ぶっちゃけ、馬体とか見て走るか走らないか分かるの?――長柄高校馬事文化研究部活動記録㉕

璃子「どうなん? ぶっちゃけ」
姫「うわぁ……」
恵麻「璃子ちゃん……。ついにパンドラの箱を開けてしまったんだね……」
璃子「え、なになに? そんな危険極まりない疑問だったの、これ?」
ハヤタ「まあ、答え方によっては僕たちの活動の根幹を揺るがしかねない根本問題だからね……」
璃子「いやいや、だからこそ、ここらでガツンと言っておいてもらわないと」
ハヤタ「うーん……まあ、ぶっちゃけて言えば『わかるといえばわかる、わからないといえばわからない』ってことになるのかなあ」
璃子「えええ? そんな玉虫色の結論なの?」
ハヤタ「いや、だからね、馬体を図形として見ると、特徴は比較的つかみやすいんだよ。正方形に近いシルエットだなとか、長方形に近いなとか、お尻が大きいなとか。馬体の見方って、そういう図形の違いを組み合わせて、パターンとして認識してる面があると思う。わかるかな?」
恵麻「IQテストでよくある図形認識問題みたいなものだね」
ハヤタ「それで、頭の中でその似た『図形のパターン』をしてた馬と比較して、この図形ならきっとこんな走りをしそうだなって判断するんだけど……」
璃子「ううむ……なんか難しい話だけど、いいや、とりあえず続けて」
ハヤタ「ただ、馬は生き物だからね。パターンっていうのはある程度まとまった数を集めたうえで出てくる統計的な傾向みたいなものだし、そこから外れる個体は当然出てくる。つまり、『統計的な傾向としてはある程度なにがしか言えるけど、それがその馬に必ず当てはまるとは限らない』ってところかな」
恵麻「この場合の『統計』っていうのはあくまでも比喩だね。実際にデータを集計してるって意味じゃなくて、頭の中でイデア的に組み上げられたパターンって意味での。ハヤタ君をはじめ、馬体をたくさん見てきた人たちの頭の中にはそういう経験の蓄積があるんだろうね」
姫「もう少し実際に統計に近くて具体的な例を挙げると、血統もそうよね。たとえばスウェプトオーヴァーボード産駒は傾向として短距離で走る馬が多いけれど、だからといってステイヤーズSを勝つ馬が出ないわけじゃない」
ハヤタ「そうだね。血統面でも『この種牡馬の産駒はこういう馬体の形が多い』っていう特徴は絶対あるんだけど、そのパターンから外れる馬体の馬も当然いるからね。そして、パターンから外れた馬だから走らないのかといえば、そういうわけでもない。また、パターンにはまる馬体でも他とは全然違う走りを見せる馬もいないわけじゃないし」
恵麻「図形のパターンを認識して、そこからのアルゴリズム的な演算で馬のタイプを導き出せるなら、それこそAIによる馬体診断技術なんかも可能性としては作れそうだけど、たぶんそれも『当たるも八卦当たらぬも八卦』みたいなものになるんだろうね。馬の走りや成績を決める要因って、馬体の今フォーメーションだけじゃなくて、気性面はもちろん、育成や調教の過程、騎手や厩務員さんとの相性、さらに言えば時の運とか、無数にあるわけだもん」
ハヤタ「というわけで『馬体を見て走るか走らないかわかるの?』っていう疑問に対する答えとしては、『わかるといえばわかるし、わからないといえばわからない』になっちゃんだけど……」
璃子「……まあ、わかった。いや、わかったようなわからないような……。要するに、『私たち、いろいろ理屈こねてコメントしてるけど、はずれててもそれはそういうもんだから、勘弁してね』ってことかな」
ハヤタ「そこまでぶっちゃけるのもどうかと思うけど……」
璃子「それにしても今日はみんな、図形認識とか統計とかイデアとかアルゴリズムとか、文脈的に意味あってるのかツッコまれそうな単語を連発してたけど、ど、どうしたん?」
ハヤタ「それはだから、室谷さんが非常に答えにくい問題を提起しちゃったからだよ……」

