メンタル管理のロジック
今月、僭越ながら某フリー雀荘のメンバー(従業員)さんを中心としたコミュニティで勉強会の講師をさせて頂くことになりました。
せっかくそのようなお仕事を依頼頂いたので価値ある機会にしたいと思い、事前に話してほしい内容を聞き資料を作成することにしました。
今回はその内容をnoteで公開します。
1つ目のテーマは「打牌がブレないようにするための精神論」。いわゆるメンタル管理ですね。
ベタオリすべき局面で熱くなって押してしまう、もしくはリスクを背負って押すべき場面でひよってオリてしまう、など麻雀においてメンタルが原因となるミスは本当に多くあります。
このメンタルに起因するミスを少しでも減らすために私が考えるポイントをいくつか紹介していこうと思います。
1.正しい知識を身に着ける
例えば
こんな形。3mを切って3メンチャンに受けますよね。4mを切ってシャンポンに受ける人はいません。
では3m切りリーチをして一発で2pをツモったらどうでしょうか。多少「ちっ」と思う人はいるかもしれませんが、さすがに「シャンポンに受けておけばよかった〜」とは思わないでしょう。
2pも他の牌と同じ単なるムダヅモである、というのはある程度麻雀をしている人ならご理解いただけると思います。
これは「3メンチャンの方がシャンポン待ちより有利である」という知識があるからです。この知識がないと、「シャンポンに受けておけばよかった」という後悔が頭をよぎり、メンタルを崩す原因となります。
これはかなり極端な例、簡単な形ですが、例えば押し引き。押して放銃したとしても「これは押すのが明確に得である」という自信があれば、それが心の拠り所となり、メンタルを崩すことは少なくなります。
私はよく
麻雀には放銃すべき牌がある
この牌で放銃するのが実力
という表現を使います。麻雀の戦術で重要なのは「再現性」です。本来押すべき牌を止めたことで、それがたまたま放銃回避に繋がったとしても、そこに再現性はありません。次同じような場面に遭遇したら、その人は同じ選択をして今度は和了逃しをするだけです。
麻雀には放銃すべき牌、和了逃すべき手牌、ラスをとるべき半荘というものがあるというのを胸に刻むと良いと思います。
余談ですが、エンターテイメント性や対戦相手へのリスペクトといった論点を無視して考えれば、優勝インタビューのときに「あそこの押し引きをミスしたせいで結果的に優勝してしまった。私は2着になるべきだった。」と言えるのが(競技力という観点からのみ見たら)本当のプロ、という気さえします。私は言いませんけど。
ただこの「正しい知識を身に着ける」について、1つ注意すべきポイントがあります。それが
2.確率についての正しい理解を深める
ということです。例えば5巡目のリャンメンリーチは統計上和了率が68%もあります。
(データ元:「統計学」のマージャン戦術/著:みーにん 竹書房)
例えば序盤に先制リーチを打った局が3回あって、それらが全て空振り(和了れなかった)だったとします。あまつさえ追いかけられて放銃することもあったり。
そんなときに「5巡目先制リーチは68%も和了れるはずなのに、3回続けて和了れないなんてそんなバカな話があるか!やってられない!」と思ってしまうこと、ありますよね。
これは「正しい知識をもっているせいで余計にメンタルを壊してしまうケース」と言えます。先ほどの押し引きの例にしても「この手なら押すのが得なはずなのに放銃してラスなんてふざけるな!」と思ってしまったり。
気持ちはわかるんですが、それっておかしいんですよ。
68%の和了率があるということは、32%は和了れないということです。そして32%和了れないということは、それが3回続くことも3%ちょっとあるんです。
3%って数字をどう思いますか?とても小さい確率だと思うでしょうか。
これはだいたいカンチャン待ちを一発ツモするのと同じ確率です。みなさんカンチャン待ち一発ツモしたことありますよね?
