見出し画像

『3点差での敗戦という事実と、諦めずに戦い続けたいう事実』

 3点差での敗戦。しかも残り4分という時点での逆転負け。惜敗である。その事実は誰にも変えられない。だが、前回ライナーズと戦った4節での結果は67対22。奪われたトライは11という事実からすれば、今回の敗戦は、前回の敗戦とは明らかに違う内容であった。ではこの日の試合では何が起きていたのかーー。

 まずはアタック。レッドドルフィンズは前半2つ、後半1つのトライを奪っている。特に前半の1つ目のトライはFW、BKを問わずにおよそ1分にわったってボールをつなぎながらの見事な、そして見ている者を楽しませるトライだった。自陣でのラインアウトからつないだそのパスの回数は17回。その間ボールを手にしたプレーヤーの延べ人数は24人にもなり、9番O・プルの5回、10番北原の4回をはじめ、FWの3番浅原、5番廣田も各3回など、メンバー15人中11人がボールに1回以上は触れていた。特に、トライを決めた12番東郷への見事なラストパスを放ったのは、9番プルからのオフロードパスを受けた1番山崎。それは、自陣でのラインアウトからボールを追いながら走り続けていた結果であった。

 続く2本目の33分のトライは、相手陣10mライン内に入ってのスクラムから。ボールを受け12番東郷が前進、続いて8番堀江が突進し相手の反則からアドバンテージを誘い、その後は9番プル、10番北原、11番ペニーへと相手をひきつけてのギリギリのパスがつながり華麗なトライとなった。

 後半のトライは、相手陣ゴール前でのラインアウトから乱れたボールを13番Tモモセがうまくキープし、その後はFWで前進。最後は9番プルがインゴールへねじ込んだものである。得点は21対7とリード。

 負傷のため一時はゲームから離れていたプルだが、チーム内では共同主将ということもあり、キャプテン(共同主将)である堀江にとってもその存在は頼もしい。

「試合中のハドルの中でもしっかりと言葉が出るし、チームとしての大事な発言もしてくれるので、僕としてもとても助けられます。もちろんパスもキックもいいですし、しっかりとボールを前に運んでくれて、9人目のFWの役割もしてくれますから」

 要所で必ず良い働きをするプルに関しては、箕内HCも「彼らしく、ボールを前に持っていけますし、彼なりのゲームの読みというか、そういうものがあってしっかりとゲームを引っ張ってくれています。彼の場合はディフェンスもいいので」と評価する。

 この日のレッドドルフィンズは良いアタックからのトライもあったが、実はそれ以上に注目すべきはディフェンスだった。

 10対3。これはターンオーバーの数字だ。つまり、レッドドルフィンズは攻めてくる相手を止めボールを奪い返した場面が10回あったということである。特に相手をタックルで止めた後にジャッカルからPKを奪った数が6もあったのだ(他にPKとならずにジャッカルから奪い返したのが1)。中でも光るのは後半19分、相手ウィングがライン際を駆け抜けてきてあわやトライという場面で、FBだった10番北原(途中のメンバーチェンジからFBとなっていた)が、追いついてタックル、そのままジャッカルからPKを奪った場面だ。他に、後半11分にも相手がボールをインゴールに持ち込み誰もがトライと思われた場面で、11番Cペニーがボールに絡みつきトライを防いだ場面もあった。後半15分には、レッドドルフィンズゴール前での相手の10フェイズの連続攻撃の末、ゴールライン付近でのレフリーの長い笛に会場ではライナーズのトライとアナウンスされ全体で盛り上がるも、実は途出場17番加藤がジャッカルからPKを得た際の笛であったという珍場面もあった。

 また、相手チームのモールを腕力で止め、アンプレイヤブルからマイボールスクラムに持ち込んだ場面も3回(相手は0)。そのうちの一つのスクラムからはレッドドルフィンズのトライも生まれている。両チームのペナルティー数が最終的に18対12とレッドドルフィンズが多かったものの、残り4分までリードしていたのもそういったディフェンスの奮闘の結果だろう。それでも勝利には手が届かなかった。

 この日活躍したプルも「すごく残念に思います。正直、勝てると思ったし、実際に勝利にかなり近づいた。ただ、やはり大事なところで取り切れなかったこと、そしてチャンスを自らピンチに変えてしまったところが敗因のひとつでしょう」と振り返った。

 プルがあげたのは、あわや相手のトライという場面をジャッカルで止めながら、その後のPKのタッチキックがミスキックとなり、相手にボールを渡してそのままあっさりとトライを奪われてしまったこと(後半21分)。また、インゴールで諦めずに相手を捕まえトライを防ぎながらも、その後のゴールラインドロップアウトをチャージされてしまったこと。

 実は、この日のライナーズの4つのトライのうち、2つはPKとFKからのクイックタップからのもの。残りは前記のタッチキックミスからもの。そして最後の逆転トライとなったのはキックの蹴りあいの末、相手陣22m内から一気にトライを取られたものである。いずれも、ほんの一瞬の隙をつかれてのものと言える。

 箕内HCは、「取れるところを取り切れなかった」ことを敗因の一つとしてあげ、堀江キャプテンは「一方で、ライナーズさんは取るべきところをしっかりとり切っていた」と口にした。確かに、前半ではいったんトライの笛が吹かれたものの、その後のTMOで転がるボールがタッチラインに触れていたとして取り消されるなどいくつかの“不運”もあった。そこはまさにラグビーボールがどちらに転がるかわからないという運に支配されたともいえる。

 それでも負けは負け。そこは受け入れるしかない。だが、45点差を3点差まで縮めたというのも事実も素直に受け入れ、次への新たなる「事実」に向けて前進あるのみである。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?