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バケン部先生の次回作にご期待ください――長柄高校馬事文化研究部活動記録53

【5/29東京11R日本ダービー回顧】
ドヤらせて……いただけませんでした。

璃子「いやー、終わった、終わったよね……」
ハヤタ「室谷さんが窓辺から遠くを見つめている……。これは……」
姫「ダービーの予想、外れたのね……」
恵麻「3連複の軸にしたあの馬がハナ差で4着だったみたいだね~」
姫「それは……ありがちな外れ方ね」
璃子「サイバー〇ージェントの藤田社長は馬連1点2〇万でうま〇ょいか……」
ハヤタ「ああ、マズいマズい。Twitterで他人の馬券結果の検索始めちゃったよ。室谷さんが闇落ちしちゃう……」
璃子「……あっ!」
ハヤタ「ど、どうしたの?」
璃子「競馬ブ〇ク石〇記者のクシャクシャ馬券眺めてたら、なんか元気出てきた!」
姫「他人のハズレ馬券でメシウマ……。他人の不幸は蜜の味というけれど、これはこれで闇が深いわね……」
恵麻「璃子ちゃんが本田〇央に競馬やめられる前に、ダービーの回顧に入ろうか。第89回日本ダービーを制したのは……ドウデュースでした!」
姫「やや外目の13番枠から無難なスタートを切ると、道中はダノンベルーガジオグリフといった人気どころを見る中団後方を追走。逃げたデシエルトが前半1000m通過58秒9というよどみのないペースを作り、馬群がやや縦長になる中、ドウデュースは他馬に囲まれることもない絶好のポジションで折り合いをつけた。4コーナーでの手応えも抜群で、馬群の外をまくって一気に進出。直線で追い上げる鋭い末脚も素晴らしいのひと言で、2番手から粘っていたアスクビクターモアを差し切り、追い込んできたイクイノックスの追撃もしのぎきって栄冠を手にした。日本ダービー馬にふさわしい、見事な末脚での勝利だったわね」
恵麻「もちろん勝つべくして勝ったんだろうけど、勝因はどのあたりだったのかな?」
ハヤタ「そうだね……まず仕上がりが抜群に良かったよね。展望では室谷さんが『究極仕上げ』と言ってくれたように、1週前追い切りを終えた時点でギリギリと言えるほど体を絞り込んでいた。そこから当週はポリトラックでしまい重点の単走調教。直前に負荷をかけすぎなかったことで、リラックスした状態でレースに臨めたんじゃないかな」
璃子「たしかにこの馬は当日のパドックからスタート直前までかなり良い府雰囲気に見えたもんね」
ハヤタ「うん。パドックではこれまで以上に筋肉にバネを感じた。ディープインパクト記念、皐月賞ときて今年3戦目で、最高の状態だったことは間違いないよ」
恵麻「まずは一世一代の大舞台に絶好調で馬を送り出した、友道厩舎の手腕を称賛すべきということだね」
璃子「これでマカヒキ、ワグネリアンに次いでダービー3勝目だもんなあ。ダービーの勝ち方を知ってる厩舎のひとつと言っても過言ではないよね」
姫「回数で言えば、やっぱり武豊騎手にも触れないわけにはいかないわ。武騎手はこれでなんと6度目のダービー制覇! 日本競馬史上最多勝利数であることはもちろん、50代でのダービー勝利も史上初の快挙よ」
璃子「世間では『レジェンド』とも言われるけど、武さんはやっぱりまだまだ現役バリバリのトップジョッキーだよ。『ダービーはこうやって勝つんだ!』って凄みすら感じさせる騎乗だったよね」
