年末のG1での狙いを教えてください、逆神様!――長柄高校馬事文化研究部活動記録㉒

宮子「見学料3600円支払うだけで手に汗握るエキサイティングなレースが36回も見られちゃう! しかも年間75~80%のキャッシュバックまである! そう考えると、馬券ってコスパのいい趣味って言えるわよね? ね!?」
ハヤタ「ひさしぶりに部室に顔を見せたと思ったら、どうしたんですか、田村先生? 目がヤバいですけど……」
璃子「そっとしといてあげて。いつもの発作だから」
ハヤタ「発作ってことは、先生、また馬券で……」
璃子「ご名答……なんだけど、今回は馬券で儲けそこねたパターンだね。先週、天皇賞(秋)があったでしょ」
ハヤタ「ああ、うん。コントレイル、グランアレグリアとの3強対決を、エフフォーリアが制したんだよね?」
璃子「そう! 宮姉が今年のダービーで単勝万張りの大勝負をして、ハナ差2着に敗れたエフフォーリアだ! 今回は当然そのときのリベンジにいくのかと思ったら……、この人、ビビッて二束三文の馬券しか買ってなかったみたいなんだよ」
宮子「違うのよ! コントレイルやグランアレグリアが勝つ可能性も大きかったし、ダービーで負かされたシャフリヤールが神戸新聞杯で崩れたし、それ以来の休み明けだし、今回はさすがに様子見かな? って思うじゃない……」
璃子「休み明けはほかの2頭も同じでしょ? それに、いまの東京コースは持続力が求められる馬場になってるから、そういう適性に長けたエフフォーリアが有利ってアドバイスもしたのに……」
ハヤタ「ほかの2頭にくらべるとエフフォーリアは背中が長めの体型で、持続力タイプなんですよね……」
宮子「わかってたの、わかってたのよ。でも……」
璃子「宮姉、ホント安定の逆神様ぶりっていうか、勝負勘ないっていうか……。ギャンブル依存症を引き起こす要因のひとつに『身近なギャンブラーへの憧れ』ってのがあるらしいけど、私、宮姉がいるかぎり健全な精神を保って生きてそうだよ」
ハヤタ「馬券生活者を目指してる室谷さんがそれを言うの……? まあなんにせよ、今回は儲けそこねただけでお金は減らなかったんだから、よかったじゃないですか、先生」
宮子「いや、エフフォーリアでお金を増やすまでは、引くに引けないわ! こうなったら今度は有馬記念でエフフォーリアの単勝勝負よ!」
ハヤタ「すみません、それ、2着になる予感しかしないです……」
璃子「Oh、逆神様ぁ……」

10/30 阪神3R ダ1400m 1着:ネイト
評価☆4.5

恵麻「牝馬限定のダート1400m戦。ネイトは好スタートを決めるも内の馬を行かせて2番手から。直線に入って逃げた馬を競り落とすと、後続の追撃も振り切ってデビュー勝ちを飾ったよ」
姫「兄弟馬たちもダートで堅実に走っていて、そこへ父コパノリッキー。ダートの短いところはどんぴしゃっぽい血統ね」
ハヤタ「420キロと小柄なりに胴の伸びがあるね。重心も低い感じだし、一貫したペースで走れるダートの短距離はたしかに得意そうだね」

10/30 阪神4R ダ1800m 1着:マルブツプライド
評価☆5

恵麻「道中2番手を追走したマルブツプライド。逃げた馬が4コーナー手前で早々とバテたこともあって自然と先頭で直線へ。ラチ沿いを加速したことで後続と広げた差が最終的なアドバンテージになったね。2着馬も良い脚で追い込んできたけど、セーフティリードを保ってゴールできた」
ハヤタ「まだ少し余裕のある体つきだったけど、しっかり走り切ったね。パワータイプで良馬場のダートが良さそうな印象だよ。展開もあって着差のついたレースになったけど、ここで4着までにきた馬たちはレース慣れしてくればどんどん勝ち上がってくるんじゃないかな」

10/30 東京4R 芝1400m 1着:アインシュペンナー
評価☆5

璃子「牝馬限定戦だね。アインシュペンナーは好スタートから一旦控えて好位追走。直線は末脚くらべになったけど、外から鋭く差し込んで2馬身半差の快勝だった」
ハヤタ「パドックでもリオンディーズ産駒らしく気のいいところを見せてたよね。小気味よく歩けてた。結構瞬発力あるよ」
璃子「東京の馬場が持続力寄りになってる中で瞬発力で勝ち切った点は評価できそうだね」

