ユニットコント「町のコロッケ屋さん」台本無料公開
以前、僕が大阪で活動していた時に、ユニットコントライブ「群像〇〇」というシリーズがありました。僕がそこで作ったユニットコントの台本も無料公開させていただきます。普段載せているものよりも、短くて読みやすいと思うのでコロッケの如くサクッと読めます。
少しばかり、この群像シリーズの説明をします。そもそもの発案者は先輩のシゲカズですさんとロングコートダディ堂前さんです。お二人に誘っていただき、僕も参加させていただきました。
まず「群像〇〇」というのは、イベントタイトルです。〇〇には場所やシュチュエーションなどの設定が入ります。例えば、群像病院、群像旅館、群像商店街、群像夏祭り、群像文化祭などなどです。
群像シリーズに参加したコントの書き手(その都度人数は変動するのですが、だいたい5、6人)は、与えられたその場所やシュチュエーションでユニットコントを作ります。しかもコントの書き手が作った長尺のコントを、その書き手が望む演者を選んで上演できるというもの。とてもワクワクと武者震いとただの震えが止まらないライブでした。
今回は「群像商店街」という公演でやった「町のコロッケ屋さん」というコントの台本を掲載させていただきます。是非ご一読ください。
有料部分はシンプル日記となっております。
サポートやノートの購入してくださる方々ありがとうございます。あなたのおかげで僕はまた一つ、楽しいこと、おもしろいことだけを考えるのに専念できます。これからも応援よろしくお願いいたします。
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『町のコロッケ屋さん』
[出演]
精肉店なかまつ店主 中松修(45) モンスーンT@TSU
中松修の嫁 中松なる子(38) ガンバレルーヤよしこ
高校生 戸田アキラ(17) ラニーノーズ山田健人
業者 谷口(31)男性ブランコ平井
場には精肉店のカウンター。中松修はコロッケを揚げている。中松なる子は店の前で呼び込みをしている。
SE-コロッケの揚がる音が聞こえる。
L-ゆっくり明転
なる子 いらっしゃいませ〜!コロッケ揚げたてだよ〜。美味しいよ〜。ホクホクサクサクコロッケだよ〜!一つ七十円だよ〜。
SE-アウト
修 いらっしゃい〜!いらっしゃい〜!あ、なる子。ラジオの音量上げてくれないか?
なる子はラジオのボリュームをゆっくり上げる。
SE-ラジオの声
『連日世間を賑わせている吉川透大臣の不正献金事件に進展がありました。当
の吉川大臣は本日行われる予定であった記者会見の場に姿を現さず、行方をくらましたとのことです。(ここからフェードアウト)警察は吉川大臣の関係者、近親者にその所在を…』
修 おいおい。全く政治家ってやつはしょーがねえなあ。
なる子 本当ね。政治家もコロッケのようにカラッとしててほしいわね〜。
修 お!さては今、うまいこと言ったな?
なる子 うまいこと言ったわよ。そしてあなたのコロッケは美味いわよ!おほほほ!
修 ぶはははは!
戸田アキラ下手登場
L-アキラにピンスポ
アキラ どうも。僕は平凡な高校生…じゃないです。不良でもないのに金髪ですし、同級生が見てないようなお洒落なフランス映画も見るし、小難しい文学も読む。僕は常に様々なことを考えています。言われたことしかできない、そこらへんの思考停止平凡高校生じゃないのです。さらに僕は平凡じゃないから学校帰りにコロッケの買い食いとかしちゃうのです。
L-明転
なる子 あら。アキラくんじゃないの〜。
アキラ あ、どうも。
なる子 お父さん。アキラくんよ。戸田さんとこのアキラくん!
修 おー!いらっしゃい!さては君、戸田さんとこのアキラくんじゃないか?
アキラ あ、はい。
なる子 今私が言いましたよ〜。
修 そうかそうか。相変わらずいいコロッケ色だ。(髪の毛さして)
アキラ 金髪です。コロッケ色って何ですか。え〜、あのコロッケ一つください。
なる子 ありがとう〜。ちょっと待ってね。
修 おい。一つこれおまけしてやってくれ。
アキラ え?いいんですか?
