恵麻「2着のエピファニーは最後の追い込みが目立ったね」
ハヤタ「胴が長くていかにもエピファネイア産駒という体型だね。ただ、まだ気性が幼い感じ。レース慣れしてくれば、中距離の持続力勝負で強い差し馬になるんじゃないかな」
姫「このレースは三冠馬コントレイルの全弟サンセットクラウドも出走してきていたわ。なんとか5着まで追い上げたけど、兄とくらべるのはさすがにかわいそうかしら」
ハヤタ「少し肩の出が硬くて力感の足りない歩様だけど、身のこなしの軽さは感じる。コーナーの多いローカルの芝コースなんかで走りそうだね」

10/17 阪神4R ダ1800m 1着:デリカダ
評価☆6

恵麻「スタートを決めたデリカダは外枠からすんなりと三番手を確保。向こう正面でカフジオクタゴンがまくってペースが上がったけど、なんとかついていって直線では一騎打ちに。最後は脚が上がった感のある2着馬を突き放して3馬身半差をつけたよ。ちなみに2着カフジオクタゴンと3着コルトレーンは大差がついてる」
璃子「少し特殊な展開にはなったけど、勝ち馬自身は正攻法の競馬を貫けたって感じかな」
姫「そうね。この馬は祖母がTCK女王盃勝ちのラピッドオレンジで、父はパイロなわけだけど、特徴は出てる?」
ハヤタ「いや、それがあまりパイロっぽさはないんだよね。パイロ産駒はもっと筋肉が細くて小柄な馬も多いんだけど、この馬は結構ボリュームがあるでしょ? どちらかといえば母父のクロフネの面影が濃いかな」
恵麻「毛色も芦毛だしね」
ハヤタ「馬体はいいよね。さっきも言ったように筋肉はボリュームがあってパワーがある。後ろ脚も長いし、前脚がやや短いバランスで適度な前傾姿勢。ダート馬としては理想的な体型と言ってもいいよ。胸腔も広くて心肺能力の高さも期待できるし、ポンポンと出世してもおかしくないんじゃないかな」
璃子「なるほど。数年後に牝馬の交流重賞を賑わせていたりしたら嬉しいよね」

10/17 東京4R ダ1300m 1着:ムーヴ
評価☆4.5

璃子「スタートしてから5、6頭が雁行状態で先行集団を作ったことで、ペースはあまり緩まなかったね。勝ったムーヴはスタートひと息なこともあって先行集団を見る中団内で脚を溜められた。直線は前がバテる中、内をさばきつつしぶとく伸びて、ゴール前で先に抜け出した2着馬を捕らえた。砂をかぶってもひるまない、根性があるところを見せたね」
ハヤタ「450キロくらいの体格でダート馬としてはさほど目立つほうではないけど、胴にやや長さがあって少し前傾の体型はダートの短距離戦向きだよ。お尻のかたちが平尻に近くて、どちらかといえば長く脚を使うタイプだね」
璃子「なるほど。つまり、今回みたいに、広いコースのダート短距離で差しがきく流れを得意にする馬ってことになるか」
ハヤタ「そうだね」

10/17 新潟5R 芝1200m 1着:ラインアルテア
評価☆4.5

姫「ラインアルテアは押してハナを主張。ハイペースの逃げになったこともあって直線は内へもたれ加減だったけど、最後は2着馬の追い込みをなんとかしのいだわ」
ハヤタ「腰のラインがはっきり浮き出て格好いい見た目だよね。芝向きの筋肉だし、繋が太めで道悪や荒れ馬場は苦にしなさそうだよ。距離はもう少し長くても我慢できそうな気がする」

10/17 阪神5R 芝1600m 1着:セルバーグ
評価☆5

璃子「セルバーグはスタートを決めるも好位で控える競馬。ただ直線で追い出される直前まで力んで走ってる感じだったし、このあたりはエピファネイア産駒って感じなのかなあ」
姫「追われてからは弾むような走りで末脚を繰り出してたわね」
ハヤタ「たしかに繋も長さがあって、バネをきかせられそうな作りだよね。筋肉の質もこのメンバーでは良く見えた一頭だよ」
璃子「瞬発力タイプって感じだよね。芝の高速決着の中をビュっと差してきそうなイメージ」
恵麻「上がり3ハロンは35秒3で目立たないけど、この日の阪神は直線でかなり向かい風が強かった。のちのちの時計比較ではその点も考慮しないといけないかも」

10/17 東京5R 芝1400m 1着:ペイシャフェリシタ
評価☆4.5

恵麻「内枠から好スタートを切ったペイシャフェリシタが譲らずハナへ。前半スローペースに落とせたこともあって後続の追撃を許さずそのまま逃げ切った」
ハヤタ「首が短くて、体高も低めの馬体。重心が低い体型で、いかにも短距離馬って感じだよね。スピードの乗りがいいタイプで、ひょっとしたら直線競馬なんかも得意にするかも」
恵麻「直線競馬! これまた結構大胆な予想だね。覚えておいて当たると『この馬はデビューから千直を使ってきたら買おうと思ってたんだ』とか、ちょっと自慢できそう」

10/17 東京3R 未勝利 芝1800m 1着:アサヒ
修正評価☆5.5

璃子「勝ったアサヒは新馬戦がいわゆる『ジオグリフ組』で、2着、2着ときてここは断然の一番人気。直線ではごちゃつきかける場面があったけど、進路を外に切り替えてからの伸びは一頭違ってた。相手に恵まれた面はあるにしても、強い内容だったよね」
ハヤタ「うん。筋肉の質から見ても評価の修正は必要だと思う」
璃子「一連のレース振りからも、☆5.5まで引き上げて問題ないでしょう」

