三鷹アサヒと高瀬コヨイについて(前編)

はじめに

本研究の最大の目的は、
「高瀬コヨイは現在も三鷹アサヒにヒリヒリしているのか/することがあるのか」
を解明することである。主にWITHステで描かれた二人の感情や思考について考えていく。
 研究とかなんとか言ってるが、WITHステについて整理しつつ私の思ったことをなんかそれっぽくまとめたかっただけである。

動機

 初めてWITHステを観劇してからというものの、ずっと「ヒリヒリしてうっとうしいんだよ」に酷く心を抉られ、あまりの辛さにそれに向き合うことから逃げてきた。逃げつつも、「コーちゃんはアッちゃんのあまりの眩しさに劣等感のようなもの感じているのではないか」と漠然と感じていた。この自分の心に、高瀬コヨイと三鷹アサヒに向き合うために「ヒリヒリしてうっとうしいんだよ」を解剖していく。


本題。

 さて、どうすれば在りし日のコーちゃんはアサヒくんに『ヒリヒリしてうっとうしい』と感じなくなるか? それを考えるために、まず何故『ヒリヒリしてうっとうしい』と感じていたかを整理する。

①ヒリヒリしてうっとうしいと感じていた要因

実はまずもうここから違う。

ここについては、ヒリヒリ周辺について二ヶ月近く考えていた私もこれを書いている途中で気付いたくらいだ。盲点。

正しくはこう。

①ヒリヒリしてうっとうしいと感じた理由

×  感じていた
◎ 感じた

 そう、コーちゃんはきっと、常日頃からアサヒくんにヒリヒリしてうっとうしいと感じていたわけではなかったと思うのだ。あの瞬間に、初めて今までの感情が言葉という形を得たのだと思う。今まで感じていたものを、あの瞬間に初めて「ヒリヒリだったのか」と認識したのではないだろうかと。
 ヒリヒリしてうっとうしいんだよ自体については後々詳しく触れるとして、まずは感じていた、ではなく、感じた、だと考える理由から。


 とりあえず、過去編(前編)の流れを軽く整理してみる。


いい子でいるのはもうやめる

闇プリに誘われる

ヒリヒリしてうっとうしいんだよ

ダークナイトメア加入

ここに私の憶測を交えると


いい子でいるのはもうやめる

| ←”いい子”じゃなくなった自分はなんな
|  のか、悪い子なのか?どこに居場所が
|  あるのか(悩み)
↓  
シンヤに闇プリに誘われる

| ←もしかしたら闇プリってところに
|  居場所があるのかもしれない(期待)

ヒリヒリしてうっとうしいんだよ

| ← 闇プリの俺こそ本当の俺なんだ(闇プ
|  リに本当の自分と居場所を見つける)

ダークナイトメア加入


 こんなところだろうか。

 まず、シンヤが「お前がアボカドの暴れ拳銃か!」的なことを言っていたからいい子でいるのをやめてから闇プリに行くまでどのくらいの期間かはわからないけど、ダンプリにも行かずほんとにただバリバチやっていただけの時期があったのだろう。当然、コーちゃんはこの時の自分のことをいい子だとは思っていなかったはずだ。
 そして、ある時シンヤに出会う。シンヤはいい蹴り持ってんじゃねえかと褒め、コーちゃんを闇プリに誘う。この誘いは、コーちゃんにとって初めての”いい子じゃない自分”を肯定された出来事だったのかもしれない。初めて”いい子じゃない俺”を、本当の俺を肯定されたと感じたかもしれない。というより、シンヤが肯定してくれたからこそこれが本当の自分では?と感じたのではとさえ思う。だからこそ闇プリに行ってみようという気持ちになったんじゃないかなと。コーちゃんの周りいろんな矢印渦巻きすぎだよ。

 渦巻く矢印はさておき、そして初めての闇プリ。後で詳しく触れるが闇プリは欲望剥き出しの世界だ。皆、自分を晒け出しているのだろう、自分の気持ちに正直なのだろう。いい子で在ってきたコーちゃんにとって、自分を偽らなくていい、自分の思うままに自分を晒け出せる闇プリステージはさぞ輝いて見えたのだろう。ここなら本当の俺でいられる、ここが俺の居場所なのだと本当に、思ったのだろう。

 ただ、実際にはシンヤに誘われてから闇プリに赴く前にアサヒくんとの問題の一悶着がある。(恐らく)シンヤの勧誘を受けて間もない時にアサヒくんに遭遇したのがポイントだ。前述の通り、コーちゃんはシンヤに出会いいい子じゃない自分を肯定されたことにより、「もしかしたらこれが本当の自分なのでは?」「闇プリってところに自分の居場所があるのでは?」と感じていたのではないかと思う。そう、アサヒくんにバッタリ出会う前にそう考えていたことが重要なのだ。今の自分が本当の自分であり自分が闇プリ側の人間なのではないだろうかという考えがあったからこそアサヒくんに対して”ヒリヒリ”という言葉が出てきたのではないだろうかと思うんですけど皆さんどう思いますか? アサヒくんが圧倒的光属性という話は流石に割愛するが、つまりコーちゃんはアサヒくんと出会して改めてアサヒくんの圧倒的光属性を感じたことでやっぱり自分はアサヒと同じ側の人間じゃないと思ったのではないのだろうかと。なぁコーちゃん。