なる子 いいじゃない〜!一つおまけする!とてもいいアイディア!お父さんアイディアマン!アベンジャーズに入れてもらって〜!
アキラ アベンジャーズ?
修 こら!アイアンマンみたいに!アイディアマンをアイアンマンみたいに!
なる子 ウッフッフ〜。
修 ぶっはっはっは〜。
アキラ は、はは。
なる子 ところで。
アキラ はい?
なる子 うちでバイトしない?
アキラ します。
M-『POTATO』SPECIAL OTHERS
(7秒後から)
L-曲に合わせて三段階の変化の光(赤、青、黄色)
(20秒後から)
L-アキラにピンスポ(カットイン)
アキラ どうでしょうか?たった今僕が平凡じゃないということが立証されました。脈絡のない急なバイトの勧誘にも二つ返事でオーケーを出す。平凡な人間のやることじゃない。そう僕は非凡なのです。もはや僕は日本人じゃない。非凡人です。そんな言葉はないです。…しかしながら、この時の僕は後にあんな非凡な恐ろしい目に遭うなんて知る由もありませんでした。…次の日のことです。
L-ゆっくり暗転
舞台は次の日。修はコロッケを揚げている。なる子は店外で呼び込み。アキラ
は頭にエプロンをつけて、お客さんの応対をしている。
M-アウト
L-ゆっくり明転
アキラ え〜。千円からお預かりします。三百円のお釣りです。ありがとうございました〜。ふう。
修 「ふう」じゃねえだろ!おえ!!千円からってなんだよ!おえ!千円に続きがあんのか?おえ!千円ちょうだいしますだろ?
アキラ す、すいません。
なる子 いい加減にしてちょうだい!いい加減にしてちょうだい!!
修 お釣り渡す時はお客様の目を見て元気良く「ありがとうございました!またお越しくださいませ!」だろうが!
なる子 親の顔が見てみたい!何でこんなことも出来ないのかしら!
修 もう一度基本の挨拶から叩き込んでやる!
なる子 あなた!うちの主人から挨拶を学べるのよ!頭を垂れなさい!
L-アキラにピンスポ
アキラ 通い慣れた町のコロッケ屋さんが厳しい…。
L-明転
修 よし!じゃあお客様が来たとする!なんと言ってお迎えする!?
アキラ え〜。いらっしゃいませ〜。
修 てめえ!このやろう!声が小せえだろうが!
なる子 信じられない!その声の小ささたるや信じられない!!
修 もっとでかい声で「いらっしゃいませ」だ!
アキラ いらっしゃいませ。
修 もっと!
アキラ いらっしゃいませ!
修 もっとだ!
何度か、いらっしゃいませ、もっとの応酬があって
アキラ いらっしゃいませ!!!
修 うるせえー!!うるせえだろうが!!
アキラ そんな理不尽な。
なる子 理不尽かどうかは問題じゃないわ。問題はあなたがうるさいってこと、その一点のみー!親の顔を見せてー!
アキラ ああ。やばい人たちだ。
修 ぶっコロだぞ!
アキラ ぶっコロ?
なる子 ぶっ殺してコロッケにしてやるっていう意味よ!
修 ぶっコロッケすんぞ!てめえ!
なる子 もうこの子、手に負えない!ぶっコロッケして!あんた!ぶっコロッケしてー!
L-アキラにピンスポ
アキラ 残念ながらやばい人たちでした!外面とこんなにも違うのか…まずい。まずいぞ。これじゃあ僕は平凡だ。このやばい人たちに比べたら僕は平凡な人間になってしまう。何とかして僕の非凡さをアピールしなければ!
L-明転
修 何だその反抗的な目は!
なる子 クーデターの目よ!これはクーデターをする人間の目よ!言いたいことがあるなら言いなさいよ!
アキラ …はいどうも!コロッケ食べて元気ホクホク!コロッケマンとは僕のこと!僕をコロッケにしてくれるんだったら自分で自分のコロッケを食べてみたーい!人生色々あるけどもコロッケみたいに細く長く生きたいものです!あ!コロッケ別に細く長くないわ!!イッツアコロッケジョーク!
