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『裸足で散歩』観劇感想

昨日、東京千秋楽を迎えた『裸足で散歩』
地方公演があるので極力ネタバレしないように感想を書いてみる。
9月22日と29日の2回観劇。

そもそも、最近はよっぽどのものじゃないと最初から2回分のチケットを取ることがないくらいに観劇意欲が減っているわたくし。
しかし、この演目はなんと言っても加藤和樹さんがコメディ初挑戦。
和樹くん、コメディやったら面白そうと思っていた私は飛び付いた。
コメディ作品のなかにいる和樹くんは予想以上に体をはって舞台上を文字通り転げ回り、とても可愛らしく(そう、あのセクシーダイナマイトがとにかく可愛いの!)、本人の味とポールが混ざりあってとても楽しかった。

1回目観たときよりも、2回目観た昨日のほうがさらに自然に笑いが込み上げてきたので、一回一回公演を重ねていくうちに少しずつブラッシュアップされていったのだろうなということもわかる舞台だった。
それでこそ、生でしょ。

しかし、私の得意な"しかし"が登場。
ひっかかる部分がないわけではない。ひっかかるというか、これは難しいよなぁと思う部分かな。

最近、なんとなくニール・サイモンの名前をよく聞くような気がする。
このnoteを始めたあとに、大地真央さんと花總まりさんが主演の『おかしな二人』も観に行った。
でも、私は感想を書かなかった。
書かなかったというのは、よくも悪くも私には刺さらなかったということだ。
もちろんお二人は素敵だったし、大地真央さんはともかく花總さんが意外とコメディ合ってたという新鮮さはあったのだけど、なんとなく。

で、今回のニール・サイモン作品を観て思ったのが、中途半端に古いんだよな~ってこと。
これは、もしかしたら年齢の問題があるのかもしれない。
お若いかたなら60年代のドラマは一周回って新しいのかもしれない。
ただ、私のような中年女性は60年代への憧れを若い頃に一回やっちゃってるんだよね。
特に私自身がなのだけど、某芸術大学に通っていた頃60年代ファッションにはまり、私のファッションアイコンは山本リンダさま!と思って真似をし、手当たり次第に60年代から70年代の映画を見まくっていた過去があるからかもしれないけど。

一番難しいのはコリーというキャラクターだと思った。
ポールは普通の男性でその普通さが面白いので、ああいう男性は今でもいそうなんだけど、コリーは一歩間違えたら大事故になりそうなキャラクターだと思った。
いや、あれは作り方によったら、ただの自己チューなお子さまがおままごとで結婚生活を始めたとしか思えんよ。
まぁ、私も26歳で結婚したときは、結婚とはなんたるかなんて考えたこともないけど。
しかし、若さを考慮しても、コリーのぶっとびかたは、あまりにも自己チュー。正直、私は何の共感も抱かない。
ただ、60年代の物語の主人公はあんな女の子だし、男性主人公が牽かれる女の子もあんな子だった。
それは、おそらくあの時代にはぶっとんだ女の子は新しかったと思うんだ。
女性が憧れる女性もぶっとんだ女だった。自ら実証済み。
ただ、今の時代はあまりにぶっ飛びすぎると、空気が読めない、常識がないと思われるし、ぶっ飛んだ女がさほど珍しいものではなくなってきたので珍重されなくなってきたのではないだろうか。
キャラクター造形の古さが気になる。
歴史物の人物なら完全なファンタジーとして流せるところ、ちょっと前の話だとリアリティーを求めるとこもあるが、50年前のリアリティーと今のリアリティーは大きく変わってきてるんだよね。
20年前でも大きく違うから、今『東京ラブストーリー』の赤名リカは受け入れられるのか???
若いかたなら50年前の話は歴史の遺物に思えるかもしれないが、私などの場合、歴史として片付けるには60年代はまだ身近なのよ。

ただ、コリーを演じていた高田夏帆さんは、アフトクを拝見したところ、とっても明るくあっけらかんとしてて可愛いお嬢さんだったので、彼女だからこそギリ許せるコリーに仕上がっていたと思う。
中の人の魅力が活かされていた。
初舞台だそうなので、これからのご活躍は非常に期待。

もうひとつ、コリーのママを戸田恵子さんが演じていらっしゃったので、さすが戸田さん!上手いし可愛い!って思うのだけど、コリーママにも、今の50歳のリアリティーはないんだよな~。
私と同年代ってことですが、類は友を呼ぶかもしれないけど、今の50歳はあれほど保守的じゃない。
私も好き勝手にしてる方だが、もっと上を行く人は大勢いる。
もちろん、私の知らないところでまだまだ保守的な同年代はいるとは思うけど。
だから「ママも自由にして!」ってコリーが言うのに何の共感も抱かなかった。
共感って感動を産み出しやすいと思うのだけど、そこがないのは非常に作るのが難しいのではないかな?

なので、結論として、60年代ドラマを今に届けるのはものすごく難しいことだぞってことですね。
今回は演技達者な方々が集まり、芝居で笑いを誘うのが本当に上手かったのでとても楽しかった。
ニール・サイモン、下手くそな人がやれる脚本ではないなぁ…。

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