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好きなものは好きだからしょうがないけれど、理由を言語化することも必要だなと思ったので、わたしがBLを愛する理由を3つ

私はある程度自分が腐女子であることをオープンにしている腐女子だ。周りの人がとても寛容なおかげで、非常にのびのびと暮らしているが、ときたま「BLの良さがどうしてもわからない」「なぜあんなものが好きなのか?」と聞かれたりもする。まあ別に、私も「男女の恋愛の何がそんなに楽しいのか?」と聞き返してもいいのですが、自分の好きなものについて言語化することをこの一年の目標にしたいなと思ったので、考えてみました。


1)現実世界の男女の恋愛につきまとうしがらみがない

これはすでに多くの人が言っていることだと思いますが、女性が恋愛をするときに考えなければいけないしがらみから自由になって妄想できるからという部分が大きい。男女のラブストーリーだと、たとえ物語がめでたしめでたしで終わっても、「どうせ高校生の恋愛なんてあと半年もすれば別れるだろ」「無事交際が続いたとして、結婚とか出産とかどうなるんだろう?」などという感情が心の隅に残るし、その物語のなかの2人の安泰が信じられたとしても、自分の身をふりかえってしまって、「このリア充達に比べて私は……」と悶々としないといけなくなったりする。

BLなら、結婚も出産も、すくなくとも自分の身に重ねて考える必要がなくなるし、だからこそ永遠の愛なんてものも信じやすくなる。純粋に恋愛だけを楽しむことができる、そこにひとつの魅力があるのは事実だと思う。

(近年逆にBL作品なのに結婚や出産が登場するものが増えてきているのも、この1)を逆説的に補強しているのではないだろうか? 要するに、軽率に自分と無関係に、結婚や出産といった物事を消費したい気持ちがあるのだと思う)

2)キャラ達が「枷」を超える様子を楽しみたい

吉野朔実さんの『恋愛的瞬間』という漫画のセリフで、「友情というのは、何か障害があって恋愛に発展しない状態を言う。性別が一緒であるとか、顔は好みだが性格が気に入らない等」という言葉があるという。私がこの言葉を知ったのは不勉強にもつい最近なのだが、大いにうなずくしかなかった。

私の考える恋愛と友情はこの言葉の通りの関係にあったからだ。

私にとっては、BLというのは、「自分のなかで恋愛に発展しない関係だったはずなのに、なんでか知らないけど好きになってしまった、そんなとき人はどうするのか?」というシチュエーションを味わうための絶好の装置だ。

 「同性愛がマイノリティだから萌えるっていうの?!この差別主義者め」とどこからかお怒りの声が聞こえてくるかもしれないが、そういうことではない。好むと好まざるとにかかわらず、この社会は基本的に異性愛フレンドリーで、社会的な規範としてのみならずみんな自分の内的な規範として「同性と恋愛すること」に無意識な枷を架していることは事実だと思う。

その「枷」を外してまで愛してしまうなかで、人物たちが自分の内的規範と葛藤するさまを読むのが好きなのだ。

(もちろん、「それなら、百合だっていいんでないの?」という意見もあると思う。実際、私は百合も好きなのだけど、それでも百合よりもBLに対してより愛をそそぐのは、根本的に可愛い女の子よりもかっこいい/可愛い男の子たちに本能的に萌えを感じるからだろう。それも理由の一つとして項目立てしてもいいかもしれない)

 3)作品の創意工夫がバラエティにとんでいる

 最後。これは最近自覚しだした要素。最近、商業BLや二次創作BLで活躍していた作家さんが、一般でも活躍する例が非常に増えているが、その理由は、これにつきると思う。つまり、BL作家さんというのは、一般ジャンルでの創作以上に、「作者の創意工夫」を求められ、その結果実力だけがモノを言う世界を生き抜いてきているのだと、私は思う。

2)でも書いたように、異性愛規範にとらわれた日本社会では、まあふつう同性同士は恋に落ちないとされている。異性愛規範にとらわれた読者たちに、男同士が恋に落ちる過程を、納得感をもって見せるというのは、実は相当な描写力が必要なのではないだろうか。

私は、俳句の名作を見るたびに「『5・7・5』などという枷を自分に課すことで、こんなふうに発想を飛躍させることができるなんて!」と驚嘆するのだけど、BLに対しても、「男同士なんていう、基本的にはあまりない恋愛関係を成立させるために、こんなふうに描写を積み重ねるとは!」という驚嘆を感じることがよくある。世間では「アラブの王子様に見初められるとかwwwwwwねーよwwwww」とか「男が出産とかwwwwwwマジキチwwwwww」などと、BLのトンデモ設定を嘲笑する向きも多いだろうけど、別に腐女子達は盲目にそういうBLを礼賛しているわけではなく、たとえトンデモ設定でも読者を説得させるだけの力を持った作品を愛しているだけなのだ。レビューサイトやブログを見れば、そこがきちんとできていない作品については批判されているのもわかるはずだ。

しかも最近では、BL業界も大体のネタはやりつくされているうえに、相当ジャンルが整理されている部分がある。読者のツボにはまる設定をおさえつつ既存作品とは違った工夫で魅了しないといけないという状況では、生き残れるのは本当に実力を備えた人ばかりになる。だからこそ、彼女たちは、一般ジャンルにいってもヒットを飛ばしやすいんじゃないかなーと、つらつら考えている次第である。

 などと、長々と書いてみたのですが、この理由に納得してもBLにはピンとこないという人もいるだろうし、逆にBLはめっちゃ好きだけどこの意見には納得いかないという人もいるだろうし、そもそも腐女子10年以上やっててもまだまだ定まらない部分もあるし、これからも読むしかないさそこにBLがあるかぎり、の精神で頑張りたいと思ったのでした。

※前に書いたものをちょっと変えました。

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