10/30 阪神5R 芝2000m 1着:マテンロウレオ
評価☆5.5

璃子「前半は13秒台のラップも刻まれるスローペース。そのわりに上がりもそれなりにかかるタフな競馬になったね。末脚くらべになる中、最内からしぶとく伸びてきたマテンロウレオが勝利をもぎ取った」
ハヤタ「筋肉の質もなかなかだし、胸も深くて結構良い馬だよね。体型は母父のブライアンズタイムの血も出てる感じがする。軽い切れ味はないかわりに、しぶとく脚を使いそう。時計のかかるタフなレースに強そうだね」
璃子「となると今回は馬場傾向的にもおあつらえ向きだったとは言えるかな。でもこういう条件で強いと覚えておくと後々馬券で役立つだろうね」
ハヤタ「1番人気で3着のレッドバリエンテなんかは逆に、軽い芝向きの瞬発力タイプに見えた。力はあるから早期に勝ち上がれるだろうけど、冬場はちょっと馬場に苦しむかもしれないね」
璃子「来年の春から夏にかけて成績を上げてくる感じか」

10/30 東京5R 芝1600m 1着:カミニートデルレイ
評価☆6

姫「ここは1番人気のカミニートデルレイが期待に応えたわ。好スタートから控えて4、5番手を追走。直線に入って追われるとしっかりと伸びて内の3着馬をねじ伏せ、最後鋭く迫ってきた2着馬もしりぞけたわ」
ハヤタ「これも持続力タイプの馬だね。ジャスタウェイ産駒で少し背中が長めでしょ?」
姫「確かにそうね。言われてみればジャスタウェイもこんな体つきだった気がするわ。距離適性はどうなのかしら?」
ハヤタ「やや前傾姿勢だけどマイル~2000mくらいまで走れそう。軽い身のこなしで筋肉もよさそうだしね」
姫「見栄えもするし、重賞戦線でも期待がもてそうな1頭ね」

10/30 東京6R ダ1400m 1着:ヴァルツァーシャル
評価☆5

姫「このヴァルツァーシャルはダートで走る馬を多くそろえる西森オーナーの所有馬よ。前半はおっつけ気味の追走になったものの、馬群の外目を回って追い上げ、直線で先に抜け出した2着シラキヌとの追い比べを制して1着となったわ」
ハヤタ「まだコロンとした体つきで、腰なんかも少し緩く見せたんだけど、よく走ったね。前半で追走に苦労したのは腰の甘さも影響してるのかな? ただ胴伸びがあってお尻の幅も広いし、スピードの持続力に長けたタイプだよ」
姫「まだ成長の余地を残しながらも結果を出せた点は評価したいわ。この馬もダート路線で堅実に走ってきそうね」

10/31 阪神4R 芝1400m 1着:セイウンハーデス
評価☆5

恵麻「阪神の芝コースは開催が進んで、内よりも外目のほうが伸びやすい馬場になってたみたいだね。2番手を追走したセイウンハーデスも直線に入るとやや外目に持ち出してじわじわと加速して後続を振り切った。スムースにレースを運べたことも勝因かな」
ハヤタ「そうだね。脚も長めでパドックでもリズムよく歩けていたし、いかにも芝向きの馬だよ。持続力があってやや時計のかかる馬場も合ってたんじゃないかな」
姫「この馬は父がシルバーステートで、母父がマンハッタンカフェ。ということは、サンデーサイレンスの3×3っていうインブリードがある配合なのよね。もちろん狙ってのことだろうし、結構攻めた血統構成よね。こういう馬が今後どんな活躍を見せてくれるのかも楽しみだわ」

10/31 東京4R ダ1600m 1着:ペイシャエス
評価☆5

璃子「中盤でペースが緩む展開になって、先団につけた人気3頭での決着になったね。勝ったペイシャエスは直線で追われてしっかりと脚を使って、逃げた2着を競り落としてゴール。調教も良かったみたいで、それがそのままレースにつながったみたいだね」
ハヤタ「人気面では少し離された3番人気だったけど、順当勝ちだと思う。均整の取れた体型で、このメンバーではダートのマイル戦への適性がいちばんあったからね。エネルギーロスの少ない走りができて、1800mに距離が延びてもやれると思う」
姫「北所オーナーの所有馬で、語弊を恐れずに言うと地味な印象もあるけど、コツコツと勝ち上がっていきそうな雰囲気があるわよね」
宮子「こういう馬を押さえておくと馬券的にも楽しめそうね……」

