2歳戦振り返り最終回。牡馬クラシック戦線で押さえておくべき5頭とは?――長柄高校馬事文化研究部活動記録㉜

璃子「さて、今回は昨年12月25日、26日、そして28日に中山と阪神でおこなわれた2歳戦を振り返るよ。メインはもちろんGⅠホープフルステークス。私たちの予想、そしてそし姉の馬券は果たして……? ホープフルステークスの結果もふまえて、今年の牡馬クラシック戦線の有力期待馬も挙げてるから、乞うご期待。それじゃあいってみよう」

12/25中山5R 芝1800m 1着:ルージュエヴァイユ
評価☆5.5

姫「このレースでの1番人気は、翌日の有馬記念に出走するエフフォーリアの弟・ヴァンガーズハート。レースでもこの馬が直線で抜け出して人気に応えるかと思われたのだけれど、最後に内をすくって鋭く差し込んできたルージュエヴァイユにかわされてしまった。ヴァンガーズハートに騎乗していた横山武史騎手は、ゴール前で追い動作を緩めたことがいわゆる『油断騎乗』と見なされ、制裁の対象となってしまったわ」
ハヤタ「たしかに最後は僅差だったし、どちらが勝ってもおかしくないレースだったね。勝ったルージュエヴァイユは牝馬らしい線の細さはあるけど、小気味よく首を使ってバネのある歩き。いかにも芝でキレそうなタイプだよね。ヴァンガーズハートも偉大な兄とくらべるのはまだかわいそうだけど、大きな骨格で2000mくらいが合いそうな馬体。少し耳を動かして周囲を気にする素振りも見せてたし、レースではそういう子どもな面も出たのかもしれないね。でもすぐに勝ち上がれるレベルの馬だと思うよ」

12/25中山6R ダ1800m 1着:アローワン
評価☆6.5

璃子「スピードの違いでハナを奪うと、道中も終始優勢な手応えのまま進み、直線でも後続との差を広げる一方で、終わってみれば2着に大差の圧勝劇。ここでは力が違う感じだったし、上まで行くでしょ、これは」
ハヤタ「ダート馬にしては脚が長いし、脚さばきも滑らかだよね。それでいて筋肉はしっかりついていてパワーがあるし、蹄は起き気味でグリップもききそう。こういう馬体の構造だから、ダートでもストライドを広くとれるんだろうね。脚の回転も衰えなかったように、心肺能力も高そう」
璃子「最後は流していたし、時計ももっと詰められそうだよね。レパードSやJDDまで目を離せない1頭だと思うな、この馬は」

12/25阪神5R 芝1800m 1着:ジャスティンカツミ
評価☆5.5

ハヤタ「先行争いを制したジャスティンカツミがそのまま押し切ったレース。最後は後続に詰め寄られてギリギリの勝利になったけど、跳びが大きくて素質を感じさせる走りだったと思う。まだ全体的に関節の緩さも目立つから、もう少しカチっとしてくるとさらに良くなるんじゃないかな」

12/25阪神6R ダ1400m 1着:ペプチドアケボシ
評価☆5

恵麻「ここも逃げ切りだったね。ペプチドアケボシ。7番人気と前評判はそれほどでもなかったけど、じわっとハナに立って優勢を築き、終わってみれば3馬身半差の完勝だった」
ハヤタ「短距離馬らしいシルエットだよね。現時点では1200mか1400mがぴったりだと思う」
恵麻「まだコーナリングがうまくないって話も出てるし、ワンターンのコースがベターかもしれないしね」

12/26中山5R ダ1200m 1着:ライヴアメシスト
評価☆5

璃子「日曜に移って中山5Rはさらに荒れた決着で、勝ったライヴアメシストはなんと11番人気。3コーナー過ぎからエンジンがかかった感じで追い上げてきて、斤量51キロの恩恵もあったとはいえ、直線での差し脚はなかなか見ごたえがあったよね」
ハヤタ「この馬も短距離馬らしい体つきだね。420キロと小柄だけど、繋は短く立った作りで、足回りがダートにハマったのかもしれないね。小気味よいピッチ走法の馬だよ」

12/26中山6R 芝1600m 1着:ローブエリタージュ
評価☆5.5

姫「ローブエリタージュは不利と言われる中山マイルの大外枠に入ったけれど、前半は無理せず中段に控えたことで最後の直線で末脚を伸ばせたわね。400キロを切る小柄な牝馬だけど、父ディープインパクト、母は阪神JFを制したローブティサージュで、上のリアンティサージュも4勝をあげてる。血統面での期待を持てる1頭だわ」

