ひらや

月に一回エッセイを書かないと懲罰房に入れられてしまいますので、応援よろしくお願いします

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最近の記事

ぬいの持ち歩き注意〜静岡旅⑤〜

緑と水景が織り成す空間は、”ジ・オリエンタルテラス”の名前通り、南国のリゾートにいるかのような雰囲気だった。 結婚式が併設されているらしく、エントランスからロビー、レストランに至るまでラグジュアリーな空間が続く。 「すご~い、豪華~♡」とはしゃぐ私を、わちこさんは白い目で見る。 置いていけと散々受けた忠告を無視し、推しのぬい(ぬいぐるみのこと)を持ち込んだせいだった。 「バッグに入れてるからいいじゃないか」と反論したが、彼女の視線は鞄からむき出しになったぬいの頭部に注がれてい

    • チケット代をGUCCIのネックレスにした話

      今年、はじめて蚤の市に出掛けた。 それまでどこか「おしゃれなフリーマーケット」程度に認識していた私は、アンティークというものの価値にそれはそれは慄き、気になった物を手にとってはそろそろと慎重に戻すだけの生き物と化していた。 「最近思い切って部屋を模様替えしたし、何か素敵なアンティーク雑貨があったら欲しいな~」と思っていたが、会場について30分後にはこの場の雰囲気を楽しむことに目的をシフトしていた。 実際、気持ちよい青空の下で友人たちと手作りのお菓子やドリンクなどを買って味わ

      • 静岡おいしいもの巡り~静岡旅④~

        甘味処『どんぐり』はコ口ナ禍になる前からわちこさんが行きたいと言っていた店だった。商店街のような小道にある店なので、近くの駐車場に止めて歩いて向かうことにする。 3年越しの実現に、彼女の足取りも軽い。わちこさんはイチゴミルクの写真(写実的なイラストだったかもしれない)がプリントされた可愛いトレーナーを着ており、彼女の”やる気”を感じさせた。 「いいですね、イチゴミルクの服着てイチゴミルク飲むの」 私がそういうと、わちこさんは自分の服をチラリと見た後「飲みません、イチゴミ

        • 私達、地獄に落ちてもこよりで竹の根本つつきながら推しの話しよーね~静岡旅③~

          私たちは、最初の広間で地獄にまつわる説明を受けて圧倒され、顔を見合わせることしかできなかった。 わちこさんは「なんだかすごいところに来ちまったぞ」という顔をしていた。しかし、その表情は興奮を抑えきれていない。 私も胸がどきどきと高鳴っていた。どう見てもこれは秘宝館とは様子が違う。 「どうぞ、この先にお進みください」 案内にしたがってほの暗い階段を進む。先ほどの地獄についての説明で興奮していたわちこさんだが、闇が深くなるにつれて「こわい」と怯えだした。 「ひらやさんが先に行

        ぬいの持ち歩き注意〜静岡旅⑤〜

          ただ机が10㎝高くなっただけの話

          この家でうまれ育ってから今年の夏までずっと、自室にクーラーがなかった。あの部屋にはつけられないのよ、と聞いていた。 その話をすると「え、夏とかどうやって生きてきたの?」と聞かれてきたので笑ってしまう。でも近年の猛暑は本当に笑い事ではなくなってきた。 クーラーが欲しい。自室につけることができないならクーラーがついているアパートに引っ越した方がいいのではないか。 引っ越し代や初期費用などを計算しながらふと考える。なんでつけられないんだろう?つける穴がない、と言われていた。私はそ

          ただ机が10㎝高くなっただけの話

          バニラヨーグルトと私

          物心ついたくらいの年齢によく食べていたヨーグルトのことを、今でも覚えている。 昔、祖母の家の近くには移動販売のトラックが巡回していた。豆腐やがんもどき、納豆などを購入していたから豆腐屋だったのだろう。 トラックの荷台には、他にも瓶の牛乳やお菓子なども並んでいて、私が遊びに行く日には一緒におやつを買って待っていてくれた。 そこで買ってきてもらうヨーグルトが好きだった。 小さな容器に入ったヨーグルトは、まだハンバーガーをまるまる一個食べられなかった未就学児にもちょうどよい量

