『血の婚礼』観劇感想

久しぶりに演劇として面白いなぁ!!!という舞台だった。
とにかく舞台セットがいい。
とてもシンプルなのに、アイデアしだいでこんなに面白くなるのだなと感心する。
舞台セット幕開けまでと終幕後は撮影OKだったのだけど、撮らずにいたのちょっと後悔。この撮影OKだったのも演出の一部だったな。
壁が徐々に壊れていくときに感じる不穏さ、この先に何が起こるのかとドキドキするサスペンス感を、役者の演技だけじゃなく空間全体で表現していることが素晴らしい。
また舞台に敷き詰められた、アンダルシアの乾いた土を表現したものが、2幕であんなにも効果的な物質になるとは1幕ではわからなかった。いや、アイデアに唸る。
乾いた土の殺伐とした雰囲気が、あの血の婚礼が行われた土地に住む人の因習のようなものなのだろう。日本で言う村社会。
乾きが人の心を蝕んで、病ませているような。

さらにまた音楽がめちゃくちゃよかった。
スペインの情熱的な感じと暗さと。
スペインの音楽ってフラメンコに代表されるように光と影の音楽で、太陽の光が強すぎるとそこにできる影が濃すぎるって感じ。
ミュージカルでも音楽劇でもないのに、音楽がものすごく印象的につかわれていた。

2幕のレオナルドと花嫁が逃避行する場面はコンテンポラリーダンスのようだった。
木村達成さん、早見あかりさんお二人の動きがすごく美しい。
二人を纏う狂気がさらに美しさを増長させている。
あのシーンは何回でも観たいと思った(が、予定が合わず一回しか観れなかったので再演希望)

狂気といえば、須賀健太さん!
いやぁ演技がすばらしかった。
1幕はめちゃくちゃ可愛いなぁと思っていたのだが、2幕の狂気。
血と宿命から逃れなれない怖さ。
一番の狂気を含んでいたのは花婿だった。
私が観た日はアフトクの日だったのだけど、幕が下りたとたんにスイッチが切り替わって、素の人になっていたのもすごいな。
私はカーテンコールも引きずるタイプの役者さんが好きなのだけど、芝居が上手い人ほどカーテンコールでは切り替えるのが上手いんじゃないか説も持論にある(あくまで持論なので異論は認めます)

ネットで上演台本買えたので読んでみたのだけど、ストーリー自体はぶっちゃけそれほど面白いものでもないのね。
なのに舞台はめちゃくちゃ面白かった。
面白く創るってのは、こういう舞台を指すんだよなぁと、改めて演出の大切さを噛み締めた舞台でした。

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