![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/91393386/rectangle_large_type_2_5110da8b9fd913d6dd29178d14abb9c1.jpeg?width=800)
スペルスリンガーズに訪れたMoMaの冬
みんな!Magic Spellslingers(スペルスリンガーズ)ってゲームを知ってるかい?知らない?そっか!!!!
Magic Spellslingersとは
今年8月に突如リリースされた、かの有名カードゲームmtgのスピンオフDCG
カードゲームのスピンオフでカードゲームを出したのだ 狂ってるぜ!僕はリリース直後から遊んでいるのですが、ゲームシステムがmtgっぽさを残しつつかなり上手い事DCGへと組み替えられており、正直めちゃくちゃ面白いです。流行って欲しい。
流行って欲しいのですが、今回出た新弾で壊れちゃったんだ。。。
研究室の偏執狂
新弾でこんなカードが出たわけですね
![](https://assets.st-note.com/img/1668667207957-QBIjOsd9jd.jpg?width=800)
これ、もともとmtgに有った同名・(ほぼ)同効果のカードの輸入でして
![](https://assets.st-note.com/img/1668667330208-9QUZswYSWo.png)
これだけ見れば「あぁ本家の特殊勝利カードが輸入されたんだな」というただそれだけなんですが、
その
スペルスリンガーズってデッキ30枚なんですよ。。。(本家mtgは60枚以上)
偏執狂ジェイスの冬
これにて何が起きているか結論から言うと、5〜7ターンくらいでデッキ引き切って特殊勝利というデッキが横行しています。お前は何を言っているんだ。
少しスペルスリンガーズ自体の解説を
スペルスリンガーズでは、その名の通りスペルスリンガーと呼ばれるキャラを選択してデッキを組みます。
選択したスリンガーによってデッキに使用できる色が決まり、加えてスリンガー毎に固有の能力を持っています
ここでジェイスというスリンガーの固有能力を見てみましょう
![](https://assets.st-note.com/img/1668668977230-TpnYrNb1ZO.jpg?width=800)
初期コスト20、カードを引く毎にコストが減っていき、起動する事でデッキの中身が全てコスト1になります
(コストの概念はシャドバやハースストーン等の既存DCGとほぼ同システムと捉えてもらってOK。毎ターン最大マナが1マナずつ増えていき、それを使ってコストを払う)
という、デッキを引き進める事で恩恵を受ける固有能力です。
なんだか偏執狂と相性が良さそう!
このジェイス、本来であれば「序盤を凌ぎつつデッキを引き進め、固有能力を起動して軽量化したフィニッシャーを一気に盤面へ送り出し、ボードテンポ差をつけて勝負を決める」って感じのデッキになるはずなんですね。
各種ドロー手段でデッキを引き進めて固有能力を起動しデッキ内を全て1コストにしても、仮にその中に(序盤に使う予定だった)ドロー手段しか無いのであれば、勝ち手段にはなり得ないのです。偏執狂さえ居なければ。
もうお分かりでしょう。
本来であればボード制圧手段なり大型フィニッシャーなりを用意する必要があったジェイスですが、偏執狂とドロー手段(と山引き切るまでにライフを守れる程度の小型ブロッカー)さえ入れておけば勝てるようになってしまったのです。
![](https://assets.st-note.com/img/1668671064380-jIYJuDe4NH.png?width=800)
偏執狂以外のクリーチャーは7枚、
他は全部ドロー&ドローの為のマナ生成手段
これで勝ててしまうのだ。
これにてスペルスリンガーズに冬が訪れました。
かつての本家mtgにおけるMoMaの冬ならぬ偏執狂ジェイスの冬です。
(どちらも【トレイリアのアカデミー】をキーカードとしているのが何とも趣深いですね!!)
なぜ冬?
