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薔薇の木に百合の花が咲いたっていいじゃない

「BLと百合どちらもお好きなようですが、好きな作品の傾向や重視するポイント、自分との距離感などがどう違うか聞きたいです。」という質問をいただいたので、考えてみました。BLを好きな理由のところでもちらりとは書いたと思うんですが、あらためて。

そうですねー。実はその二つについては自分でも気になっていたんですが、あまり深く考えたことがなかった。 BLについては「クズ」が出てくるものが好きです。 「クズ」というのは、もっとやわらかい言葉で言うと、「社会不適合者」でしょうか。いや表面上は社会に適合していてもいいんですけど、見た目はまっとうなのに知れば知るほど何かダメな部分を抱えている人間。そういう人が、恋をして、鼻っ柱くだかれつつも救済される話ばかりを読んでしまう傾向にあります。

その最たる例が木原音瀬さんの作品になるのかなと思っています。いやー多分みんな『箱の中』『檻の外』が好きだと思うけどさ、そんでもって『美しいこと』は私も大大大好きだけどさ、『FRAGILE』の受けのクズさは最高ですよ……。

FRAGILE (B‐PRINCE文庫) 

ああいう、自分のクズさを自覚していなかったクズが恋愛を通じてそれを痛感して、でもってクズさが解消されるでもなく多少マシにはなるかもしれないけど折り合いを何とかつけつつ生きていく話が好きなんです。個人的な話ですが、私は私のことをクズだと思っていまして、木原作品のクズたちに猛烈に共感しながら読んでいるので、これはセルフセラピー的な読み方かもしれない……。

「黒子のバスケ」の黄瀬涼太くんと、「Free!」の橘真琴さんについても、この文脈で解釈して愛しています。

単純に文章や話のうまさ、絵のうまさなど、何か秀でたところがあれば読む程度には商業BL・二次創作BLを濫読しているため、一概には言えないところもあります。西野花さんなんかは「クズ」には当てはまらないですが、エロのうまさで大好きですね。何であんなにストーリーを入れる余地なく濡れ場ぎっちぎちなのに違和感なく読めるんだ!!?痴漢電車BL「トレイン・ビースト」が最高に最高で最高だと思います。

トレインビースト (白泉社花丸文庫BLACK)

いっぽう、百合については趣味がガラリと変わります。好きなのは、「少女漫画しているもの」です。 「BLはファンタジー」という言葉がありますが、私にとっては百合のほうがファンタジーと言いますか、なにせ女子校1年目にして学校に絶望し、行き帰りの電車で読む「マリみて」だけが心の支えだったので、それが心に強く根付いています。乙ひよりさんとか、紺野キタさんの作品が好きです。 

もちろん、身を切るような内容の百合(ビアン?)作品も読みますけど、傾向として、BLのほうが激しいものを百合のほうがほわほわしたものを選びがちかもしれません。

というのも、やはりBLというのは、男同士という点で、自分の現実には身に覚えがないぶん、その内実には自分を投影して傷を癒したくなるんだと思うんですよね。一方で、百合は女同士という点で、自分の現実の生活に身に覚えのあるところが多いぶん、その内実は自分の理想を展開していてほしくなっているんだと思います。 なので、BLは遠いからこそ近くのものとして、百合は近いからこそ遠くのものとして読んでいます。なので、百合にはあんまりエロも求めていなかったりする……あってもなくてもいいですね。どちらかといえば指先をなめる程度の描写にエロスを感じるというか、微細な描写の隠微さにときめく感じです。でも「桜Trick」は最高だなとも思う今日このごろなのでした。

桜Trick (1) (まんがタイムKRコミックス) 

 
 

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