12/26阪神4R ダ1800m 1着:オステリア
評価☆5.5

ハヤタ「しっかりと筋肉がついた大きな馬体で、首や胴にも長さがある。大きなストライドで走れるし、いかにもダート向きのタイプだね。素質は感じる」
璃子「先行力がある点も魅力だね。ただし上がり3ハロン40秒0と時計を要した点は気になる。次は時計短縮が課題になるかな」

12/26阪神6R 芝1400m 1着:シーズザデイ
評価☆5

恵麻「大外枠からのスタートも、ダッシュの違いを見せてハナを奪ったシーズザデイが粘り切って逃げ切り勝ち。積極的なレース運びだったし、新馬戦に照準を定めてきた感じかな?」
姫「これもドゥラメンテ産駒ね。菊花賞を逃げ切ったタイトルホルダーを筆頭に、ドゥラメンテ産駒は逃げ・先行での強さが目立つわね。逃げるドゥラメンテ産駒には要注目だわ」

12/28中山5R 芝2000m 1着:アクアテラリウム
評価☆5

璃子「このレースも接戦の逃げ切りだったね。ダッシュをきかせてハナを切ったアクアテラリウムが、前半1000m65秒4の超スローペースに持ち込んで後続の追撃をしのぎきった」
ハヤタ「手前の替え方がぎこちなくて、コーナーごとに外に膨れちゃってたね。左回りだともう少しスムーズに走れるのかな? いずれにせよこのあたりは矯正が必要になってくるだろうね。馬体はハーツクライ産駒らしい伸びがあって、中距離向きだよ」

12/28中山6R ダ1200m 1着:ギユウ
評価☆5.5

姫「1枠1番のギユウはスタートひと息も二の脚をきかせてハナへ。ハイペースも厭わず先手を主張する形になっても直線で脚は衰えず、追いかけてきた2着馬をむしろ突き放しにかかった。同じ逃げ切りでもこちらはなかなかの力を見せたわね」
ハヤタ「無駄肉がなくて体に張りがあったし、初戦から仕上がってた。先手を打てれば怖いと見てたけど、そのとおりにレースを運べたね」
姫「姉はダート短距離路線で3勝クラスまで勝ち上がったヘルディン。このギユウも姉同様、ダート短距離路線での活躍が見込めそうね」

12/28阪神5R 芝1600m 1着:レベレンシア
評価☆5.5

恵麻「スローペースから直線入口で3、4頭が横並びになり、そこから上がり勝負のサバイバル。最後に残ったのは内ラチ沿いを着いたミノワールと外目で脚を伸ばしたレベレンシアの2頭で、最後はレベレンシアが決め手でまさった」
ハヤタ「ムチでよれたりして少し苦労したけど、体もまだ少し余裕があったからね。もう少し絞れてくればもっと良くなりそうだよ。ロードカナロア産駒らしい芝向きマイラーのシルエットだね」

12/26阪神2R 未勝利 ダ1400m 8着:シェンフォン

璃子「POG指名馬のシェンフォンの4戦目。3着だった前走と同じ条件だから期待してたんだけど、伸びきれなかったね……。今回はスタートも決まったんだけどねえ」
ハヤタ「少し馬体が細くなってたし、疲れが溜まってエネルギーが減ってたのかもね」
璃子「そうかあ。まあリフレッシュ放牧で立て直すようだし、未勝利戦のレベルが落ちる頃に復帰できればまた勝ち負けできるんじゃないかな。まずは1勝を目指そう」

12/25中山7R 1勝クラス ダ1200m 1着:タヤスゴールド
修正評価☆6.5

璃子「中山の1勝クラスはダート1200m戦。ここは新馬勝ちの舞台に戻ったタヤスゴールドが逃げ切った。この馬はやっぱり強いね」
姫「最初は控える素振りも見せていたけれど、抑えがきかずに結局飛ばしていったわね。前半3ハロンは32秒9のハイラップで、直線入口では後続に5馬身のリード。さすがに最後は苦しくなって、追い込んできた2着馬に差を詰められたけれど、それでも上がり3ハロンの時計はほかの先行馬と同じくらいでまとめているし、ここは単純に力が抜けていたと見ていいんじゃないかしら。たしかに課題も多い馬だけど、能力はオープン・重賞で通用すると見ていいと思うわ」