だったら序盤の先制リーチが3連続で和了れないことだってあるんですよ。
これが月に1回麻雀打つだけのサラリーマンの人なら「確かにそれはついてないですね」って私は声をかけます。月に1回、5半荘だとしたらその人は年に60半荘しか打たないわけです。40年間続けたとしても2400半荘です。
どうですか。雀荘メンバーをしてたら2400半荘なんて1年で打つ人も普通にいますよね?これが天鳳などのネット麻雀なら、1半荘あたりにかかる時間がリアルより少ないので、普通の会社員の人でも1年でこれくらい打つ人がいるかもしれません。
私はサンマだと連続で60回くらい打つことがよくあります。30時間くらいでサラリーマンの1年分を経験してるので精神と時の部屋に入ってるようなもんですね。
ある事象に遭遇する確率ってのは、試行数が増えれば増えるほど高くなっていきます。そして我々は精神と時の部屋に入って試行数を稼ぎまくってる人種なんです。
そしたら大抵の「そんことありえんの!?」って事象に遭遇しますよ。
大抵の人は天和なんて見ることなくその生涯を閉じますが、僕らは「相手に天和ツモられて当然」なんです。これをまずは理解しましょう。
こう書くと「自分も天和ツモって当然」という理屈になるんですが、麻雀がメンタルによくないポイントとして相手が3人いるってのがあります。単純に考えて「相手がツイてる確率は自分がツイてる確率の3倍ある」んですよ。
だからよく、戦術書をたくさん読んで勉強してます!みたいな若者が「こんなに勉強してるのに、あのおっさんに運だけで負けるのが許せない!」みたいに言うんですが、私から言わせればそれは本の内容丸暗記してるだけで、確率に対する理解が浅いよね、って感じです。
天和ツモられて当然、10枚オールツモられて当然、5連勝されて当然、これを肝に命じましょう。
3.勝つためではなく上手くなるために打つ
例えば自分がその卓の中であきらかに格上で、そのメンツで長期で打てば平均順位2.40をだせるくらいの差があるとします。
けど今日の成績は2.55だった。つかねーな、って思いますよね。
でもこの思考って麻雀を目の前の相手を倒すゲームだと思ってるから浮かんでくるものだと思うんです。
2.55の日もあれば、2.25の日もあって、その平均が2.40なわけですよね。じゃあ自分より明らかに強い人がその卓に入ったとしたらどうでしょうか。自分が2.40なんですから、その格上の人は2.30をだすとしましょう。
そうすると上記の自分の例と同じくらいブレ幅(2.40の自分が2.25~2.55)がでたとしても、2.15~2.45におさまるわけです。これを目指しましょうよ。
2.40のはずの自分が2.55だった!つかねえ!
じゃなくて
あの人が打ったら2.30くらいで、だとしたら負けてる日も2.45とかでおさまるんだろうな
みたいに思うわけです。私はよく「ASAPINさんならこんなに負けないのかな」とか考えますw
もちろん、先制リーチしたら追いかけられて放銃した、みたいなケースはどんなにうまい人が打っても一緒ですよ。だから1日単位でみたらうまい人でも変わらないのかもしれないけど、そもそも自分は常にベストを尽くしたつもりで、けれど結果的にうまい人とは違う選択をしていて違う成績になるわけですから、ついてないだけだと思っても絶対どこかに「上手い人との差」はあるんです。
そう考えると目の前の相手が下手なのか上手いのか、目の前の相手に勝つか負けるかって、極論どうでも良いことだと思うんです。(厳密にはこの人は押し引きが下手だからドラポンにも押してくるだろう、みたいなのは個別の選択には影響しますが)
それよりも、100点満点のテストで自分は何点とれたのか、っていうそっちに集中する方がメンタルは安定すると思います。
4.おいしいものを食べる
冗談だと思うかもしれませんが、本気ですw
私は医学系の大学に通っていて、一応人間の身体の仕組みみたいなのを勉強してたので、その経験から少しお話します。
人の気持ちとかメンタルって、すごく神秘的なものに捕らえられてますが、基本的には科学で説明できるものなんですよ。脳の働きなんてのは単なる電気信号ですし、それを左右するのはホルモンをはじめとした化学物質です。
すっごく簡単に言っちゃうと「幸せを感じるホルモン」がどばどば出てたら幸せだし「イライラホルモン」がどばどば出てたらイライラするんです。
例えば友達と喧嘩してイライラしているとします。普通の人は根本的な問題である人間関係を修復しないとイライラは治らないと思いがちなんですが、全く別の方法で「幸せホルモン」をだしてあげればとりあえずは幸せになるんです。人間の身体ってそんなもんです。
もちろん喧嘩したときはちゃんとそれも解決しなきゃダメですけど、時間がかかるときもあるし、それまでずっとイライラしてるのも無駄ですよね。
ましてや麻雀の話ですからね。麻雀と関係ない方法使ってでも「イライラホルモン」を減らして「幸せホルモン」を出すことで、少しでもメンタルを保つのは有用だと思います。
じゃあ具体的にどうするのって言うと一番手軽なのはおいしいものを食べることです。おいしいものを食べたら誰でも幸せになります。逆に食欲がなくてそうならないって人は、身体か心のどこかが病んでる状態なので麻雀してないで病院に行きましょう。
とにかくストレスなく日々の生活を送ることが大事だと思います。
筋トレをすると前向きになる、と言う人もいるので筋トレも良いかもしれませんが、筋トレをしたときに分泌されるテストステロンは短気になりやすいという文献もあるようなのでその辺どうなんでしょうか。
まあとにかくそんな小難しく考えなくて「自分が幸せだと感じる行動をとる」ことで、自分のメンタルを「科学的に」良い状態に保っておくというのは有用なテクニックだと思います。甘いものが好きな人なら、調子悪い日は休憩中にコンビニ行ってスイーツを買うとか、出来ることからやっていきましょう。
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