テレ東ドラマシナリオ案その4
好きが消えた世界
水町のい
小野ケイ
のい「さっきから聞いてたら、条件ばかりだよね。一生、養っていきたいとか。ずっと傍にいたいとか。そのために安定した職業に就いたとか」
ケイ「それは君を安心させるためにどうしたらいいかを真剣に考えた結果の行動と指針を伝えたかったからだよ」
のい「私を安心させたい? 私の親にでもなるつもり?」
ケイ「ええっと、だから君には僕の子供を産んで欲しい!」
のい「いきなり重いわね」
ケイ「じゃあ、率直に、やりたい!」
のい「けだもの!」
ケイ「ごめん。異性として見てると伝えたかっただけで。もちろんやりたいだけじゃない」
のい「……それを証明するにはどうするの?」
ケイ「そう。それなんだ。どうしたら僕の気持ちをわかってもらえるんだ? そうだ! 富士山に登るよ! 山登りは趣味じゃないけど、君のためならデキル!」
のい「ますます意味不明だわ。富士山を登ることで、私の心の何が動くの?」
ケイ「じゃあ、君はどうして欲しいの?」
のい「安定が欲しいわけじゃない。感動が欲しいわけじゃない。子供を育てたいわけじゃない。私がケイとしたいのは……」
ケイ「したいのは?」
のい「わからない」
ケイ「わかった。じゃあ、ふたりでそれを見つけよう。それならどう?」
のい「見つける? どうやって?」
ケイ「だから一緒に生活して見つけるんだ。一生かかっても見つかるかわからないけど。一緒にご飯を食べて、一緒に眠って、目が覚めるとお互いを最初に見て、それで死ぬときもお互いを見て……そうやって一緒に一生考えていこう。この気持ちが何なのか……」
のい「……そうね。それで手を打つ」
ケイ「ありがとう」
のい「お礼を言われることじゃない。これから私たちは、この気持ちが何なのかを見つける同志になっただけよ」
ケイ「だからさ。同誌に僕を選んでくれてありがとう」
ふたりの影が重なる。
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