銀自190

ひとり遊びの映画「銀河自転車の夜」について。

北海道から帰還して早や半月。ボチボチ次の段階の制作に入ろうかなと思ってます。台風も過ぎ去り、季節はすっかり秋めいてしんみりとしてます。

そういえば、フッと思い出し、拙著「旧型自転車主義」(山と渓谷社刊)に昔作った8ミリ映画、「銀河自転車の夜」についてエッセイを書いているのを思い出しました。

今回の旅にも関係していると思いますので、先日の上映会にいらした方、または、本書をまだお読みでない方に向け、このエッセイの一部を記しておこうと思います。

お暇な時にでも読んでみてくださーい。

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銀河自転車の夜

「旧型自転車主義」平野勝之著(山と渓谷社)より。

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〇夜の映画

20代前半の頃「銀河自転車の夜」という8ミリ映画を作った事がある。どんな映画かというと、説明するのがとても難しいのだけど、ドキュメンタリーでもドラマでもなく、はたまた私小説やイメージでも、もちろん実験映画の類でもない。

2部構成で、両方合わせて60分。

同時録音のできる8ミリカメラで、夜の街や、誰もいない公園、人気のない河原などを自転車で移動しながら、バッテリーライト一発だけで、さまよい続けるだけの映画。

セリフは一切なく、音楽もなく、時折、効果音などをまぜるだけ。主観映像で、登場人物は、時折現れる自分の影やチラリと写る自分の姿だけ。第2部の後半で、やや展開の違い(第三者の登場により)が見られるところで終わる、全編、夜だけの映像。

同時録音のマイクが拾うのは、自転車の回転音や、カメラ自身が発するノイズだけ。つまり「ひとり遊びの映画」だった。

当時、余計なものを削ぎ落した映像と音で「映画」の成立は可能か?たぶん、そういうのを作ってみたかったんだと思う。

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〇ひとり遊び

僕は元々、引きこもりがちで、勉強や集団行動が苦手で、何をやっても駄目で、唯一、マンガを描くことが得意なだけの、少し自閉気味な子供だった

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自転車での「旅」に目覚めたのは30代になってからだが、いろいろな妄想を抱きながら自転車でフラフラとさまよい、「ひとり遊び」を繰り返すのは、子供の頃から変わっていない。会社員になる事も、車の免許を取る事も嫌で、ただひたすらマンガを描きその後はカメラをいじり、外に発信するだけが唯一、社会とのつながりだった。

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なんだかここ最近、自分の場合、自転車の旅がエスカレートして、真冬の北海道とか、台風の中に突っ込んでみたりとか、冒険家みたいになってるかもしれないけど、そもそも僕にとっては「ひとり遊び」の延長なのだった。

ひとり好きなくせに、さみしがりやなので、そういった映像などを発信し続ける事が自分にとっては、人と繋がるのに必要な事だった。

良いものを発信しないと、誰からも相手にされなくなる・・そんな恐怖はいまだに続いている。

でも現実として突きつけられるのは「良い」と思ったものを発信しても、逆に相手にされない、という恐ろしさだった。だから最近は何も期待しない事にした、期待しても裏切られるだけだからだ。

そんな気持ちで、逃げるようにまた自転車で旅に出る。

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いまでも不思議な妄想をしたり、子供の頃のワクワクを求め、空を飛んでいる気持ちで自転車に乗っている。

「きれいだな」「すごいな」と思ったら素直にシャッターを切り、また妄想して「この感じ」と、アレコレ工夫しては、またシャッターを切る。

そんな日々はとても好きだ。

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自転車での旅は、そんな自由な妄想を、好き勝手にマイペースで作ることができるからだ。

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そしてまた夜が来る。

わずわらしい宿も、まぶしすぎる蛍光灯も、酔っぱらいの騒ぎも避け、今日も静かに、どこかでテントを立てる。

僕だけの「スターライトホテル」だ。


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