けしか欄001(2020/06)-7

 続けます。

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撒きでつくった虹もうつくしく、きみの生まれた夏がまた来る
/小泉夜雨

 この歌、すみません、たぶん「水撒き」だろうと思っているんですけど、この状態で届いたので、この状態で評します。
「つくった虹」なわけですから、自然に発生した空の虹に対して言わば偽物なんですよね。でも「うつくし」い、とこのひとは感じていて、そのことが、下の句の内容にうまく絡んでいっているように思います。
「きみの生まれた夏」は毎年来るんですよね、当然。で、そのことについて、この歌自体は特に何の感情も明記していない。ただ「また来る」とだけ書かれている。んだけど、上の句の「もうつくしく、」から接続されてきていることから、この「も」に「夏」も係っているように感じられるのがおもしろいです。
 そこが、絶妙に噛みあってない感じ、偽物の虹のうつくしさを肯定することと、夏がまた来ること、その夏は「きみ」が生まれた季節であること、の要素要素が詳細のレベルではズレつつも、雰囲気レベルではなんとなく同じ色を示している感じ……によって、一首をきれいな形にまとめることに成功していると思います。ただ、その分どうしてもありがちな「夏っぽさ」のイメージ感がふんわり漂っている……だけ……のように受け取られてしまうともったいないのかな……とか思いました。

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 ありがとうございました。引き続き、よろしくお願いいたします。全体で少なくとも10回以内には収めます。

平出奔
Twitter:@Hiraide_Hon
Mail:hiraidehon@gmail.com


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