けしか欄001(2020/06)-5

 続けます。

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金髪のあなたとだれかがキスをする mortalityの類義語として
/帷子つらね

「あなた」に対するけっして綺麗ではない感情……をどうにかこうにか、迂遠に描いていくことでごまかしていながら同時にしっかり言ってもいる歌だと思いました。
 身も蓋もないんですが、「死ね」って言ってる、ように読めるんですね。この下の句は。それに対応する上の句で描かれている情景が、このひとがそういう感情を抱く理由になっているんだと読めます。「金髪の」と強調していることから、なんとなく、「金髪」ではなかった頃の「あなた」と恋人関係にあった私……とかを見出しうると思うんですが、そのイメージ感から「死ね」への接続に、主体の個人的な想いというよりはパブリックイメージ的なストーリーを感じてしまった……という部分があり、なんというか、本気なものを受け取りそびれたような気がしてしまいました。(作者の実際の記憶や思い出なのかもしれない、というのは本当にそうなので、そうだったら、こう思ってしまったしまったことに申し訳なさを感じるので、難しいところなんですが……)
 下句の迂遠さに惹かれるものがありつつも、その迂遠さが遠ざけてしまった本気さを感じたい内容、だったのかなと思います。

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1万円貸してください友人の答えを待ってるキスアンドクライ
/岡本雄矢

キス・アンド・クライ(リンク先Wikipedia)

 知らなかったので、調べて そういう名前なんだ~と思う、のが最初でした。「1万円貸してください」への返答を待つ時間なんかを、そういう、努力とかの先にある場所で例えるなよ……みたいなツッコミを待っている、ように見えます。そう見えて、それですぐに良くない、みたいなことではないんですけど。ツッコまれる準備ができ過ぎている表情、を歌が取ってくると、こちらのツッコミを入れる気が失せてくるのってなんなんでしょうね。
 対比構造自体はきれいにハマっている、だけに、ツッコミ待ちっぽさがノイズになっている、んでしょうか。

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 ありがとうございました。引き続き、よろしくお願いいたします。全体で少なくとも10回以内には収めます。

平出奔
Twitter:@Hiraide_Hon
Mail:hiraidehon@gmail.com

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