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外国人スタッフ教育は、「問題を起こさず働いてもらうため」に行うのか?

外国人スタッフ教育は、「問題を起こさず働いてもらうため」に行うのか、「多様性を活かし成果を出す組織作りの一環」として行うのかによって、ガラリと変わる。

外国人の力を得て発展を期待する日本企業では、外国人スタッフ教育が行われます。あなたの会社は、「教育とは、日本企業で働く外国人スタッフが受けるモノ」と考えていますか?それとも、「組織としての基礎と、日本人スタッフの受け入れ準備が充分ならば、外国人スタッフへの教育は最小限で済む」と気づいていますか?


東京都による支援教育に採用され、成功事例として発表した「多国籍組織のための教育と内製化サポート」を行う中で、私は以下のポイントをお伝えします。

・強い多国籍組織を作るには、教育の順番と内容が大切
・協働を支えるための意識教育は内製化するとよい


まず、教育・取り組みには順番が大切です。

最初に行うのは、会社ビジョンの確認です。ビジョンによって従業員が目指すべき地点が定まり、足並みが揃いやすくなります。阿吽の呼吸が通じない多様性が集う環境をビジョンなしで進むのは避けます。ビジョンは「〇〇な会社になる!貢献する!」などの自分視点ではなく、その先の「お客さまや社会の幸せ」まで視点を上げて設定します。また、視点は素晴らしくても浸透度が実態と合っていない場合は、そこを埋めることが大切です。質の良いビジョンは、無理やり抱こうとすると、捏造型・即席型のビジョンに留まります。ビジョンが湧き出る意識作りが基礎です。

次に、社内教育担当者が意識合わせを行います。担当者の人選が可能であれば、意欲の高さで選ぶのがお勧めです。内製化していく教育と組織創りに必要なマインドを、先立って理解します。

次に欠かせないのが、社内説明会です。組織創りは、教育担当や外国人スタッフの直属の上司が担当者ではありません。彼らを含む従業員全員が担当者です。教育担当者が行う指導の効果が持続するためにも、全員が当事者になることが大切です。

最後に、外国人スタッフが教育を受けます。誤解を恐れずに言えば、外国人スタッフ教育は、最後のオマケです。そこにいれば育つ環境ができることが大切です。「日本企業で働くのだから、教育は外国人が受けるモノ」という考えも多くあります。しかし、社内教育の目的が、そこで働く多様なスタッフの能力が最大限活かされるためであれば、新しく加わるスタッフが教育を受けるものという常識を疑ってみるのも良いと思います。



では、教育の内容は?ここで大切なのは、本質を踏まえた教育かということです。

たとえば、異文化コミュニケーション教育で大切なことは、多様な文化を理解したりコミュニケーションに慣れることより先に、いかなる多様性を目の当たりにしても、相手を柔軟に受け入れ、違いを尊重しながら、自信をもって必要なコミュニケーションを取るためのマインド作りです。

異文化理解&受容教育では、世界の文化を理解することより先に、自分や自文化を理解し、価値を見出し、表現する力を得ることが大切です。これが、異文化理解と受容の基礎です。異文化受容力がある人は、世界の文化に詳しい人ではありません。自分と自文化を深く理解し、価値を自覚し、それによって湧き出る他者受容力がある人です。

ダイバーシティマネジメント教育では、質問力を身につけ、NGワードを理解し、コミュニケーション練習を重ねるより先に、上司自身の自己承認力を高め、個人としてのビジョンの質と浸透度を見直し整理し、人材基盤を安定させることが大切です。外国人スタッフから容易に信頼され、日本人含むスタッフの力を引き出し融合させ、安定成果に繋げている人は、コミュニケーション力が高い人ではありません。人材としての基盤がしっかり整ったコミュニケーション力の高い人です。


本質を踏まえた教育をしていくと、組織は自立自走していきますし、教育を内製化できるようになります。研修会社にとっては、目先の利益が遠のき、葛藤があるとは思いますが、研修が売れることを最終目標にしていれば、いずれその研修は選ばれなくなると思う次第であります。。教育を通した社会貢献を最終目標にしていれば、関わる企業はどんどん自立していき、信頼が残ります。

以前、「信頼で飯が食えるか」と失笑され、言い返せなかったことがあります。「食えますよ。うまい飯が。」と、今なら言えるなぁ。話が逸れました。



最後に。本質を踏まえた教育を試みる場合、「現実は簡単ではない」という反対勢力は必ずと言ってよいほど現れます。できるだけ、「その現実から築いていくのが仕事」と捉えている人が舵取りをすると、良いのではないかと思います。



結論。「外国人スタッフに、問題を起こさず働いてもらうため」に教育を行うならば、外国人だけに教育をしても良い。ただし、組織の持続発展は期待できないかもしれない。。一方、「多様性を活かし成果を出す組織作りの一環」として教育を行う場合、順番と内容が大切。順番は、外国人スタッフが最後。内容は、本質を踏まえる。舵取りは、現実を言い訳にしない改革意識のある人にしてもらう。


ピッチャーって、強い体があって、試合に出るから、勝てるじゃないですか。強い体がなければ、試合に出ても、勝てるかどうかは怪しいです。強い体が組織の受け入れ体制で、試合に出るのが多国籍スタッフによる協働で、勝てるのが価値提供による顧客や社会への貢献です。


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