10/31 新潟5R 芝1400m 1着:ディオサデルソル
評価☆5

恵麻「新潟も馬場が荒れてきて芝のレースでは直線で馬群が横に広がることが多くなってたね。そうなると外枠からの差し追い込みもきくようになる。このレースも外から末脚を伸ばしたディオサデルソルとカレンブルーローズで決着。ハヤタ君もパドックからはこの2頭を高評価してたんだよね?」
ハヤタ「うん。ただ、ディオサデルソルは中距離向きの体型に見えたから、ここでの好走はちょっと意外だった。筋肉の質が良く見えたから高評価したんだけど」
恵麻「1400mといってもみんな内を空けて走る展開になったし、上がり時計もかかって、むしろ長めの距離を走れる適性が活きたのかもしれないね」
璃子「まあなんにせよ、次で距離が延びてきたときにどんな走りをするか注目だね」

10/31 阪神5R 芝1600m 1着:ジャマン
評価☆4.5

宮子「勝ったジャマンは11番人気で単勝はなんと113.4倍! いやぁ、こういう馬券をとりたいものよねえ……」
姫「斤量50キロの恩恵もあったとはいえ、驚きましたよね。逃げを打ったことで直線外の芝の良い進路を取れたこともよかったと思います。直線の坂までに早々とセーフティリードを築けましたから」
ハヤタ「細身であまり見栄えはしないですけど、脚をすらりと長く見せて芝向きのスピードはありそうな印象ですよね」
姫「スローペースに落として展開が向いた面もあるけど、上がり3ハロンは33秒8でラップには10秒8も含んでる。軽量のぶんの割引は必要だけど、意外と瞬発力タイプと見ることもできるかもね」

10/31 東京5R 芝1800m 1着:ティズグロリアス
評価☆5

璃子「前半1000mが65秒6のスローペース。直線での決め脚くらべになったわけだけど、内を割って先に抜け出した横山武史騎手騎乗のサトノレギオンを、馬群の外から差し込んできたディープインパクト産駒ティズグロリアスがハナ差差し切った。なにかを思い出させる決着だったわけだけど……」
宮子「やめて! あの日のことはもう思い出したくないのよ!」
璃子「まあ武史騎手はこのあとの天皇賞を勝つわけだから、少なくとも当人にトラウマはなかったってことで」
ハヤタ「瞬発力勝負となると、やっぱりディープインパクト産駒が有利ってことかな。曲飛の馬なんだけど、それが一瞬のキレにつながったのかも。小柄で仕上がりも良かった」
恵麻「2着のサトノレギオンのほうが持続力タイプってことだったけど、今回はさすがに展開が向かなかったってことかな」
ハヤタ「そうだね。ハナ差だし、勝ちに等しい内容だよね。東京コースで続戦してくるならすぐに勝ち上がれる馬だと思うよ」

10/30 東京2R 未勝利 ダ1300m 2着:クルールデュヴァン
10/30 東京3R 未勝利 芝1800m 1着:インダストリア
10/31 新潟1R 未勝利 ダ1800m 11着:フレイムジョーカー