本家MoMaの冬になぞらえて言うと、他デッキを使用するという選択肢が著しく損なわれているのだ
まずミッドレンジ〜コントロールと呼ばる中長期戦を目指すデッキ。論外である。
ジェイスは早ければ後攻5ターン目、どんなに遅くとも7ターン目には偏執狂での勝利を決める。
そしてそれはこちらの努力によっての回避は不可能なのだ。
通常のアグロデッキ相手であれば「除去や壁でライフを守り切って自分の土俵へ持ち込む」という戦術が一般的に可能だが、ジェイスが攻めるのはこちらのライフでは無くジェイス自身の山札なので本当にどうしようもない。本当に、どうしようもない。
この時点で「勝利に7ターン以上かかるデッキ」は完全に無価値となった。
ではアグロはどうか
「ジェイスが6ターンで勝利するのだから、5ターンでライフを削り切れば良いよね」という実に分かりやすい理論だ。
そして、実際これは実現可能である。可能ではあるが、容易ではない。
ジェイス側が無抵抗で殴られてくれるならまだしも、普通にクリーチャーを出してくる。
何なら【霊気の想像体】という踏み倒し可能クリーチャーが居る分、手札が噛み合った時にはアグロ以上に並べてくる
![](https://assets.st-note.com/img/1668672769714-PoV1MHIgcl.jpg?width=800)
さらには【警鐘】とかいうカードで引きながら並べてくる
![](https://assets.st-note.com/img/1668672873546-0afISuEhrG.jpg?width=800)
つまり1ターン目にこいつを出すと、2ターン目には1マナの壁が2体並ぶ
ドローも2枚分進んでいる。何かがおかしい。
警鐘で1マナクリーチャーを引きつつ霊気の想像体0マナで出します、というのは良く見る地獄絵図である。
そうやって並べたられた壁に対し、除去を打てばその分クリーチャーの展開は遅れるし、戦闘で殴り合えばライフは守られてしまう。。。と言った感じで時間を稼がれている間にあれよあれよと6ターン目である。
ジェイス側が毎度そんなに都合よく回るかと言われるとそうではないが、それはアグロ側も同じである。
いくらアグロと言えど、5ターンキルともなればかなり引きに左右される。
そして動きの再現性の話となれば、ドローに特化しているジェイス側に軍配が上がる。
(ジェイス側でプレイしていての体感での話だが、)アグロの対ジェイスでの勝率は、甘く見積もって五分である。
そしてジェイスに対して五分を取れたとして、ジェイス以外の(そこそこ多様性のある各種アグロ)デッキに対してはどうか。ジェイスはそれらのデッキ全てに五分以上を取れるが?
結局アグロもまた、ジェイスに対してはある程度有効だが、ジェイスを使わないという機会コストに見合うほどの強さは無いのである。
どうしてこうなった????
本当にどうして。。。
あくまで仮説だが、「あまりテストプレイがされていない、と言うよりも開発リソース自体がそこまで潤沢では無い」のではなかろうか
今回の問題は公式側も既に把握しており、以下の声明を出している
Greetings Spellslingers! We are aware that there are problematic interactions in the current meta based around Laboratory Maniac and Gutfire Devil. We plan on addressing those, along with other fixes, during our upcoming v1.03 patch releasing the week ending on December 9th.
— Spellslingers (@spellslingers) November 15, 2022
要約すると
・12/9の週に調整予定だよ
・それまではランク戦ではなく、カジュアル対戦(後述)で遊ぶことをお勧めするよ
・カジュアル対戦では問題のカードは使わないで欲しいな!
である。
昨今のDCGと比較して、メタゲーム崩壊の問題を把握しながらその調整が3週間以上先というのはあまりにも遅い。
そしてここで言われているカジュアル対戦が何かというと、そういったプレイモードがあるわけでは無い。
「コード(いわゆる合言葉)を入力して対戦」という、(主に知り合いとの対戦に使用するであろう)マッチングシステムで、『コードに”casual”と入力して(同じコードを入力した人と)対戦しよう!』という、要するにローカルルール(?)である。もちろんゲーム内にそんな記載はない。
![](https://assets.st-note.com/img/1668677479657-poydckddCB.png?width=800)
とまぁ非ランク戦すら実装されていないのを見るに、おそらく開発リソースがそこまで潤沢では無い。
ので(仮定に仮定を重ねるが)十分なテストプレイを経ずに世に出てしまった、のかなぁ。。。?(テストプレイ以前にダメなカードだと分かりそうな気もするが。。。)
スペルスリンガーズ自体はめちゃくちゃ面白いぞ!!!!
これは声を大にして言っておきたい。
本当にゲームシステムがよく出来ている。
「マナが自動的に増えていく」というDCGライクなシステムに対して、mtgの「土地」という概念を見事に持ち込んでいるし、各スリンガーの固有能力・固有カードから生まれる個性も魅力的である。あとカードゲームなのにスマホが縦持ちなのも地味に嬉しい。
なのでカードゲームが好きなら是非触ってみて欲しい。
偏執狂の冬が明けてからでも良いし、何なら今から初めて偏執狂ジェイスを使ってみても良い。調整までには3週間以上あるし、偏執狂が使い物にならなくなっても他のカードは汎用ドロー・汎用生物なので使い回しが効く。
偏執狂ジェイスがぶいぶい言わせている環境は異論無くクソだが、偏執狂ジェイスでぶいぶい言わすのはそれはそれで(肌に合う人には)楽しい。
僕は楽し過ぎてランキング3位まで行った。
「引くだけのデッキの何が楽しいの」と言われればそれまでだが、それはアグロに「顔殴るだけのデッキの何が」、バーンに「顔に火力投げるだけのデッキの何が」と言うのと同じようなものである。
手なりでカードをプレイしているだけに見えて、使ってみるとカードのプレイ根拠だったり相手との読み合いだったりでちゃんとゲーム性・戦略性は存在しているし、ミラーマッチでは習熟度で露骨に差が出る(もちろん運も少なからず絡むがそれもまたカードゲーム)
偏執狂ジェイスの悪い点は、先述の通り「他のデッキの選択の否定」であるので、偏執狂ジェイスの使用に肯定的な気持ちで居られる人にとっては別に悪くはないのかななどと思う。
記事執筆時のコーヒー代などなります。