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一緒に遭難したいひと、あるいは映画鑑賞を継続的に共にできる他者について

20代半ばになるまで、映画にほとんど興味がなかった。もっとも私に限らず、東京に住んでいてもお小遣いの範囲内では映画館に通うのは難しいので、親が熱心でないのであれば、映画館で映画を観る習慣は根付かないだろう。セーラームーンの劇場版かジブリ映画か「踊る大捜査線 THE MOVIE」がかかる時くらいしか、劇場に行かなかった。

Netflixはないが、レンタルショップはそこかしこにあった。同じ世代でも、自宅でたくさん映画を観るうちに好きになったという人はいるだろう。私の場合そのルートも辿らなかった。あえて忌避していた、というのもあるかもしれない。父親は定期的に映画を借りてきてリビングで観ていたが、我が家は両親が不仲だったので、一緒にそれを観るにはあまりにも居心地が悪かった。心の安寧を得るには、部屋に閉じこもり、漫画や小説を読んだりインターネットをしている必要があった。父親が借りてくるのが「SAW」とか「CUBE」とか「ラストサマー」とか、子供に見せる気ガン無視、ホラー映画多めだったのもまあ、影響していた気がする。

なのに何故か、大学で仲良くなったのが、いわゆる「シネフィル」の同級生だった。仮にBとしよう。

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