「馬力絞り出しメーター(USM)」とは

馬の能力を正確に反映するのはオッズ

「この騎手は頼りになる」という判断基準は人それぞれでしょう。私は「馬の能力をきちんと発揮できる」騎手こそが、「頼りになる騎手」だと考えました。そしてそれはつまるところ、「騎手の真の実力」なのだとも思います。

騎手の実力=腕を比較しようと思った場合、ネックになるのが、騎乗馬の能力を筆頭に、枠や馬場など同じ条件のものがひとつもないという点。だから勝利数や勝率などを単純比較しても、その騎手の実力を正確に反映しているとは言いがたい。例えばたくさん勝つ騎手が上手いというのは、一方の事実ですが、実際はいい馬にたくさん乗っているだけで、腕前は大したことないかもしれない可能性があります。

そこで、騎手の腕前を可視化するために編み出したのが、今回の目玉データ「馬力絞り出しメーター(USM)」なる指標です。

「騎乗馬の能力」や「枠、馬場などの諸条件」から導き出される「そのレースにおける総合的な騎乗馬の評価」があるとすれば、「オッズ」がもっとも正確に反映している数値だと考えました。オッズは馬券ファンの投票行動から積み上げられた「集合知」であり、オッズと好走率には明確で揺るぎない相関関係(オッズが低いほど好走率が高まる、など)があるからです。

オッズを「騎乗馬の疑似能力」ととらえて、各騎手のオッズ帯ごとの成績を精査していけば、その騎手が「騎乗馬の能力に見合った結果を残せているかどうか」を判定することができるのではないか。それを数値化したのが、「馬力絞り出しメーター」なのです。

能力以上に絞り出す=頼りになる!

では具体的にどのように「馬力絞り出し率」を計算したのか、ルメール騎手を例にとって説明します(下記表参照)。

ルメール

ルメール騎手は18年10月1日~19年9月30日までの集計期間中に単勝オッズ「2.0~2.9倍」の馬に134回騎乗し、43回勝利(勝率32.1%)しています。さて、このオッズ帯の勝率は「33.0%」です。この全体勝率に「騎乗回数134を掛けると44.2」と出ます。これは「このオッズ帯の馬に134回乗ったときの推定勝利数」を示すものになります。

「実際の勝利数」がこの「推定勝利数」よりも多い場合、「騎乗馬の能力以上の力を絞り出している」ことを表わすはずです。逆に「実際の勝利数」が「推定勝利数」より少ない場合は、「とりこぼしが多い」ことを示すことになります。ルメール騎手の場合、「2.0~2.9倍」のオッズ帯の馬に関しては、「実数43<推定数44.2」となっているので、このゾーンでは少なくとも馬の力をやや下回る結果しか残せていないことになります。

このように各オッズ帯別に「推定数」を計算し、それらを合算。この「合計推定数」で「実際の合計数」を割ったものが「馬力絞り出しメーター」になるわけです。この率が100%を超えている騎手は「能力以上の結果を絞り出している=頼りになる」と判定できるし、反対に100%を割り込んでいる場合は、「取りこぼしが多い=頼りにならない」と判定できるのです。

ルメール騎手は、推定勝利数が「188.5」に対して、実際の勝利数が「182」なので、馬力絞り出しメーターは「96.5%」、若干取りこぼしているといえるでしょう。

さらに、「勝利数」「連対数」「複勝圏内数」それぞれについても同様の計算を行ないました。これで「アタマは取りこぼすけど、3着内には持ってきてくれる」とか「1着か着外かのピンパー傾向」といった、各騎手のきめ細やかな傾向も浮かび上がるでしょう。

この「馬力絞り出し率」が算出した数値には、「実際の騎手の腕前をかなり反映している」という手ごたえを感じています。活用していただければ、馬券戦略にも役立つはずです。

最新の「馬力絞り出しメーター」を公開!

19年6月29日~20年6月28日までの1年間の平地競争対象に最新の「馬力絞り出しメーター」を算出しました。以下にリーディングトップ100位までの騎手の最新の「馬力絞り出しメーター」の数値を発表しています。

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