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騎手の好不調の波を可視化する【ジョッキー・バイオリズム】

USMを応用し、騎手の好不調の波を可視化

今回の記事の試みはUSM(馬力絞り出しメーター)を応用して、騎手の調子の推移を可視化してみようというものです。

USMとは、ジョッキーの真の実力や馬券的な信頼度を測定するために編み出した指標。騎乗馬の総合的な能力を端的にあらわしているファクターは単勝オッズだと考え、オッズ帯ごとの成績を集計し、馬の能力をきちんと発揮できているかそうでないかを判別したものです。人気通りの成績を収めていると100%になり、人気以上にどれくらい馬の力を絞り出しているかをパーセンテージで表現。逆に、取りこぼしが多いと判定されると100%を切る数字となる。USMについて詳しく知りたいかたは以下リンクの記事をご覧ください。

USMは集計月から遡って過去1年分の成績をもとに算出しており、毎月更新してきました。新しい月の成績が加わると、前年同月の成績が集計期間外となり、徐々に数字が上下していく。19年9月からUSMの調査をはじめ2年分のデータが収集できたので、それをもっと活用できないかと考え、月毎に数字を並べて折れ線グラフにしてみたのです。

USMだけだと、どの騎手の腕が良くて、どの騎手が下手かといった騎手同士の横の比較ばかりにどうしてもなってしまう。それが、月毎に並べて折れ線グラフにすることで、その騎手のUSMがどのように推移したのかがわかり縦の比較が可能になる。そして、その推移を詳しく見ていくと調子の波がバイオリズムのような周期を作ってるようにも見えてくるのです。

2年間の調査により、松山騎手や横山和騎手といったUSMの数字が安定して100%を超えている騎手は、どんどん勝ち星が伸びてリーディング順位が上がることもわかっており、これからブレイクするであろう騎手の予測精度を格段にアップさせることができました。とはいえ、まだ道半ば。もっと研究を続けていけば、いろいろな発見ができると思っています。

言葉で説明するよりも、実際のグラフを見てもらったほうがわかりやすいと思うので、ここからはリーディング上位の騎手のグラフとともに見ていきましょう。

グラフは、馬の能力以上の走りを引き出せているか否か、一目でわかるよう100%のラインに黄色い線を引いています。このラインより上は人気以上に走らせていることを表し、下回れば取りこぼしがあるというわけです。青線がUSM単、赤線がUSM連、グレー線がUSM複となっています。


C.ルメール騎手

1ルメール

現在42歳。デムーロ騎手と同い年なので後厄(笑)今年も200勝ペースで勝ち星を量産しており、成績面を見ると一点の曇りもないが、年齢的な体の衰えは進行していて不思議ない。今年に入ってUSMが下降しているように見えるのが気になる。

関東馬に騎乗する割合が18年52.2%→19年63.1%→20年67.5%→21年70.0%(21年10月17日現在、以下同)とどんどん増えており、いまや関東の騎手といっていいのでは。

関西馬成績
18年:87勝(367鞍)勝率23.7%
19年:64勝(240鞍)勝率26.7%
20年:63勝(254鞍)勝率24.8%
21年:38勝(188鞍)勝率20.2%

関西馬重賞成績
18年:6勝(28鞍)勝率21.4%
19年:5勝(20鞍)勝率25.0%
20年:6勝(18鞍)勝率33.3%
21年:3勝(19鞍)勝率15.8%

関西馬の供給が質量ともに減っている印象。関西のトップジョッキーは層が厚く、ルメール騎手の手腕に頼るシーンが減っているということもあるのかもしれない。

川田将雅騎手

2川田

武豊騎手がディープインパクトで三冠を達成したのが36歳のとき。岡部騎手がシンボリルドルフで三冠を達成したのが36歳のとき。福永騎手がコントレイルで三冠を達成したのは42歳のときだが、36歳のときエピファネイアとのコンビで皐月賞2着、ダービー2着、菊花賞1着と準三冠を達成している。多くの一流騎手の足跡を見てみると、もっともジョッキーとして脂が乗る時期が36歳の頃。川田騎手は今年の10月15日に36歳になった。

単と連のUSMは常に100%を超えており、最近は勝ち切る騎乗を徹底しているのか単がさらに上昇している。来年はキャリアのピークとなるような活躍を見せてくれるのかもしれない。

福永祐一騎手

3福永

19年の後半はUSMが下降傾向で、調子が上がっていなかった福永騎手。19年11月に騎乗停止となりマイルCSのインディチャンプやJCのワグネリアンに騎乗できなくなるなど流れが良くなかった。東スポ杯2歳Sのラインベックも騎乗停止で手放すことになってしまったが、そのレースの勝ち馬はコントレイル。ホープフルSでコントレイルとのコンビ復活が叶ったのは、実はこの騎乗停止のおかげだったのかもしれない(ラインベックに騎乗していたら、ホープフルSもコンビ継続でラインベックに騎乗していたかもしれない)。コントレイルとの出会いがスプリングボードになったのか、USMが急上昇。三冠達成となった20年10月頃にピークを迎え、好調が続いていた。ただ、USMの推移をみると今は調子の後退期にあるのかもしれないので、その動向には注意したい。