12/25阪神9R 万両賞 芝1400m 1着:マテンロウオリオン
修正評価☆6

璃子「1勝クラスの特別戦なんだけど、勝ったマテンロウオリオンはなんと新馬戦2着からの参戦だったんだね。スタートはゆっくりで1頭離れた最後方を進んだけど、直線大外一気でほかの10頭をごぼう抜き。ノリさんのポツンが炸裂した1戦だったね」
ハヤタ「骨太のダイワメジャー産駒で、たしかに能力を感じさせる馬だね。決して奇襲がハマっただけではないし、上のクラスでもおもしろい存在じゃないかな」

12/28阪神7R 1勝クラス ダ1800m 1着:デリカダ
修正評価☆6.5

恵麻「最後は人気を分け合ったデリカダとカフジオクタゴンの一騎討ち。粘るカフジオクタゴンをデリカダが残り200mでかわして、1と1/4馬身抜け出した。この2頭は新馬戦でも対戦してて、そのときもデリカダが1着。このときもデリカダを交流重賞も狙えると高評価したけど、あらためて能力が確認できたね。今後も楽しみ」

12/28中山11R ホープフルS(GⅠ)芝2000m 1着:キラーアビリティ
修正評価☆8

璃子「それじゃあ最後はお待ちかねのホープフルステークスだ。これは私たちなりに展望も出したわけだけど……本命視したコマンドラインは初の中山コースという不安がモロに出ちゃった感じだね……」
恵麻「ゲートでの駐立が悪くてスタートが立ち遅れる感じになって、後方から脚を伸ばせるところがなかった感じかな……。現状では東京とか、コーナーもゆったりと走れるコースがベターなのかも」
姫「1番人気でもあったコマンドラインがこういうかたちで崩れたとなると、唯一の懸念材料だった折り合い面をクリアしたキラーアビリティが勝つのも必然よね」
ハヤタ「パドックでも筋肉の収縮力がいちばん目立ってたし、レースで折り合って走れてる姿を見たときに『これは勝たれるなあ』と思ったよ。馬体のイメージは同じディープインパクト産駒でダービーを勝ったシャフリヤールやワグネリアンにも通じるものがあるし、中山コースもこなせるぶん、適性面ではこちらがまさるかもしれない。前途洋洋だよね」
璃子「やはりこの馬が現時点でクラシックの最有力候補ということか……」
恵麻「いちおう、左回りはまだ未経験で、小回りコースのほうに実績があるとはいえ、ディープインパクト産駒だしね。来年は共同通信杯あたりで東京コースを経験させつつ、皐月賞、ダービーの2冠を狙うローテーションがぱっと思いつくよね」
璃子「それにしてもなあ、今回は2着のジャスティンパレスも高評価、3着のラーグルフまでしっかり押さえてたわけだから、馬券は取りたかったよねえ」
宮子「ホントよねえ。せっかく有馬記念で単勝と3連複を当てて逆神様の汚名を返上したっていうのに、1年の締めくくりが台無しになっちゃったわよ」
璃子「急に入ってきたな、宮姉……。まあ有馬的中に免じてそし姉呼ばわりはもう勘弁してあげるけどさ」
姫「まあ、私たちもコマンドライン軸で馬券を推奨してしまいましたからね。がPOG指名馬だったこともあって、ちょっと贔屓目も入ってしまったとところもあるし、反省しないとね」
恵麻「ただコマンドラインも今回が全力ってわけじゃないし、今後巻き返すチャンスはあると見たいよね。クラシック戦線の中心はキラーアビリティと朝日杯FSを勝ったドウデュースになりそうだけど、コマンドラインもなんとか食らいついてほしい」
璃子「そうだね。あとは東スポ杯2歳Sを勝ったイクイノックスかな。これもPOG指名馬で贔屓目もあるとはいえ、当然クラシックを見据えてるからね」
ハヤタ「あと、まだ新馬戦を勝っただけの馬だけど、ダノンベルーガにも注目したい。この馬もかなりの能力を秘めてて、クラシック戦線で名乗りを上げると見ているよ」
姫「まとめると、牡馬クラシック路線はキラーアビリティ、ドウデゥース、イクイノックス、コマンドライン、ダノンベルーガの5頭に注目ということね」
璃子「この中から皐月賞、ダービーを勝つ馬が出てくると私たちの活動も報われるんだけどねえ。さてどうなることやら。というわけで、2歳戦の振り返りはこれで終了。年明けの競馬は1月5日の金杯デーから始まって、ここからは3歳戦の振り返りをやっていきます。とりあえず3歳新馬戦が終了するまでは今のスタイルかな。そのあとはまだ未定だけど、特別戦や重賞によりフォーカスしてクラシックを展望していけたらと思ってる。そういうわけでダービーまであと半年――」
一同「よろしくお願いします」

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