けしか欄001(2020/06)-8

 続けます。

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渋谷には美しすぎた。スーダンの青年は夏黒く艶めく
/吉澤匡馬 (よしざわきょうま)

 なんで「スーダンの」ってわかったんだろう……。ざっくりと、人種というところは外見から推察できるのはわかるんですが、国まで断定できなくないですか? なんで、を考えると、まあ本人から聞いたと思うと一番間違いないですね。それくらいには距離感が近い相手であると捉えたほうが、歌の内容にも思えるところがでてくるのかなと思います。
 一方で、その距離感の相手のことを話すときに「スーダンの青年」という言い方になる、のは、【説明】すぎるんですよね……。そこにちぐはぐさを感じてしまう、というのが正直な感想です。

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蝉逃げて斜めに渡る豆腐やのラッパの音がよじれてもどる
/ぱぷりかの花がさいたら

 シチュエーションがおもしろい歌だと思います。ラッパ吹いて屋台曳いてる豆腐屋って僕は見たことないんですけど、まあそういうイメージってありますね。で、この歌では、道に蝉がいて、避けようとして、ラッパの音に影響が出ちゃうというシチュエーションを描いている。そこの「よじれてもどる」をしっかりと感受して、歌にしているっていうところに魅力を感じます。
 ただ、やっぱり言葉・要素が詰め込まれ過ぎている印象になっちゃうかなあ、と思います。「斜めに渡る」あたりに整理可能な余地を見出せてしまえる感じがあって、ちょっともったいないような気がします。

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 ありがとうございました。引き続き、よろしくお願いいたします。全体で少なくとも10回以内には収めます。

平出奔
Twitter:@Hiraide_Hon
Mail:hiraidehon@gmail.com



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