けしか欄001(2020/06)-6

 続けます。

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押入れよりとりいだしたる扇風機16回の夏を迎える
/特上あいう

 扇風機を使ってきた年月、ってたしかに覚えないな……って思ったんですけど、この歌は覚えてるひとの歌なのにここが「たしかに」って感想だったの すごい体験だったのかもしれないと今思ってます。
 1,2年ならまあわかる。まだ2回目、3回目だな~ってなるならわかる。でも、数字が増えるにつれてそこの解像度ってふつう下がっていくと思うんですよね。「もうずいぶん使ってるな~」くらいに。「16回」ってすごい。ぜったいおれだったら覚えてねーってなる数字で、だからこそ、この歌のなかの「16」は輝いて見える。その数字の向こうに、これを覚えていられたこのひと、の影がたしかにある。
 それ以外の要素のどうにも説明的に過ぎる感じ……や、言葉のぎこちなく動いてる感じ……あたりに目を向けてしまって、票を投じる、賭け金を出す、ことはできなかったんだけど、なんだか読者としておもしろい体験をさせてもらえた歌だと思っていて、ありがとうございますって言いたいです。ありがとうございます。

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 ありがとうございました。引き続き、よろしくお願いいたします。全体で少なくとも10回以内には収めます。

平出奔
Twitter:@Hiraide_Hon
Mail:hiraidehon@gmail.com


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