【アリージャンス~忠誠~】観劇感想

最近は仕事の疲れからか出かける余力がない。しかし、なんとか一月に最低でも一本くらいは何かしら観たい。
どれにしようか悩んだのだが、今月は【アリージャンス】に決めた。
テーマが【第二次世界対戦】だからだ。まだ歴史としては浅いからか(とはいえもう70年以上前)、がっつりこのテーマで描かれる演目は少ない。
しかも日本人の強制収容所が舞台だ。恥ずかしながら、私も知識はほとんどない。少し前に橋田壽賀子さんが脚本、草彅剛さん主演の【99年の愛】というドラマでこういうことがあったんだと知ったくらいだ。ただ、このドラマが私の脳みその片隅に居座っていて、もう少し深く知りたいなと思ったのである。

深く知るにはそもそもの日本人移民の経緯を知っておいた方がいいと思うのだが、こちらも浅い知識しかない。これからもう少し勉強したいなと思う。
この何かしらの作品を観て「もっと知りたい!」となるのは、非常に良い【演劇体験】なのではないかなと思う。

前置きが長くなった。

アリージャンスのあらすじについてはHPを見ていただくことにして。

いやぁ、濱田めぐみさんの歌唱にやられた!これにつきます。もう、泣く!眼鏡とマスクなので泣くと大変。
ケイは早くに母親を亡くし、そこから母親変わりとして家族のために生きてきたのだけど、収容所でフランキーと出会い、自分の足で歩き始める。
Higherという曲がケイの心の解放を表しているのだが、事前に動画で聴いたときよりも何百倍も心に響く。
ミュージカル楽曲は単体でも素晴らしいものはあるが、やはり話の流れで聴くときとは違うなぁとしみじみ思う。いや、流れのなかで聴くからこそその本質が大事なんだ。

ちなみに、この曲。

私、ほとんど予備知識なしで観たいけど、先に曲くらいは知っておこうと聴いても、正直なんのこっちゃ?でした(苦笑)

そして、このケイに影響を与えるのがフランキー(中河内雅貴さん)なのですが、これがまたいい男で。
今まで誰かのために生きてきたケイに、一人で立ててることを言うのです。フランキーはケイ自身に魅力を感じたわけです。
フランキーの懐の深さ、大きな包容力を感じまして、こりゃ惚れるわとなります。
Higher の前にフランキーのソロ曲Paradiseがあるのですが、マサくん歌もうまいし、ダンスはキレキレにカッコいいので、おおおおっ!て見いっちゃいました。
あとマサくんは台詞が聞き取りやすい。

もう一人の主役イサム(海宝直人さん)とフランキーの対比も面白かったです。
イサムはフランキーに嫉妬しちゃってるんですよね。
そして、二人の闘い方も真逆で。
イサムは国に忠誠の証を確立することで家族を守ろうとし(イサムはアメリカ人である意識は高いけど、その行動は日本人的だなぁと思ったり)、フランキーは国の間違いに抵抗することで闘う。
私はフランキーに共感するのですが、イサムが間違っているとも思わない。それぞれの闘い方があり、それぞれの正義があると思うのです。
それが少しのズレと意固地さのせいで、別れを生んでしまう。
人の心というのは難しい。

この物語のキーワードに【我慢】と【耐える】があるのですが、この2つの言葉が今の日本の現状とリンクして考え込んでしまった。

我慢強いことは過去の歴史が教えてくれるように、日本人の美徳の1つであるとは思う。
ブチキレてもおかしくないような状況でも、自分をおさえて耐えていれば道は拓くと信じる人は少なくないのではないだろうか。
努力は報われると信じて。

しかし、その美徳を利用されるのはどうか。

大事なものを守るために、我慢や忍耐を受け入れる気持ちを、狡いやつらに利用されて、それでも耐えるのは間違ってると思う。

日本人はもっと怒りの声をあげるべきなんじゃないかと、この一年くらいずっと思っている。
理不尽な環境を甘んじて受け入れる道理はない。
間違っていることには毅然とNo!に丸をつけたい。

"忠誠"とは誰に誓うものなのか。

【アリージャンス】はコロナ禍で少々チケットの売れ行きに苦戦しているようだが、それこそジワジワ系のミュージカルだと思う。
この演目はぜひ日本に根付いてほしい。
キラキラで華やかだけがミュージカルではないのだ。



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