11/20東京4R ダ1400m 1着:ジョンソンテソーロ評価☆5

璃子「ふ、ふう……。それじゃあ気を取り直して、先週の新馬戦回顧を始めようか。当たってもはずれても、文句言いっこなしで」
恵麻「あくまで『高校の部活動』だしねえ。それじゃあまずは、土曜東京4R。ダート1400m戦のここは、1番人気のグラットンラッシーが好スタートから逃げを打って、そのまま押し切るかと思いきや、直線なかばで並びかけられるとそこで失速。今度はオモイソメルが抜け出しをはかったけど、さらにその後ろにいたジョンソンテソーロが鋭く伸びて差し切り勝ち。思いがけず差しが決まる展開になったね」
ハヤタ「ジョンソンテソーロもダート適性を評価できたし、勝っても全然おかしくない1頭だったけどね。適度なゴツさもある筋肉がついていて、お尻も幅があって直飛で、ダートの短距離は最適の舞台と言えると思う」
姫「ドゥラメンテ産駒だけれど、むしろ母父スキャットダディの血が色濃く出てる感じかしら」
ハヤタ「2着のオモイソメルは勝ち馬の決め手にやられたけど、これも良い競馬ができてた。スピードもあるし、1200mや1300mに短縮してもおもしろいと思う」
璃子「グラットンラッシーは敗因がよくわからないけど、馬体は良いってことだし、次走以降の変わり身に期待だね」

11/20東京5R 芝1600m 1着:シークルーズ
評価☆5

璃子「次は土曜東京5R、牝馬限定のマイル戦。最初の3ハロンを37秒2とソロっと入ったこともあって、2番手につけたシークルーズがすんなり抜け出し、3番手にいたフィールシンパシーが2着に押し上げる決着になったね」
ハヤタ「シークルーズは飛節が伸びてるし、首を使ってリズムよく歩けていて、パドックでの姿は好感が持てた。展開が向いたとはいえ直線でしっかり脚を使えていたし、仕上がりは良かったんじゃないかな。小柄だからさらに身が入ってくるといいね」
璃子「GⅠ2勝馬メジャーエンブレムの産駒、ホーリーエンブレムは内をついて差してきたけど、この流れでは3着が精一杯だったか」
ハヤタ「お母さんとは違ってバネがあって瞬発力を生かすタイプに見える。これも小柄だから馬体の成長が欲しいところだね」
璃子「展開不向きの中、最後脚を使った点は評価したいね」

11/20阪神5R 芝1400m 1着:カイハオン
評価☆5

姫「人気の一角、アルマイメルをめぐる先行争いが繰り広げられる中、すっと引いて中団待機策をとったのがカイハオン。勝負所から徐々に前との差を詰めると、直線で馬群がばらけた内からするりと抜け出した。立ち回りの上手さが目立ったレース振りだったわね」
ハヤタ「キビキビ歩いていたし、差しに構えるレースが合っているんだろうね」
璃子「揉まれない形になって上手くいきすぎた面はあるから、これから経験を積んでく必要はあるかな」
姫「レース振りの点では、最後良い脚で勝ち馬に詰め寄ったルピナスリードが目立っていたわね」
ハヤタ「バネのある筋肉の持ち主だよ。瞬発力を生かせる展開になればすぐにチャンスがめぐってくるんじゃないかな」

11/20阪神5R ダ1400m 1着:クローズユアアイズ
評価☆5.5

恵麻「先行集団は固まったまま直線へ。好位の内にもぐりこんでいたクローズユアアイズは進路がふさがりかけるも、前が開くと機敏に反応してあっさり突き抜けた。一歩先に抜け出していたヴォルゴラーレを並ぶ間もなく差し切る、あざやかな脚だったね」
ハヤタ「芝のレースを見てるかのような素軽い動きだったよねえ。仕上がりの良さはあったにしても、これはちょっと強いなあと思った。この敏捷さならひょっとして芝でもやれるかもと思わせるよね」
恵麻「人気や前評判は決して高くなかった馬だけど、次走以降どういうレース選択をしてくるかちょっと楽しみだね」