松山弘平騎手

4松山

USMが高値安定していた騎手で、どんどんリーディング順位もアップ。昨年はデアリングタクトとのコンビで牝馬三冠も達成し、一流騎手の仲間入りを果たしたといっても過言ではないだろう。USMがジリジリ下がっているようにみえるが、実力に周囲の評価が追い付いてきて人気になりやすくなっただけなのか、調子が下がってきているのか、そこを注意深く見ていく必要がありそう。

横山武史騎手

5横山武史

昨年94勝を挙げブレイク。今年はエフフォーリアで皐月賞を制し初のGⅠタイトルもゲット。順調に成長している。USMは単だけ高く勝つか負けるかハッキリしたピンパータイプのジョッキーで、思い切りのよい騎乗ぶりとリンクする。今年に入って数字が下がっているのは、夏の北海道以外のローカル回りをやめ、中央場所で戦うようになった影響か?

吉田隼人騎手

6吉田隼人

所属上は関東リーディング2位というポジションになりますが、いまは関西圏で騎乗していて、関西馬に騎乗する割合が79.2%もある。実質的には関西のジョッキー。リーディング順位が上がってもUSMは100%超をキープできているので、リーディングトップ10の常連に定着できそう。

戸崎圭太騎手

7戸崎

19年11月JBCレディスクラシックの落馬負傷で長期戦線離脱を余儀なくされ、20年5月に復帰。単のUSMを大きく下げてしまったが、徐々に調子を戻してきた。

今年6月のUSMの落ち込み理由は分からないが、騎手は乗鞍を絞って騎乗の質を高めたほうがいいタイプと、たくさん乗ったほうが体が動くという2種類がいて、地方競馬出身騎手は後者のほうが多い印象。サウジダービーとドバイWCの2度の海外遠征とその後の隔離で騎乗数が減ってしまったのが影響しているのかも。

幸英明騎手

8幸

騎乗数のペースを見ると年間1000鞍は厳しそうだが、今年もこれまで岩田望騎手の707鞍に次ぐ、695鞍でたくさんのレースに騎乗している幸騎手。今年は現時点で67勝で昨年の勝ち星を上回っており好調。USMも上昇気配を感じる。

岩田望来騎手

9岩田望

2年目の昨年は76勝を挙げてリーディング9位に入る活躍を見せた。今年もこれまで65勝を挙げリーディング9位に入っており、着実に勝ち星は伸ばしているが、重賞は75戦未勝利で2着が5回あるもののまだ勝てておらず、さらに上のレベルに上がるのに苦労している感。USMも昨年後半から下降傾向になっていたが、また再浮上を始めているように見える。レベルアップ間近というところか?

横山和生騎手

10横山和生

19年後半からUSMが異常な高騰を見せており、隠れた腕利き騎手として見ていたが、今年ようやくブレイク。65勝を挙げリーディングの10位につけている。騎乗馬の質が上がり、人気馬に跨ることも増えUSMの数字は地味になっているが、まだまだ100%よりも上で推移しており、まだ上を目指せると思っている。

M.デムーロ騎手

11デムーロ

「早く厄年が終わって欲しい」と今年のオークスの勝利ジョッキーインタビューで語ったデムーロ騎手。19年は前厄。アドマイヤマーズ、グローリーヴェイズ、スワーヴリチャードなどお手馬が次々に乗り替わりになり、それが乗り替わった騎手の騎乗でGⅠ制覇したことで、どんどん厳しい立場に追い込まれてしまった。本厄の昨年もUSMが100%以下で推移し苦戦。今年の4月の長男誕生が刺激になったのかようやくUSMが上向き調子を取り戻してきた感。来年の正月には厄年が終わるので、復権に期待できるかも。

武豊騎手

14武豊

USMの推移をみると大きな浮き沈みはないが、19年、20年と2年続けて年間100勝達成していたのに、今年はこれまで54勝と100勝は厳しい情勢。今年3月の騎乗中のケガで1カ月半休養しており、その復調に時間がかかったのかもしれない。

三浦皇成騎手

15三浦

17年大ケガから復帰。19年にはキャリアハイの102勝。しかし、20年1月5日にまた落馬事故に巻き込まれる不運。なかな軌道に乗っていけないが、今年は大きなアクシデントなく騎乗できているのに単のUSMが大きく落ち込んでいるのが気になる。複のUSMは100%を超えており着拾い傾向が強くなっている。

亀田温心騎手

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キレイな右肩上がりの傾向が見え、着実に腕を上げている印象。レイハリアとのコンビで葵SとキーンランドCを制し重賞のハードルもクリア。まだまだ勢いが持続しそうなので、注目したい若手騎手。

柴田大知騎手

56柴田大

馬券的な扱いが難しい騎手。1着付けで狙う気にはならないが、2、3着には人気なりに持ってきている判定。今年も二けた人気馬での馬券圏内が16回もあり、人気のない時の一発があるので無視もできない。人気薄時にヒモで買うのがベターでは。

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最終的には50人超のジョッキーを取り上げる予定なので、単体の記事を購入いただくよりもお求めやすくなっています。

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