ハヤタ「今回の手綱さばきの見事さはもちろん、皐月賞までの『教育』も見逃せない要素だよね。前走の皐月賞は『後方で溜めすぎたんじゃないか』って批判もあったけど、あそこで無理にいかせずじっくりと乗れたことが今回の走りにつながってると思う」
璃子「皐月賞の負けをダービーで返す。これまた見事な伏線回収だ。ドラマチックだねえ」
恵麻「ちなみに走破タイムは2分21秒9のレースレコードで、ドウデゥース自身の上がり3ハロンは33秒7。良馬場でペースも流れていたとはいえ、時計面からもハイレベルな1戦を強い競馬で制したと言っていいんじゃないかな」
姫「2着にはクビ差でイクイノックスが入ったわ。大外枠ということもあって道中は後方待機。4コーナーから直線入口はドウデゥースに先に出られるかたちになって、進路を外に切り替えるロスが少しあったかしら。最後は鋭い伸びで詰め寄るも、ドウデュースには及ばず涙を呑んだわ」
ハヤタ「この馬も仕上がりは良かったと思う。馬体重は皐月賞からマイナス8キロで程よく絞れていた。折り合いもついて2400mもこなしてくれたけど……」
恵麻「道中のポジション取りや4コーナーでのさばきを見ると、大外枠の影響は否めないよね」
璃子「枠順の有利不利……最後はそういう『運』も出たかあ」
ハヤタ「ただ負けたとはいえ精一杯の走りは見せてくれたと思う。ドウデュースとは少し個性が異なるけど、この馬も世代トップクラスの1頭であることは間違いないよ」
姫「秋以降のGⅠ制覇も当然期待されるわよね。3着のアスクビクターモアも前々で粘り込む注文通りの競馬で力を見せたわ」
ハヤタ「うん。先行力もあって、末脚も最後までしっかり伸ばせる。派手さはあまりないけど、この馬もGⅠに手が届いておかしくない好素材だと思う」
璃子「今後しばらくは『キレない協会』をリードする1頭になりそうだね」
姫「4着は1番人気のダノンベルーガ。直線は内目に切れ込んで懸命に末脚を伸ばすも、アスクビクターモアをかわすまでには至らなかった」
璃子「もうお分かりかと思うけど、この馬が私たちの軸馬だったんだよねえ。くぅ!」
ハヤタ「うーん……今回はこの馬らしい歩様の伸びやかさが少し影を潜めていたかも。結果論にはなっちゃうけど、年明け3走目で少し硬さが出てきてたのかもしれない」
璃子「あと、レース前の発汗が目立ったんだよね。返し馬からゲート前の輪乗りにかけて結構テンションが上がっちゃってた感じだし、レース前の消耗は痛かったんじゃないか」
姫「そのあたり、身体的にも精神的にもまだまだ成長途上だったということかもしれないわね。秘めた素質が相当なものであることは疑いようがないし、ここから立て直してまた秋以降に成長した姿を見せてほしいわ」
恵麻「4着からは3馬身ほどの差で入線したグループが、プラダリアキラーアビリティジオグリフオニャンコポン
ハヤタ「着差どおり、現時点では能力や適性の面で上位勢とは少し差があるのかもしれないね」
璃子「皐月賞馬ジオグリフの敗因は気になるところ」
ハヤタ「難しいところだけど、やっぱり距離面は大きいんじゃないかな。福永騎手も言っていたようにこの1戦で2400mがダメと決めつけるのは早計だけど、現状ではベストの距離ではなかった
姫「喉に不安のある馬だし、今後その影響が出てくるかどうかも気にしたいわね」
恵麻「デシエルトも逃げて一杯になったレース振りを見ると、活躍の舞台はやっぱりもう少し短いところかなあ」
璃子「だろうね」