11/20福島5R 芝1800m 1着:タイラーテソーロ
評価☆5

姫「タイラーテソーロは最内枠からハナをきったんだけど、向こう正面で2番手の馬に追い抜かれそうになってジョッキーがうながしながら進んだわ。そんな感じで手応えはあやしかったけれど、直線でも2着馬に詰め寄られながらもその分だけ伸びる感じでしぶとく勝利をもぎ取った。抜かせそうで抜かせない競馬とはまさにこのことね」
恵麻「ジョッキーの談話を見ると、ハミを取らなかったりソラを使ったりと難しい面があるみたいだね」
姫「そのあたりはある意味、ゴールドシップ産駒のイメージどおりというか」
ハヤタ「必ずしもゴールドシップ産駒の特徴ではないんだけどね。ただ、全体にまとまりのある体つきはゴールドシップ産駒っぽさがあって、パドックでものびのびと歩けててなかなか筋肉の質はいいよね。お父さん同様、長く良い脚を使うタイプだと思う」
恵麻「個性派って感じで、ちょっとおもしろいね」

11/21東京4R 芝1400m 1着:ラッピングカラーズ
評価☆5

姫「短距離戦で多頭数の競馬ってこともあって、混戦模様の戦況だったわね。そんな中で好ダッシュからハナを奪ったのがラッピングカラーズ。うまくマイペースに持ち込み、直線の坂を上ってからじわじわと後続を離していった。最後は追いこんできたルージュエクレールに詰め寄られたけれど、なんとかしのぎきってデビュー勝ちを決めたわ。堅実に走る馬を出す、オーナーゆかりのファミリーね」
ハヤタ「胸の深さは十分にあるし、決してキレるタイプじゃないけど、持続力がありそうな感じだよね。後ろ脚が地面に接地してる時間も長いというか、粘っこく歩けてた」
姫「メンバー全体のレベルはどうかといったところだけれど、この馬自身は持ち味を発揮できたと見てよさそうね。あとはやはり最後に猛然と追い込んできたルージュエクレールを特筆しておきたいわ。祖母シラユキヒメにさかのぼる『白毛一族』の1頭よ」
ハヤタ「まだ緩さもある体つきだけど、身のこなしはなかなか素質を感じさせるね。小柄なだけに大物感こそ薄いけど、これも結構走ってきそうだよ」

11/21東京6R 芝2000m 1着:ダノンベルーガ
評価☆6.5

璃子「これはちょっとモノが違うって勝ち方だったよねえ。ひさしぶりに出てきた大物候補なんじゃないの、これ」
姫「ダノンベルーガね。8頭立てと少頭数ながら粒のそろったメンバーの中、33秒1の末脚を繰り出して2着に2馬身差だものね。まさに豪脚一閃という切れ味だったわ」
恵麻「3着馬の上がり3ハロンで33秒9だから、0秒8も早いんだね。スローペースになったとはいえ今の東京でこの上がり時計はちょっとびっくりだよね」
ハヤタ「パドックから好気配が目立ったよ。手足の長いすらりとした体型で、前後がきちんと連動して動く気持ちのいい身のこなし。パドックでの歩様のイメージと違ってレースでは少し頭の高い走りになっていたけど、そのあたりはハーツクライ産駒らしさなのかな」
姫「サリオスも似たようなところがあるし、案外、良質のハーツクライ産駒の特徴なのかもね」
璃子「ということは、この馬も重賞GⅠクラスのポテンシャルを秘めてる可能性が高そうだ。厩舎の先輩サリオスは惜しくもクラシックに手が届かなかったけど、ひょっとするとこの馬が雪辱を晴らすかもしれないね」

11/21阪神4R 芝1600m 1着:アストロフィライト
評価☆5

姫「牝馬限定のマイル戦ね。1番人気のアストロフィライトはスタートの出が良くなく、後方から。ただ鞍上も慌てた様子はなくじっくりと脚を溜め、直線は前の馬が外目に進路を取る中、開いた内へすかさず切れ込む。ラスト2ハロン目で10秒9を計時する瞬発力で抜け出して、差し追い込みの決着を制したわ」
ハヤタ「背中と腹の長さがいい塩梅で、いい瞬発力を持っているよね。体型的にもマイルはぴったりだよ」
姫「半兄は昨年の朝日杯FSを制したグレナディアガーズね。父がフランケルからディープインパクトに変わってもマイル適性の高さは共通してるわけね。時期的に阪神JFには間に合わなそうだけど、来年以降の成長に期待したいわね」