10/17 新潟2R 未勝利 芝1200m 2着:ルナエルモッサ

璃子「このレースはPOG的に熱かったんだよ。なんと指名馬が3頭も出走」
姫「内からバーニングアイズ、クリノマジン、ルナエルモッサの3頭ね」
恵麻「結果はルナエルモッサが2着、クリノマジン4着、バーニングアイズが6着。バーニングが5着に粘れてれば、3頭そろってポイントゲットだったんだけど、まあそう上手くはいかないか」
璃子「まあバーニングアイズはこれで3戦続けてハナを切れてるし、今回も大きくは崩れてない。こういう競馬を続けてればそのうちチャンスは来そうだよね」
恵麻「ルナエルモッサも、大外枠だったけど好位からうまく立ち回れたね。着順的にも前進できたし、次からも期待できるね」
姫「クリノマジンは一番人気を裏切る形になっちゃったけど、ジョッキーによれば1200mは少し忙しい印象もあったみたい。次は距離を伸ばしてくるかもしれないわね。それで追走が楽になれば面白いわ」
璃子「なお、ルナエルモッサに騎乗した藤田騎手はこのレース中に左鎖骨骨折の負傷を負って、次走以降の騎乗を取り止めた。師匠の根本調教師によると『ゲートを出る時に手綱の結び目の尾錠がプロテクターがカバーできていない箇所の鎖骨に当たってしまった』ってことみたい。技術的なミスではなくめったにあることでもないって話だけど、怪我をしながらも最後までレースをしてくれて、本当に頭が下がる思いだよ。まずはじっくり治療に当たってもらいたいけど、復帰したらまたルナエルモッサにも乗ってほしいよね」

10/16 東京9R プラタナス賞 ダ1600m 1着:ベストリーガード

姫「ここからは特別レースを取り上げるわよ。まずは東京ダート1600mの1勝クラス戦、プラタナス賞。出走頭数は9頭と落ち着いたわ」
恵麻「1200m戦を勝ち上がってきた馬が多かったせいか、この条件にしてはめずらしく、どの馬もそこまで積極的に先手を取りに行く構えじゃなかったよね。結果的にはハナを切る形になったベストリーガードがそのまま逃げ切り」
ハヤタ「少し単調なレースになった感はあるけど、距離をこなしたことはベストリーガードにとって収穫だったと思う。前走の未勝利戦だって1秒3差の圧勝だったわけだし、ダートでのスピードは十分。今後レースの幅を広げていければおもしろいよ」

10/17 阪神9R もみじS 芝1400m 1着:カジュフェイス

璃子「日曜日阪神9Rでおこなわれた2歳オープン、もみじステークスも6頭立てと少頭数での争いになった。カジュフェイスがロケットスタートから楽に逃げてそのままゆうゆう押し切り。これまた展開に恵まれたなあ」
姫「追いかけてきたジャスパークローネとモンゴリアンキングは、それぞれ距離の壁や仕上がりの問題があって最後は脚が上がってたものね。2着に追い込んできたテーオースパローもペースと位置取りの問題で物理的に届かない感じだったし」
璃子「ベストリーガードにしろカジュフェイスにしろ、シェアポイント賞狙いPOG的には持ってると大正解なんだけどねえ。というか、夏場に早めに勝ち上がって秋口の少頭数の1勝クラス・オープンでポイントを稼ぐ馬を拾う、っていうのも戦略のひとつなんだよ。指名者数少なめで勝ち上がれて秋まで続戦する馬を見定めるのが難しいんだけどね……」

10/16 阪神9R 紫菊賞 芝1800m 1着:リブースト
修正評価☆6.5

恵麻「気を取り直して、最後は1勝クラスの紫菊賞を見ようか。ここも7頭立ての少頭数だったけど、圧倒的1番人気のリブーストはゲートをゆっくり出して前半は先行馬群からかなり離れた後方を追走。ただこのあたりは全然余裕って感じで、じわじわ追い上げて直線に向くと、馬なりのまま先行馬群をあっさりかわして結局2着に3馬身半差をつけた。あきらかに1頭だけ力が違ってたよね」
ハヤタ「ホント、『1頭だけ力が違う』って表現のお手本のようなレースだった。体重はマイナス16キロだったけど、馬体はまだまだ緩さが残ってる。それだけに今後の成長の余地も大きいと思うよ」
璃子「ただ、このレースは出走7頭中4頭が未勝利馬で、1頭は九州産馬だからね。実質的には2着のブルーグロットの逃げを捕まえられるかだけが焦点のレースだった。もちろんその2着馬を難なくかわしているわけだから強いのは間違いないんだけど、どこまで評価を上げていいか迷うところではある」
姫「ブルーグロットの新馬戦評価が☆4ね。レース振りを考えると、☆2つ分くらいの差はありそうだけど……」
恵麻「うん。相手に恵まれたとはいえ、レースを教えつつ馬なりで突き抜ける競馬はなかなかできるものじゃないと思うな。初戦の☆5からはさすがに上げていいんじゃない?」
璃子「そうだねえ……。わかった。それじゃあ、☆6.5まで上げよう」
ハヤタ「折り合いがついて自在にペースを上げ下げできる操縦性の高さは今後の武器にもなりうるしね。いいんじゃないかな」


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