宮子「もう競馬とは一生関わりません」※来週から復帰予定

【凱旋門賞展望】
夢を見たいから

璃子「さて話は戻って、勝ったドウデュースの今後だけど……」
恵麻「レース後のインタビューでは武騎手や松島オーナーから凱旋門賞挑戦のプランもほのめかされていたね」
姫「ええ。つい先日、友道調教師から前哨戦を使わず凱旋門賞に直行するプランが正式に発表されたわ。鞍上はもちろん武騎手の予定」
璃子「のんびりした性格でフランスに長期滞在すると放牧と勘違いするかも、ってことで、ぶっつけ本番を考えてるらしいね。もし武騎手がこの馬で日本調教馬初の凱旋門賞制覇なんてことになったら、これ以上の大団円ある?
ハヤタ「スピード一辺倒じゃなくてパワーも感じさせる馬体だし……そこに3歳馬のアローワンスも加われば、チャンスはあるんじゃないか」
姫「武騎手に惚れ込んで、全面バックアップを続けてきた松島オーナー。当然、期待も大きいでしょうね」
璃子「グリーンチャンネルのダービー回顧生放送番組では、武豊騎手と友道調教師から出演NGをくらってたけど……」
恵麻「祝勝会の会場からの生電話で松島オーナーも当然その場にいたんだけど、『酔ってて余計なことを言いそうだから』って……」
璃子「たぶん相当発汗が目立ったんだろうね。あくせくしてるなあ」
姫「強すぎるくらい溢れてる思いに今を賭けてるのよ、きっと」

【2021-22年シーズン回顧】
これまでと、これからと

璃子「というわけで去年の6月から2歳戦、3歳戦を追いかけてきた私たちの部活動も今回で最終回。1年間やってみてどうだった?」
ハヤタ「大変だったけど、おもしろかったし、いろいろ勉強になったよ」
姫「そうね。血統面では、新種牡馬のドレフォンキタサンブラックシルバーステートの活躍が目立ったわね。ドレフォンはGⅠホースも輩出したし、キタサンブラックとシルバーステートも重賞馬を送り出した。今後も注目に値する種牡馬だわ」
璃子「ディープインパクト、キングカメハメハの二大種牡馬の産駒が途絶えつつある世代で、種牡馬の世代交代の渦中でもあるしね。そういう意味では牝馬2冠馬を送り出したドゥラメンテにも注目したい」
恵麻「世代レベルも高そうだよね。牝馬は2冠馬をはじめ上位勢が高いレベルでしのぎを削ってきたし、牡馬もダービーの勝ち時計が示すようにハイレベル。古馬との対戦でどんなレースを見せてくれるか、いまから楽しみだよ」
ハヤタ「故障等でリタイアする有力馬が少なかったのもこの世代の特徴だよね。おかげで新馬戦で素質の片鱗を見せてくれた馬たちのその後の活躍を存分に楽しむことができた」
璃子「ここにきて牝馬2冠馬スターズオンアースや、ダービーに出走したジオグリフ、マテンロウレオといった面々の故障が相次いでいるのは気になるところではあるけど……」
恵麻「骨折で休養期間未定のマテンロウレオは心配だけど、スターズオンアースとジオグリフに関しては比較的軽度の骨折みたいだね。どの馬もしっかり傷をいやしてターフに戻ってきてほしい」
璃子「そうだね。最後にこっそりやっていた私たちのPOGの結果を。今シーズンのPOGは……、netkeiba.com  POGダービーが獲得ポイント37,428ptで3483位。JRA-VAN POG’21がシェアポイント1,467,966Pでシェアポイント賞2280位。……うーん、どっちもイマイチな結果だねえ」
姫「救いとしては、指名した20頭全頭、1回は賞金でポイントを加算してくれたってことかしら」
恵麻「とりあえずイケてなかった馬列伝入りは回避できたと……」
ハヤタ「いいことなのかどうなのか……まあ指名した馬たちについてはこのあとも暖かく見守っていきたいと思います」
姫「せっかく『紙のオーナー』になったわけだしね。POGには、ゲーム期間終了後も追いかける馬を探す楽しみ方もあると最後に提案しておくわ」
璃子「来週からはさっそく次の世代の新馬戦も始まるわけだし、私たちバケン部も休んでいられないよ!」
ハヤタ「え、っと……僕らの部活動って、『バケン部』って略し方だったんだ? いまさらだけど……」
璃子「そうだよ? 『馬』事文化『研』究部、略してバケン部。『人間と馬とが織りなす古今東西の馬事文化について幅広く研究することを目的とする部活動』という触れ込みで、学校側には活動許可を得ております」
恵麻「しかしてその実態は……」
姫「略称からお察しください……ということね」
ハヤタ「馬事文化どころか、おかしな方向に脱線しまくってた1年だった気もするけど……」
璃子「まあ、それも私たちらしい活動の仕方ってことだよ」

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