天より〜天へ 番外編 「天の十五夜前夜祭2023」
23/9/28
7:10
“トントン”
“いや〜あ♪”
お彼岸の三連休後、息子を社宅に送り届けた天が帰ってきた。
「28日には帰ってきなよ」私との約束を守ってくれた。
“なぜって? だって今夜は十五夜の前夜祭でしょ!”
前夜祭に集まる子供たちはその家に縁のある昔のご先祖様。そして未来の子供たちでもある。その子たちが生まれてくる時は今より少しでも良い世界でありますようにと、願う。
天は去年から前夜祭に参加している。子供たちとの再会を心待ちにしていた。
でも何だか様子がおかしい。
天は“いや〜あ”とは言わない。
夜、僕の家のサンルームで十五夜の前夜祭が開かれた。去年は楽しかった。ご飯とおやつの取り合い、そして鬼ごっこ。皆興奮してもちろん僕も……。楽しい時間はあっという間に過ぎて子供たちとの別れが名残惜しかったんだ。
「また来年会おうね」そう約束した。
でも、変なんだ…。
23/9/29
3:12 “にゃ〜” 天が悲しそうに鳴いた。
3:26 “外せるかなー、どれ”
“引退を決めた……”
3:30 “猫ちゃん”
3:34 “まだこれしかいないの?”
3:38
映像は、サンルームのガラス戸が開いた!
3:44 “いた! いた!”
3:54 “雨が降るしさー”
4:00 “マンションの部屋代、324万円”
4:02 “テーブルの上に置いたよ〜♪”
4:14 “もったいねー家族”
4:22 “あいうえお、切れてなかったみたい だね。世界でNo.1!”
4:26 “この想い映像は誰?”
4:29
映像は、白い紙に文が書かれている。
“君、映像を拒むなら……”
4:40 “赤い計算の爪跡”
読んでいる方、この流れを想像してみてください。
“お母さん、聴いた?”
「聴いたよ、天!」
“ビックリしたよね、あの人たち誰?
ガラス戸の鍵をこじ開けて部屋で寝ているお母さんの顔を覗き込んでいたよ!”
“前夜祭の会場費、置いてあった?”
「んー無いよ。でも324円だし…。向こうの世界とは桁が違うんだよね」
“さすが、小野伸二さん! 『見えない世界』でも名前が知れ渡っているって聞いたら本人驚くよね”
「でもさ、失礼だよ。赤字家計って」
“ホントのことだから……”
長岡出身のお使いさんが、地元の仲間たちを招待した。要は『職場訪問』だ。
天と私を紹介したかったみたいだ。
子供向けのご飯でガッカリしていなければいいけど。
「二泊するのか!」
食材は使い切ったから有り合わせの夕食を用意した。
23/9/29
19:40 “わーっ!”
“いただきまーす!”
揃った声がした。
21:58 “これもいいんですか?”
女性の声だ。
映像は、「人数分」と私が丸い果物を手渡している。
22:04 “人間でしょ? あれ”
22:09 “他の店に取られちゃ原価割れ…”
23/9/30
4:30 “静岡に…”
見えない世界の者たちは顔、名前、地名を隠したがる。この方々は『長岡』に帰って行った。
私は、果物の用意を忘れていた。仕事帰りに『柿、りんご』を買ってきて神棚にお供えした。「遅くなってごめん。黒ニャンコ便で送るよ」
夕方、宅配便の果物が届いたらしい。返信がきた。
23:46 “どうぞ、どうせやるなら濾過まで”
“責めないでくれ、責めないでくれ”
「何があったの?」と訊いた。
“あなたたちは何も知らないから”
“食べなきゃ腐れるよ”
“だから『くすくす』と育って欲しかった”
つまり、神様、仏様にお供えした果物は
“早めに美味しいうちに食べなさい”
回りくどく言われたのだ。 (笑)
23/10/2
7:32
“僕の世界は『想いの世界』、だから伝えるんだ”
抜き打ち職場訪問も無事終了? いや、まだあった。昨夜、神棚に向かい言った。
「今度は是非、連絡を。子供たちだと思ったから…」
23/10/3
4:33 “まだ子供たちに『胡瓜程の忖度』を?”
4:34 “……子さん”
お使いさんは私のことを「おめえ」と呼ぶ。言われる度、名前知らないのか? と思っていた。
さすがに仲間たちに「こちら、おめえです」とは紹介できない。
来年はどうなることやら。今度は誰が来るか楽しみだね、天。
“……”
どうしたの、天?
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