          バニラヨーグルトと私

          広告だけで漫画の感想を書いてみた話

          広告、それは商品を広く認知させる手段である。 だからこそ、商品の魅力や内容が直感的に伝わることが望ましい。 昨今、個人的に”アツい”と感じているのがネット広告だ。中でも漫画広告はすごい。とにかく読者の興味を引くように作中の印象的なシーンを引用するか、ストーリーがわかりやすく要約されている。 つまり、広告を読めばその漫画の”核”をつかむことが可能なのである。 『偽装カレシに愛されてしまいました』は去年秋頃からネット広告で見られるようになった漫画だった。 恐らくは、偽装した彼

          広告だけで漫画の感想を書いてみた話

          車に乗ってるだけの話〜静岡旅②〜

          高速道路、インターチェンジ、ジャンクション、そしてカーナビ。これらは普段無縁の顔をしておきながら、年に数回現れては凄まじいストレスで私達を追い詰めてくる。 「意外だ」と言われるのだが、私も普通自動車免許(AT限定)を取得している。一回でも試験に落ちたら翌日の大学の入学式には出られないという緊張感がよかったのか、筆記も実技もストレートで通った。にもかかわらず今や立派なペーパードライバーだ。いや、こうなることはわかっていた。自分の生活の中に車は必要がないのだ。 ゾンビ映画や漫

          車に乗ってるだけの話〜静岡旅②〜

          ふ〜ん、おもしれーヌン茶

          ヌン茶、もといアフタヌーンティーが好きだ。 見た目が可愛く、ボリュームがあり、夢もあり、満足感がある。友達とおしゃべりをするときにこんなに相応しい食べ物はないとすら思いますね。 どの友人ともアフタヌーンティーにはよく行くものの、中でもW子との回数が多い。 W子も私と同じ思想の持ち主で、お喋りの場にヌン茶が寄り添うことを至高としている。 曰く「オタクと喋れる場があるだけで百点なのに、そこに美味くて可愛いものがあったら百億万点」とのことだ。(わかる~。) W子とは8カ所程の

          ふ〜ん、おもしれーヌン茶

          あの夜明けの空を、忘れることができない

          2017年の秋、初めて生きてる人間を好きになった。 モンスターによる懺悔みたいな出だしになってしまったが、いわゆる"生の推し"という存在ができた。 好きな漫画が舞台化され、それを観に行ったTDCホールの観客席でのことだ。双眼鏡を通してみたその人は"推し(キャラクター)"の姿をしており、スチールで見た印象とは打って変わって生きている人間の鼓動や体温すら感じられた。 「生きてる……動いてる!!本物だ……!!」という衝撃が全身を駆け巡った。雷に打たれたかのようだった。客席が暗く

          あの夜明けの空を、忘れることができない

          わちこ(仮)

          コ口ナは私から(推しの)仕事を奪い、友人達と遊ぶ機会を奪い、長年憧れていた「星のや竹富島」での宿泊機会を奪い、そして最後に自宅勤務を与えた。 自宅勤務もまた、長年の憧れであった。私は自宅とお昼寝が好きなので、ずっと家で仕事がしたかった。しかし、そのためには会社を辞め、独立する必要があったのだが、私には確定申告がわからぬ。企業に所属しても健康診断を受けるのはいつも最後で、精算も毎度つつかれてようやく思い出す始末。その他、なんか……税金とか保険とかもわからぬ。”昼寝ができない今

          わちこ(仮)

          懲罰房送りになりたくない

          あけましておめでとうございます。 昨年末にタコパをしながら友人が言ったのです。 「来年の抱負を書こう。年末に見返して7割達成出来てなかったら懲罰房送りね」 懲罰房って何?の気持ちは誰もが持っていたと思うのですが、響きがとにかく嫌なので、みんな真剣に紙に向かいました。 この年になるともうみんなね、“老後”と“健康”ですよ。まず初めに「年金が貰えないなら我々はいくら貯金をすべきか」という計算から始まり、「1人6,000万必要なのではないか」と仮定して「とりあえずNISA」「タ

          懲罰房送りになりたくない