修 …変なやつだー!!
なる子 変なやつよー!!
修 こんな変なやつ見た事ない!!怖い!
なる子 こんな変なやつをバイトに勧誘して後悔している自分がいるわ!辛い!
アキラ よしっ。僕の非凡さが伝わった!コロッケマーン!
修、なる子 ひいいいいい!
業者の人谷口上手登場。台車の上に大きな発泡スチロールの箱を乗せている。
谷口 毎度どうも〜!
なる子 あら。骸骨おばけさん。
アキラ 骸骨おばけ?
谷口 ああ。ただの悪口です。
アキラ 悪口なんだ。
谷口 谷口です。あれ?アルバイトの子?
アキラ どうもコロッケマンです!
谷口 へえ。コロッケマン初めて見たよ〜。中松さん。あのこれ。いつものやつ。
修 …おう。わかってる。
谷口 これ金です。(分厚い封筒に入ってる)
アキラ すごい分厚い…。ん?お金をもらうんですか?
なる子 ちょっと谷口さん!こんなところで。お預かりしますね〜。
谷口 それじゃ、僕はこれで。
なる子 ご苦労様です。
谷口上手にはける。
修 (なる子へ)おい、これを冷凍庫に入れといてくれ。
なる子 はい。
アキラ そんなことなら、このコロッケマンが冷凍庫に入れて差し上げましょう。(発砲スチロールを運ぼうとする)
修 触んじゃねえ!!!
アキラ (驚く)え?
なる子 …(取り繕うように)あ、あなたは変な人なんだから間違ったとこに持って行かれたら困りますからね。うん。私が運びます。
なる子、台車を押して下手はける。
L-アキラにピンスポ
アキラ すごく怒られた。コロッケマンになりきってる最中に大きな声で怒られた。恥ずかしい。…でもなんで怒られたんだろう。あの箱に秘密があるのだろうか。しかもあんな大金をもらって。材料の納品ならば普通こちらがお金を払うはずだ。…まあまあでも僕は非凡だ。非凡ゆえにコロッケマンと名乗ってしまった以上、コロッケを作り続けるしかないでしょう!…何日かして、中松夫妻が店を空けて、店番を任された日がありました。
M-『March』SPECIAL OTHRS
L-ゆっくり明転
アキラ コロッケマンのコロッケ〜。揚げたて〜。美味しいぜ〜。コロッケを揚げるだけの仕事ってひどくつまらないぜ〜。せめてコロッケ作りたいぜ〜。
M-アウト
SE-ラジオが流れている。
『聴いていただきましたのはスペシャルアザースでマーチでした。心がワクワ
クしてしまうミュージックでしたね〜。みんなは最近ワクワクしたことあっ
た?』
SE-コロッケ揚がる音(3秒)
アキラ ワクワクはないけどサクサクのコロッケ揚がりましたよ〜っと。…美味しそうだな。食べるか。いいや。これは売り物だ。売り物をつまみ食いなんて非凡なやつがすることだ!うん!じゃあ僕は非凡だから食べてよし!
アキラはコロッケを一つ食べる。
アキラ うまっ!外カリッ!中ホクッ!なんだよ〜。幸せ気分じゃねえかよ〜。コロッケ一つでこんな幸せ気分なのは非凡だな!
アキラもぐもぐとコロッケ食べている。口の中でガリッと何かに当たる。
アキラ 痛っ!何か入ってる。何だこれ?
