冬のライオン 感想①
よい意味で2度裏切られた。
1回目はメインビジュアルをみて、これはあのドロドロイギリス王室の跡目争いに関する重い話だろうと思ったが、想像以上にコメディとして観られたこと。
2回目は、筋をわかった上で観たら、コメディの笑いの奥にある、人間の哀しみが至るところに見受けられ、実はやっぱり悲劇だわと思ったこと。
人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見ると喜劇だと言ったのはチャップリンだったか。
登場人物7人は、みなそれぞれの思惑と信じたいもの守りたいものがあって、戦っている。
現代のように安穏とした時代ではなく…まぁ、今現在の世界情勢は安穏とは言いがたいけど…、あの1183年頃のイギリスなんて、戦いに破れたら死につながるくらい、立場と力を守ることは重要だったのだろう。
それは相手が家族でも。
この演目、重く仕様と思えば重く作れたと思う。
でも、ぶっちゃけ重いストレートプレイを3時間弱、じっと息を凝らせて見続けるのってしんどい。
少なくともリピートするのは間を空けてくらいには思ってしまう。
そこで、この演目が素晴らしかったのは、軽妙と重厚のバランスの良さ。
テンポのいい台詞回しと軽快な動きと、ちょうどいい間。
そのテンポの良さにケラケラと笑いながら身を委ねていくと、いつの間にか思考の深い沼に落とされていたような気分だった。
芝居の上手い人たち(演者だけという意味ではない)が集まって真剣に言葉という武器で戦うと、こんなに面白くなるのだと感心する。
ところで、演劇というもの、すでに好きな人たちは置いといて、やはり世間的には"なにやら小難しい"というイメージはある。
私としてはエンターテイメントのいちジャンルだと思うのだが、明確なソースは無いけれど、演劇は教養とか知識、勉強から入るイメージがある。
今の日本の学校(特に義務教育)の授業なんてほとんど面白くない。
そんな中でも自ら勉強するお利口なお子さんもいらっしゃるが、うちの息子たちも"勉強をさせる"のには苦労した(苦笑)
こどもなんて勉強は嫌いで当たり前だ。
が、興味のあることはほっといても知ろうとするんだよね。
私自身の義務教育ははるか彼方なので記憶は薄れているが、国語の教科書にも戯曲が載っていたと思う。
それを実際に演じた授業もやった記憶もあるが、年齢が上がるにつれて、ただ読んで主人公の気持ちを50字で答えなさいみたいな授業になっていったと思う。うーん、これで演劇になじめって言うほうが無理だわ。
そこで、この『冬のライオン』のように、最初は取っつきにくそうなイメージでも、観たら意外と笑えるし面白いという舞台は、そういう演劇アレルギーの緩和に役立つのではなかろうか、これは公共放送局なんかで放送しないかなぁなんて考えていたら、公式Twitterで、版権の関係で円盤化も放送もないと…。
うーん、残念!
いきなり劇場に来いというのは、演劇界隈にいる人の想像以上にハードルが高いと思うのですよ。
私はテレビというものが嫌いでほとんど見ないけど、それでも気軽に見られる便利さはある。
興味はあるけど、一体舞台ってどんなことやってるの?もしくは、舞台って難しい話をじっと観なきゃダメなんでしょ?と思うような人たちに、これは面白いから一回観てよ!とおすすめするのに、めちゃくちゃ適材だと思ったんですけどね。
話がそれたけど、とにかくめちゃくちゃ面白いお芝居を観ることができて、充実した時間だったのです。
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