璃子「さて、ここはPOG関連の未勝利戦を3つまとめて見ようか。まずは土曜東京2R。2戦目のクルールデュヴァンが2着だったね」
恵麻「1番人気で負けちゃったわけだけど、意外に冷静だね?」
璃子「まあ、ダートの短距離だし、前に行く馬に勝たれるだろうなあと思っていたから。ある意味予想どおりの結果だよ。スタートも初戦より出て中団につけていけたし、次走はチャンスがあるんじゃないの?」
恵麻「ただ、オーナークラブの発表によると、このあとはリフレッシュ放牧に出して、1月の中山開催を目標にするみたいだよ」
璃子「おお!? そうかぁ……。中山1200mより東京1300mのほうが向きそうなイメージなんだけどなぁ……。まあ、中山を叩いて東京で初勝利、ってところか」
恵麻「着実にポイントを稼いでくれると考えればいいことじゃない? POG期間内の勝ち上がりは十分見込めるよね」
姫「次は東京3Rのインダストリアよ。こちらも2戦目だったわけだけど、見事、初勝利をあげたわね」
璃子「ここはまあ順当勝ちでしょ。相手も2着のユイノゴトクをなんとかするだけって感じだったし」
姫「そうね。前半はひっかかり気味で後方に下げざるをえなかったし、直線でも内にささるところもあったしで、重賞戦線を狙うにはそのあたりも改善されてほしいけれど」
璃子「と、この馬に関しては我々も重賞を意識しているわけです」
恵麻「最後は日曜新潟1Rのフレイムジョーカー。初戦7着からの巻き返しをはかったものの力及ばず11着……」
ハヤタ「うーん、外枠から先行勢についていったものの、4コーナーくらから手応えがあやしくなって直線では一杯になっちゃてたねえ」
璃子「クラブHPのほうでも話が出てたように、距離を縮めたほうがいいのかもしれないね。なかなか前途多難な1頭だけど、条件替わりで一変を期待かな」

10/30 阪神9R 萩S 芝1800m 1着:ダノンスコーピオン
修正評価☆5.5

恵麻「続いてはリステッドオープン特別、萩ステークスだね。6頭立ての少頭数での争いとなったけど、期待の素質馬が顔をそろえた1戦だったよね」姫「スローペースで各馬、脚を溜める展開になって、最後は人気2頭の叩き合い。先に抜け出したのは1番人気キラーアビリティのほうだったけど、外からこれを追った2番人気ダノンスコーピオンがゴール前ギリギリで捕まえて1着。見ごたえもあるレースになったわね」
璃子「キラーアビリティは未勝利戦のレコード勝ちでかなり前評判が上がってたんだよね。もちろんここも負けて強しの内容だったとは思うけど、スローペースで力んで、先に動かざるをえなかったぶん、勝ち馬の目標になっちゃった感じかなあ」
姫「ただ、ダノンスコーピオンの素質を評価する声も結構あるわよ?」
ハヤタ「この馬、デビュー戦のときもそうだけど、今回もまだ体つきに余裕があるというか、筋肉がまだまだ水っぽい感じなんだよね。それもあってなかなか評価が難しいんだけど、この仕上がりで2連勝ってことは、やっぱり力はあるってことなんだと考えたほうがいいかな」
璃子「なんにせよここの上位2頭は今後、重賞戦線に打って出てくることはまちがいないだろうね」

10/31 東京11R アルテミスS 芝1600m 1着:サークルオブライフ
修正評価☆5.5

姫「最後は牝馬限定GⅢのアルテミスステークスね。勝ったのは7番人気のサークルオブライフ。2着のベルクレスタが直線で先に抜け出したところを、外からぐんぐん追い込んできて差し切ったわ。力強い末脚が目立つ勝利だった」
ハヤタ「あらためて馬体を見たけど、背中が長くて平尻で、かなり持続力に特化した体型だね。末脚の持続力が求められるいまの東京の馬場はこの馬にぴったりだったんだと思う」
恵麻「確かに上がり3ハロンの時計を見ても、11秒6、11秒5、11秒7と一定のラップを刻んでいるもんね」
璃子「つけくわえると、その前の2ハロンも12秒0、12秒0。ベルクレスタも持続力タイプってことだし、適性がものをいったレースになったと考えてよさそうだよね。1番人気で5着に敗れたフォラブリューテあたりは、スタートでぶつけられる不利もあったにせよ、馬場が向かなかった面もあるんじゃないの?」
ハヤタ「この馬は明確に瞬発力タイプだからね」
姫「ミントの7着はちょっと期待はずれの感もあるけど」
恵麻「うーん、2戦目でテンションが上がっちゃって、道中でも脚を溜められなかったみたいだね。このあたりはエピファネイア産駒ってことなのかな」
ハヤタ「パドックでも少し気が急いている印象だったよね。ノーズバンドをしてたし、気難しい面はあるんだろうね」
璃子「このレースが阪神JFに直結するかはまだ分からないけど、各馬の適性が見えたのは収穫だったんじゃないの。本番の馬場傾向が持続力寄りになったら、ここでの上位馬にはもちろん注意が必要でしょう」
宮子「ようし、それじゃあ阪神JFはサークルオブライフで勝負ね!」
璃子「Oh、逆神様ぁ……」

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