けしか欄001(2020/06)-9

 続けます。

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ORじゃなくANDがいいね新しく買ったソファは2人掛けだし
/龍也

 この「OR」「AND」の表記からは、英単語というより論理回路っぽさを感じます。どちらかひとりだけじゃ正(ポジティブ)の出力にならなくて、ふたりでないといけない。と言ってしまうとただただ甘々な感じですが、そこを論理回路的用語を持ち出して言うことによって、つまり変換を挟むことで、その「ただただ」を回避できているように思います。
 ただ、2人掛けのソファというアイテム、なんか、どちらかというとORっぽい気がするんですよね。ひとりでも座っていればソファの機能を果たしている→正の出力、にはなっているのでは……?というところで、歌のつくりに甘さを感じざるを得なかったというのが正直なところです。まあ、好意的に読みにいけば、ORとかANDとか言ってるくせにその辺の詰めが甘いあたりから浮かれっぷりを感じ取っておもしろがれるのかなとも思いますが。

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名物の笹かま食べた西友の三倍くらいすばらしい味
/荒地識

 【選んだ歌】にはなってないんですが、なんか今読んで あれっめっちゃ好きだな、ってなりました。
 言葉の選び方の雑さ……に魅力を感じられるテンションのときとそうじゃないときってありますね……。いまはかなり感じられるタイミングみたいです、僕。「名物」として食べた「笹かま」は「西友」のそれよりも「三倍くらいすばらしい味」だったという歌で、よかったねー、しか言うことないんですが、なんでしょうね、「西友の」の圧縮感→とにかくこの話をしたくて急いでる感とか、「すばらしい味」のこっちに伝わってこない自己満足感とかの要素要素が、文字列の向こうのこのひとの表情をどんどん「いい顔」にしていってるなー、と感じます。こんないい顔されると、作中主体と読者、という距離感を越えた、あなたと僕、になれるような気がします。【あなた】に、よかったねー、を言える。言えると思ったこと、が、こっちの取り分に最終的になってきた、この時間を過ごせたのすごい楽しかったです。ありがとうございました。

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 ありがとうございました。次でいったん終わりです。残り五首と「終わったな」の話の話、次回やります。よろしくお願いいたします。7/23更新予定。

平出奔
Twitter:@Hiraide_Hon
Mail:hiraidehon@gmail.com

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