口から取り出したもの、小さなバッジ。
アキラ ん?バッジ?菊の花の模様?ん?これって国会議員とかが胸につけてるバッジ…。何でこんなものが。
SE-ラジオの声
『続いて大手ゼネコン団体から多額の不正献金を受け取った疑いの吉川大臣が
行方をくらませていた事件で、吉川大臣の親族が行方不明届けを提出したよう
です。警察は吉川大臣が何らかの事件に巻き込まれたのではないかという…』
アキラは急いでラジオのスイッチを切る。
SE-アウト
アキラ え?え?いやっ。え?コロッケに国会議員のバッジ?え?いやっ!いやっ!ないないない!そんなわけはない!(あたふた)確かに何かうちの大将は何か知らんけど金もらって材料納品してもらってるけどっ!…うっ!(口を押さえる)
M-『POTATO』SPECIAL OTHERS
(7秒後)
L-曲に合わせて三段階の変化の光(赤、青、黄色)
アキラは下手へ逃げようとする。すると下手から修が現れる。アキラは驚き、
上手へ逃げようとする。上手からはなる子が現れる。じりじりと近寄る修とな
る子。アキラは逃げ場をなくし、カウンターの中へ。
アキラ 来るな!来るな!
L-ゆっくり青い照明に。
修 何に気付いたんだい?
なる子 何に気付いたの?
修 何を知ってるんだい?
なる子 何を知ってるの?
修 何を食べたんだい?
なる子 何を食べたの?
修 美味しかったかい?
なる子 美味しかったでしょ?
アキラはカウンターの下から包丁を取り出し、修、なる子を威嚇。
アキラ 近寄るな!こっち来るなよ!
修、なる子はアキラに近付いていく。アキラが修に包丁で切りかかる。
修はその手を受け止める。その手をコロッケを揚げるフライヤーに突っ込む。
M-アウト
L-赤い照明
SE-コロッケが揚がる音
アキラ うわああ!うわあああ!(ずっと叫んでいる)
なる子 いらっしゃい!いらっしゃい!コロッケ揚げたてだよ〜。美味しいよ〜。ホクホクサクサクコロッケだよ〜!一つ七十円だよ〜。
修 はい!コロッケ一丁!
SE-アウト
L-明転
アキラがカウンターから手を出すと手がコロッケになってる。
アキラ ちょっと!手がコロッケになっちゃったじゃないですか!
修 はっはっは。立派なコロッケだ!
なる子 あら、ほんと!立派な手のコロッケ。コロッ手ね!
修 コロッ手か!あれ?さては今うまいこと言ったな!
なる子 うまいこと言っちゃいました!
アキラ これで僕も本当のコロッケマンだ!
修なる子 羨ましいな!
アキラ やはり僕には非凡な日常が似合っている!
修なる子 羨ましいな!
アキラ じゃああなたたちもコロッケマンになりましょう!
アキラはそう言うと修となる子の頭を持ちフライヤーに突っ込む。
SE-コロッケの揚がる音
修 うわあああ!
なる子 ぎゃあああ!
アキラ コロッケマンの出来上がり!
修となる子が顔を上げる。
SE-アウト
L-赤い照明
M-『The Victory Dance』Theocracy
二人の顔はコロッケになっている。二人は何度も万歳をする。
L-ゆっくり暗転
暗転の中、なる子の声が聞こえる。
なる子 アキラくん?アキラくん?アキラくん!
M-アウト
L-明転(一番最初の形に戻っている)
アキラ え?あ、はい。
なる子 はい。これコロッケ。一つおまけしといたから。
アキラ あ、ありがとうございます。
なる子 あ、アキラくん。バイトとか探してたりしない?
アキラ バイト?
修 最近さ、ちょっと忙しくなってきたからアルバイト雇おうと思ってるんだよ。どうかな?
アキラ …すいません。あの僕塾通ってるんで。
修 そうか〜。残念だな〜。
なる子 じゃあ同級生のお友達でバイト探してる子がいたら紹介してちょうだい。
アキラ あ、はい。…僕は平凡だ。
M-『Mambo.NO.5』SPECIAL OTHERS ACOUSTIC
アキラは上手にハケようとする。上手から谷口が台車を押して登場。アキラと
ちょっとぶつかる。谷口謝る。アキラもお辞儀して謝る。アキラ足早に上手へ
はけていく。
谷口は台車に乗せた箱をカウンター前に持って行く。
修となる子は箱の周りに集まる。
L-徐々に暗転
谷口が箱を開ける。
箱の中の光が漏れだす。
修が箱の中に手を入れ、中のものを取り出そうとする。
L-暗転
おわり
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