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個展のステートメント(24_4_10)

こちらの記事は4月10日から27日までの個展の絵全体に通底する思考のご紹介です。展示情報も最下部に掲載あります。

絵の目的

静かで穏やか気持ち
生活の中に絵を掛けることで日々の暮らしがより良く豊かに

絵の構成要素に関して

■送粉者(ポリネーター)
 ハチやハエやチョウに代表される花から花へ移動し植物の受粉を手伝う動物のことを送粉者あるいはポリネーターと呼びます。花蜜や花粉を食べにやってくる虫などの体に雄しべの花粉が付着し、その後に別個体の花蜜を食べるために移動することで雌しべに受粉します。自ら移動することのできない植物は他の生物を媒介者として新たな生命を生じさせます。
 本展の絵の中の少女をこの送粉者に見立てて描きました。送粉者のように植物に集まる虫たちのように。そして、世界と世界を繋ぐ巫女として。これまでも私は少女を巫女に見立てて描きてきました。その少女が自然や植物を背景に佇んでいる絵です。
 自然の中やお花の資料を撮影していると虫を目にします。森にはトンボやアブなど、植物園のお花にはチョウやハチなど。この虫は何をしているのだろう?この虫は生きているのです。生まれ、育ち、子孫を残し、死んでゆく。生きる為に虫は食事をします。花蜜や花粉を食べに来た虫を利用して植物は種の多様性を広げています。

■森の成り立ち
 こうして植物と動物は共生していることが分かります。そして植物も意外ですが意志を持ち回りの環境に合わせて体を動かし、生長方法を変えます。植物は植物同士で音や臭いを通してコミュニケーションを取って外世界へ反応しています。葉を食べてしまう動物が来ると毒素を生成し、かつ危険を周りの植物に伝達します。何気なく資料にする森も実に多種多様な生き物によって成立しています。表には出てきませんが、小さな虫や菌類など微小な生き物も欠かせません。それぞれが緊密に関係し合ってひとつの大きな生命の塊を形作っています。

■この世界から抜け出して
 一方で人の住む世界は人に最適化された人以外の要素を除外する方向にベクトルが向いた単一の世界です。単一の植生の森では植物はあまりよく育たないようです。それが原因かどうかは定かではないですが、この世界には嫌なことばかりだなと私は感じますし、それが年々増えています。だから、こんな世界から逃げ出してもっと穏やかに暮らせる世界へと行きたいです。私にとって絵はその媒介であり理想郷を示しています。前述したように、絵の中に出てくる少女は世界と世界を繋ぐ媒介者であり、その先にある森は人間の世界と違う原理で成り立つ世界です。見る人の思いを少女が理想郷へといざない心が少しでも穏やかになってもらえたら良いなと思っています。

■構成要素について
 今回はメインとなる6号サイズの世界観の見える絵に付随して、そこに登場する少女のポートレイトに見立てた半身像を3、4号の小さな絵にしました。
 植物は4月を中心に春から夏にかけて目にする花を描きました。桜、紫陽花、薔薇。薔薇は茨姫をテーマに描いています。
 画中に登場する虫や鳥は送粉者です。森にはハナアブ、タヌキ、クマ。お花にはそれぞれの花によく訪れる送粉者です。桜はメジロやヒヨドリ、紫陽花はミドリヒョウモン、ベニシジミ、ヒメアシナガコガネ、チューリップはルリマルノミハムシ、薔薇はカエル、ハナバエ、クマバチです。
 森の中を泳ぐ鮒は神様の遣いとしてこの世と別の世界の交わるこの世とはちょっと違った原理の働く不思議な世界を暗示しています。
 森は私の地元である諏訪の八ヶ岳山麓の高山中の森です。植物は植物園で撮影しています。


個展「静隠の大祝 〜眠る森の聖域にて〜」
2024.4.10(水)ー4.27(土)
11:00~19:00 
日・月休廊 
Gallery MUMON 
〒104-0061東京都中央区銀座4-13-3(入口は歌舞伎座側)
https://mumon.artcafe.co.jp/exhibition/upcomig/
絵の販売方法などの詳細は画廊ホームページよりご確認ください。

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