11/21阪神5R 芝2000m 1着:セレシオン
評価☆5.5

璃子「阪神のもう鞍、芝2000mの新馬戦も、川田将雅騎手だった。1番人気のセレシオン。道中は中団待機となったものの、勝負所で仕掛けられるとじわじわ追い上げて4角で先団にとりつく。直線では内で粘る馬たちとの争いを制し、3馬身半差の快勝」
ハヤタ「皮膚は薄い感じがするし、ぎゅっと身の詰まったような良い筋肉がついてる。首に長さもあって中距離向きの体型だし、パワーも感じさせるね。まだ体を使い切れてないみたいだけど、素質を秘めていそう」
姫「人気した理由は血統面にもあるわね。上にダートオープン馬のピオネロや牝馬クラシックで好走したクルミナルがいるわ。この馬には上2頭以上の活躍も期待されるわね」
恵麻「8頭立てと少頭数だったけど、2着のディライトバローズも姉が阪神JF勝ちのショウナンアデラだし、結構粒揃いのメンバーだった?」
ハヤタ「今後の路線はちょっと分かれていくかもしれないけどね。ディライトバローズはダートでもおもしろそうな馬体だし、3着のトランソニックは切れ味を生かせるマイル以下の距離で好走が期待できそうだよ」

11/21福島6R ダ1700m 1着:オリ
評価☆5

璃子「3頭の先手争いを制してハナに立ったのがオリ。4コーナーでまくってきたタマモタップダンスに一旦前に出られるも、鞭を入れられると枠の利も生かしてふたたび先頭を奪い、そのまま振り切った」
恵麻「上がり3ハロンが39秒5、ゴールに向けてラップが落ちていく典型的な消耗戦になったけど、逆に後続も脚をなくした感じかな」
ハヤタ「仕上がりの差も大きかったのかもしれないね。オリは無駄肉もなく体が仕上がっている感じだったよ。短距離のイメージも強いパイロの産駒だけど、この馬は前躯よりも後躯が薄く見える前がちの馬体で、ダートの1700mはぴったりの舞台だったんだと思う」
璃子「1コーナーにせよ4コーナーにせよ、コーナーでスピードを落とさない立ち回りができるあたりも、ローカル1700mのスペシャリストっぽいよね。福島、小倉、函館、札幌。こういう小回りのコースに出てきたときは注意したい馬だ」

11/20東京6R 1勝クラス 芝1400m 1着:デュガ

恵麻「土曜日の東京で平場の1勝クラス戦が組まれていたよ。芝1400m、9頭で争われたこの1戦を制したのは3番人気のデュガ。ハナ争いを制して単騎逃げにもちこむと、スピードの違いを見せて直線入口では後続を3、4馬身ほどリード。最後はよれて苦しがる面も見せていたものの、しぶとく粘って未勝利戦からの2連勝を飾ったよ」
璃子「やっぱりスピード能力の高さは間違いないね。ただ、ゴール前の脚色を見るに、ベストは1200mまでなのかな」
姫「そうね。父はイントゥミスチーフの血を引くプラクティカルジョークだし、アメリカのスピード血統って感じよね。母系もゴーンウエスト系とダンジグ系の血統構成だし、森調教師が日本のスピード競馬向きの馬を仕入れてきたと見て間違いないんじゃいかしら」
ハヤタ「坂路でびしびし追われてトモが鍛えられてるし、それで長めの後ろ脚を速く回転させてる感じだね。たしかに短距離のスピード馬を目指して作られてるんだろうなと思わせる馬体だよ」
璃子「外国セリで仕入れた馬を坂路で鍛えて短距離戦線に送り出す。森厩舎の得意パターンがわかりやすく見える1頭だよね。今年のキーンランドセールでも森調教師がオーナー代理として3頭落札したみたいだし、森厩舎×藤田晋オーナーのラインは今後も注目だね」

11/21東京9R 赤松賞 芝1600m 1着:ナミュール
修正評価☆6

恵麻「日曜に東西でおこなわれた1勝クラス戦も、ともに短い距離のレースだったね。まずは東京9Rの赤松賞。短いといってもマイル戦だけど、おなじみの牝馬限定戦」
姫「新馬や未勝利をいいかたちで勝ち上がってきた馬も多く、9頭立てながらなかなかの好メンバーになったわね。そんな注目の1戦を制したのは9月中京の新馬戦を勝ち上がってきたナミュールだったわ。道中は中団で進め、直線で末脚を爆発させて逃げ馬をとらえて1馬身と3/4突き抜けた。少なくとも今回のメンバーでは頭ひとつ抜け出した印象を受ける勝ちっぷりだったわ」
ハヤタ「やっぱり身のこなしが機敏で瞬発力を感じさせるよね。距離は長くても千八くらいまでかなと思うけど、末脚を武器にして牝馬重賞も狙えるくらいの馬かもしれない」
璃子「このあとは阪神JFはもちろん、フェアリーSやクイーンCもある。もちろんそのあとの、トライアル含めた桜花賞戦線も。楽しみな1頭だね」

