けしか欄001(2020/06)-3

 続きです。
 ここからは、ご投稿いただいた中から私が【選ばなかった】歌の評を書きます。

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条件の多い大衆食堂で夜食の麺をすするモナリザ
/きくち病院

『注文の多い料理店』の変奏のような「条件の多い大衆食堂」という舞台設定の上で、なんでしょう、継ぎはぎみたいに「夜食の麺」と「モナリザ」がくっついているようなイメージが浮かびました。
 おもしろい、とは思いますが、その先に行けない……印象でした。「モナリザ」には夜食を食べるイメージも大衆食堂に居る印象もなくて、そこのぶつかり合いはもちろんおもしろい。その一方で、「モナリザ」に変なことさせる……はもうどこか登録済みなおもしろさなんじゃないかなとも思います。見たことあるかもなー、という気持ちが読者によぎってしまうと、ぶつかり合いによって生じた衝撃のおもしろさは半減して、しまいそうです。

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タイミングは合っているから真後ろへ飛んでいくファウル つまり減給
/戸似田一郎

「つまり」の「つまり」じゃなさ……要するに、それで接続できないはずのところにそれをはめ込む、ことによって生じるおもしろさがある歌だと思います。そういうもの、として言葉を動かした痕跡、が残りすぎているのかなあという印象です。そういうおもしろさがあるのがわかるからこそ、それにおもしろがるための読者の閾値は高くなってしまうような気がします。
 たっぷりと文字数を費やした説明が、成立しない「つまり」で処理される→ある意味で無意味化される、そのナンセンスさとかも、わかりつつ……といった感想です。

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 ありがとうございました。引き続き、よろしくお願いいたします。全体で少なくとも10回以内には収めます。

平出奔
Twitter:@Hiraide_Hon
Mail:hiraidehon@gmail.com


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