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安全・命を扱う会社の厳しい人事と素晴らしいマネジメントをするCAの共通点

【後編】安全・命を扱う会社の厳しい人事と素晴らしいマネジメントをするCAの共通点。【前編】ではチーフパーサーが責任者をアサインする際の5秒の目利きと、短時間で適材適所を叶えるための工夫をご紹介しました。ポイントは「金太郎飴」、ムラがないことでした。

ポジションが決まったら、いざフライトです。


フライト中に必ず目の当たりにする、素晴らしいマネジメントをするCAの共通点があります。それは、原因自分論です。問題が起こっても、決して、他のCA、雨雲、パイロット、機体、時間などの他責(原因他人論)にすることも、批判(悪口)を言うこともありません。なのでチーフパーサーは、愚痴っぽい人や他者批判をすると予め分かっている人も、責任者にアサインしません。

批判的な発言が多い人でも課題解決力はあります。しかし、解決の過程で、あまりに多くのマイナスを周囲にばらまいてしまいます。たとえば、周囲の人を萎縮させたり、意見を言いにくい環境を一瞬でも作ることです。このような環境で、航空機事故の原因の8割を占めるヒューマンエラーは起こっています。安全を確実に保つために、チーフパーサーは、愚痴・批判を口にする人を、責任者にしません。批判的な言動以外で課題を解決する力があることが、責任者の必須条件です。

航空会社にとっての真の理想は、安全の安定性・持続性です。そこを目指す社員ならば、「批判的な自分の言動を封印して結果を出す」という自己成長の壁は必ず乗り越えています。批判には即効性とインパクトがありますが、安定性・持続性と引き換えです。目先の課題解決を追い求め、真の理想に盲目な人が責任者をするということは、たとえるなら、危険な乱気流の中でもお客さまに食事を喜んでもらおうと、ミールサービスの続行をチームに指示し、お客さまと仲間の安全を脅かしているようなものです。安全あっての食事です。

ちなみに、人は、周りから批判されて自分の課題に気づくより、素直さと意欲を保った状態で気づいた方が成長しやすいですが、「そんな理想通りに彼らは素直に気づかないよ」と言う上司は、往々にして上司自身の自己承認力が未発達で、自分の感情に負けているかもしれません。自分の中の「制御下にない感情」と「問題意識・正義感」の区別がついていないCAは、会社から責任者の資格を与えられません。パイロットならば機長に昇格できません。安全・命を扱う会社の人事は厳しいです。


以上、前編と後編でお伝えしたチーフパーサーが大切にする視点は、「金太郎飴、かる~く見る、原因自分論、批判・愚痴」でした。厳しい、やり過ぎだ!と言われても構いません(笑)航空安全を保つにはこれしかないという確信が、航空会社にも、CAにも、ありますから。ちなみに、ある企業の研修でこの話をした際、「それは航空会社だけに通用する考えですね」と「参考にできることが多い」という、真逆の感想をいただきました(笑)同じ会社の社員から。


さいごに、チーフパーサーにとって大切なことが、もうひとつあります。ムラがある人にも、悪口を言う人にも、能力と感性を最大限に活かして働いてもらわなければ、良いフライトには決してならないということです。今はまだムラがあっても、その人にしかできない仕事があります。悪口を言うタイプでも、その人にしか気づけない視点があります。人はみんな、本当に素晴らしい価値と可能性をもっていて、共に働く、感謝と敬意を払うべき人たちです。

そして、自分にムラと他責思考があることに自ら気づくためにも、その人たちが能力を活かして働き、チーフパーサーと良い関係を築いている状態が必要になります。それが、もっと成長したいと思ったときに、「自分は何を改めればいいんだろう?」という、素直な改善意識に繋がる基礎だからです。


・ムラのない仕事
・原因自分論
・仲間への感謝と敬意
・みんなに価値と可能性があると腹落ちできるほどの他者承認力
・他者承認力の源泉となる本人の自己承認力
・良質なビジョンと徹底した逆算行動

これらをもっていることが、チーフパーサーの内面的な資格とも言えます。


注)この記事は、元CAの個人的な考えに基づいています。



「成長と成功を簡単に潰す、恐ろしい他責習慣」

https://kizuna-global.com/growth-cycle-by-asking-oneself/

「【前編】5つ星を狙う航空会社チーフパーサーの5秒の目利き」


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