11/21阪神9R 秋明菊賞 芝1400m 1着:オタルエバー

恵麻「続いて阪神の9Rは芝1400mの秋明菊賞。余談だけど、秋の京都開催の2歳戦は雅なレース名が多いよね。花の名前をつけてあげる」
姫「今年は阪神開催だけどね。さて、ここはオタルエバーが1番人気にこたえたわ。新潟2歳ステークス3着で実績面では一歩リードしていたし、やっぱりここでは一枚上だったかしら」
璃子「前走の東京での1勝クラス戦もタイム差なしの2着だったしね」
ハヤタ「背中が長い体型で、先行して持続力を生かすタイプ。今回は楽にハナを切れて、自分の形に持ち込めた」
璃子「しっかりと実績を積み上げてるし、来春までオープンクラスの常連になりそうな馬だ。逃げ馬で展開の鍵を握るだろうし、気にする機会が多くなりそうな馬だよね」

11/20東京11R 東京スポーツ杯2歳S(GⅡ)1着:イクイノックス 修正評価☆8
5着:レッドベルアーム

璃子「さあ、お待たせしました! 先週のメイン、土曜東京11Rにおこなわれた東京スポーツ杯2歳ステークスだよ! サリオスやコントレイルといったのちのGⅠ馬も輩出したこの出世レースを制したのは、我らがPOG指名馬期待の1頭、イクイノックスでしたっ! パチパチパチパチッ!」
姫「前走は3番手から抜け出す競馬だったけど、今回は後方に構える展開になって、ちょっと驚いたわ」
恵麻「でもルメール騎手も慌てた様子はなかったし、馬なりでおさまった位置って感じだったよね」
璃子「直線でも外目で進路が開くのを待つ余裕もあったし、加速がついてからの末脚も凄みがあった。楽勝とさえいえる内容だったよね」
恵麻「上がり3ハロンのタイムが32秒9。スローペースになったといえ、33秒を切る時計は、古馬のレースも含めても当週でここだけだからね。さらに言えば、ラップタイムは11秒0、11秒9、11秒4とゴールに向けて加速してる。これもまだまだ余裕があったことの証拠になるんじゃないかな」
ハヤタ「馬体もプラス8キロと着実に成長してると見ていいんじゃないかな。背中が短くて瞬発力に寄ったタイプにも見える反面、長い首を使って走れるからスピードも持続するんだよね。もちろん筋肉の質は素晴らしいものがあるし、間違いなくこの世代のキタサンブラック産駒のナンバーワンと言えるよ」
璃子「精査すればするほど評価が上がるよねえ……。これはジオグリフと並ぶ評価☆8をつけてもいいんじゃないか? もちろん、対ジオグリフの筆頭候補だよ、これは」
姫「距離が延びるダービーならばあるいは……と思わせるわよね。ちなみにこのレースはPOG指名馬でもう1頭、レッドベルアームも出走したのだけれど、末脚不発で5着になったわ」
恵麻「それでも5着なんだけどね。前半からかなり行きたがって、そのぶん脚が溜まらなかったって福永騎手もコメントしてるよ」
璃子「直線で内に寄れる感じになっちゃって。それで、すぐ外につけてたイクイノックスの進路が開いたから、私たちにはナイスアシストともいえるんだけど……」
ハヤタ「仕上がり的には悪く映らなかったんだけど、気持ちの面で勝ちすぎちゃったのかな」
姫「調教師としては長めの距離でもやれる感触を得てるみたいだけど、きょうだいはマイル前後で活躍しているからね。ゆくゆくは距離を延ばしていけるにしても、現状ではやはりマイル前後がいいのかもしれない。まあ今後のレース選択を含め、立て直しを期待したいわ」

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