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安心して眠れる場所

 深い深い森の奥にある場所。動物も植物も少女も溶け合って個を失ったかのようにすべての種がひとつとなる場所。そこは個が侵されることがなく完全に調和している。木々のざわめきも動物の足音さえも含めすべての音が淀みなく重なり合い音のない音が流れている。悲しみや恐れもなく夢の中でまどろんでいるかのように幸福に包まれている。

 例えば森に立つ一本の樹。彼は彼のみの力でそこにいるわけではない。とんでもなく低い確率で芽を出し育っていく。種子は適当な場所に落ちなければ発芽しない、発芽しても他の動植物に食べられる、陽の光も当たらなければ生長もできない。奇跡とも呼べるような確率で成長する樹の種子は虫や動物や風の力に助けられて受粉して生命が宿る。芽を出した樹は同種の樹や菌類や虫との共生関係を築きながら長い年月をかけて大樹へと育つ。
 絵の中にはたぬきとアブがいる。たぬきは樹の実を食い遠く離れた場所で糞をしその中の種が発芽し樹の生息範囲を広げる。アブは雄しべの花粉を雌しべに運び受粉を手伝う。
 多様な種がいなければ樹だけではなく他の生命も存続しません。互いに競い合うこともあるがそれも森全体の生長存続の仕組みのひとつです。己が中心にあるのではなく全体が中心にある世界を描いています。

 今年の目標のひとつは一番の緑の描き手になることです。森をテーマに描くにあたってどんな種がどんな風に関わりながら森を形作っているのかをもっと知らなくてはと思います。もちろんそれを出力する能力ももっと高めます。

 以上のような思想のもとこの絵を描きました。人間の住む場所はとても不愉快なところです。そんな嫌な場所からはなれて心休まる静かな場所で暮らしたい。そんな思いが軸となっているのがこの絵です。

安心して眠れる場所 (湛_a_深緑の褥)
サイズ:6P(410*273mm)
技法:パネルに油彩
価格:198,000円(税込み)

この作品は下記の展示にてご覧いただけます。

個展「静隠の大祝 〜眠る森の聖域にて〜」
2024.4.10(水)ー4.27(土)
11:00~19:00 
日・月休廊 
Gallery MUMON 
〒104-0061東京都中央区銀座4-13-3(入口は歌舞伎座側)
https://mumon.artcafe.co.jp/exhibition/upcomig/
絵の販売方法などの詳細は画廊ホームページよりご確認ください。

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