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密室トーク Vol.4

地理人(今和泉)からは、コミュニティハブの一環で、毎月密室トークイベントをお届けしています。
題して「好きで始めたこと、仕事にする?」

・話し手(聞き手)
関翔一(囲碁アーティスト)
今和泉隆行(空想地図作家)

・日時
10月25日(水)19:30〜21:30

関さんは囲碁に関する活動を続けて来た方ですが、なかでも特徴的なのが囲碁アート( https://sekishoichi15.wixsite.com/home )です。これは白黒の碁石でさまざまな図像(イラストや写真等)を再現する中で、対戦上引き分けになるようにもなっており、囲碁のルールや戦術の仕込みもあります。そんな関さんはどのようにして「囲碁アーティスト」になったのか、囲碁との接点から仕事の実情についても伺ってみました。

幼少期はほとんど人と話さず静かだった中で、テレビゲームから音楽まで、一通りの趣味は楽しんでいたようです。なかでもアニメ「シャーマンキング」「テニスの王子様」「ヒカルの碁」は同世代で見ている人が多く、ヒカルの碁の影響でクラスの半分くらいが囲碁を始めるほどの流行に。関さんもここで囲碁熱に火がつきますが、同級生ではなく自宅至近にあった碁会所で打っていたと言います。その後、高校1年で全国大会に出場し、ベスト8になりますが、人間関係の難しさもあって高2で中退。プロを目指したが難しく、こども囲碁教室のアルバイトを始めます。やがて、「高卒認定試験を受けて大学に入った」と話していただきましたが……

高卒認定試験よりも大学入試(大学にもよりますが)のほうが難しく、相当時間の勉強を要しますが、それを捨象するかのようにさらっと「大学に入ります」と語る関さん。高校に行かなかった分、独学で追い上げて入学しますが、思い出してみれば受験勉強にはハマっていたが、あまり記憶はないとのこと。独力でハマり続けるとそれなりの結果は出すものの、他人に多くを語らず、あくまで語り口はさらっとしていますが、「夢中でやっているときは詳しく覚えていないし、うまくいっている実感がある。」と語ります。

大学は哲学科で西洋哲学にハマりつつ、お酒を飲めば話せたこともあり、囲碁以外の活動や人間関係を広げますが、卒論に集中できた一方で就職活動はしなかったようです。後述する囲碁アートの進化のために、碁盤を規定の大きさより大きく広げなければならなかったが、好きな西洋哲学者であるカントがいま見えていること(現象)、認識できるものの外側…を捉えたことで、囲碁アートの「外側」を見る目線ができてきそうだと言います。ハイデガー、サルトルなどを読み始めているが、読んでいくうちに囲碁アートの見え方が変わってくるのではないかという期待もあるようです。

社会人になってからは囲碁関係のアルバイトからスタートします。そこから囲碁教室のインストラクターや、通信教育での囲碁教材作りや採点等、囲碁に関する複数の仕事が始まり、今に至ります。囲碁アートは囲碁教室で、前半戦ではなく後半戦を戦う力を鍛える方法として試行錯誤する中で生まれたとのことです。囲碁アートがあったことで、マニアフェスタ等、囲碁将棋関係者以外の人と知り合い、異なる領域ながら感覚が近い人と知り合えたのは大きいと言います。囲碁は本来打つ(プレイする)ものだが、「作る」手段にもなるという発想の転換、新発想の提供もできたが、そういった新発想で活動する人は刺激になっているようです。

地図は見るもの、読むものにとどまらず、描くものでもある…と、誰かが言ったようで言ってない気もしますが、これは空想地図ともとても似た局面を持ちます。空想地図作家である私も、地図・地理業界の外側への橋渡しがメインで、この立ち位置も共通点がありそうです。ただ、相違点のほうが興味深く…

(関)高校は中退、独学で大学入学、就職はしないが事実上囲碁関係のさまざまな場所で働く…現在は既婚、酒を飲むと話せる
(地)高校は卒業、大学受験は失敗、就職はするが失敗して完全自営業に…現在は独身、酒は飲めないがノンアルでうるさい

…と、各者それぞれの社会定期応力の差が、これまでの人生の針路の大きな差を描いているとも言えます。自分に合った適応力で社会と接続し、少しずつ志向する仕事や人間関係に近づけていく処世術として、ここまでそれぞれの方法で良いのか、と思わせる二つの例かもしれません。十人十色と言うように、十人いれば十通りの処世術があることでしょう。これからもそんな処世術を追っていきたいと思います。

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