 ここまでが ×感じていた ◎感じた の話なのでここからようやくヒリヒリの原因等について触れます。

 まずは、「ヒリヒリしてうっとうしい」が吐き出された要因について。
 この言葉自体にはコーちゃんの優しさなどなく、本当の本音だと思う。けど、嘘ではなく紛れもない本音だけど、それでも言いたくて言い放った言葉ではないのかな、とも思う。
 私も「これを言ったら相手は傷つくだろう」と理解していても、それでも自分の想いを知ってほしくてつい心ない言葉をかけてしまったことがある。けれどもちろん誰にでも見境なくそんなことを言っていたわけではなく、家族くらいだ。もしかしたら、これを読んでる人の中にも心当たりがある人がいるかもしれない。「ヒリヒリしてうっとうしい」という直球すぎるストレートな言葉はある意味気心が知れているから伝えられた言葉でもあり、コーちゃんにとってアサヒくんは家族のような存在でもあったことが窺えるのではないだろうか。
 「ヒリヒリしてうっとうしい」は、コーちゃんの「作り物のいい子な俺じゃなくて、本当の俺を知ってほしい」という気持ちから吐き出されてしまった言葉だったのかもしれない。口にすれば、アッちゃんが傷付くってわかってた。こんなことを友達に言うなんて最低だ、知っていた。それでも俺を知ってほしい、本当の気持ちを知ってほしい、そんな気持ちがあったのかもしれない。「ヒリヒリしてうっとうしい」はきっとコーちゃんの本音だったろうから、それを受け入れてもらいたいという気持ちがあったかもしれない。コーちゃん……。
 また、過去回想の後半で「また悩んで迷惑かけるかも……」と言っているように、もしかしたら突き放しでもしないとアサヒは来なくていい闇プリにもついてきてしまうかもしれない、というコーちゃんの優しさもあったのかもしれない。(雑誌のこばたつのインタビューのコーちゃんの優しさが見えたってこういうことなのかもしれないと思った)
(あとこれは私の考えというより希望に近いけれど、前述の通りヒリヒリして〜が闇プリに揺れていたからこそ吐き出された言葉なら、「うっとうしい」はコーちゃんの迷いだったのかもしれないかも、ともちょっと思う。俺はアサヒみたいにいい子じゃないのに、そんな純粋な俺への気持ちをを見せられたら迷ってしまう、やめてくれ、っていう脳裏にチラつく迷いみたいな意味のうっとうしいだったかもなあ、なんて)

 次に、(やっと)コーちゃんがヒリヒリしてうっとうしいと感じた理由について。

 アサヒくんが圧倒的光属性ということは大前提として(太陽みたいな明るさ)、コーちゃんがアサヒくんに対して「ヒリヒリしてうっとうしい」と言葉にしたのは、きっとアサヒくんが”うっとうしいくらいに友達思いでお節介焼き”だったからだと思う。これは森脇監督がとある雑誌の記事でアサヒくんのいいぜ!なところについて語った時の言葉だ。(『友達思いでお節介焼きなの。うっとうしいくらいに!』)
 きっとコーちゃんが笑顔の時もそうじゃない時も、どんな時も「コーちゃんは友達だから」コーちゃんのために、コーちゃんに寄り添い続けたのだと思う。そしてそれをアサヒくんは全て”本当の自分”として行っていたから、いい子で在ることを半ば強制され、”本当の自分”でいられなかったコーちゃんにはアサヒくんの”コーちゃんへの想い”がより眩しく感じられていたのだろう。
 三鷹アサヒの『太陽みたいな明るさ』とは、『うっとうしいくらいに友達のために行動できる』その心なのだと思う。

 ショウゴくんが”お兄ちゃんなんだから”と言う両親の言葉に縛られていたのだとしたら、コーちゃんは”いい子なんだから”に縛られていたのではないだろうか。いい子なのだからああしなければいけない、こうしなければいけない。でもいい子でいたって、両親は”いい子の自分”しか見てくれない。本当の俺を見てくれない。そう感じていたのではないだろうか。
 また、もしかしたら最初は見えていたアサヒくん自身の優しさや想いも全部薄っぺらいと感じるようになって、次第に”アサヒくんから発せられる光”しか見えなくなってしまったこともヒリヒリと感じていた要因なのかなとも思う。

 では、どうすれば「ヒリヒリしてうっとうしい」は晴れるのか。

 コーちゃんが「ヒリヒリしてうっとうしい」と感じていた要因を整理すると、

①、アサヒは本当の自分でいられているのに、自分は本当の自分でいられないから(本当の自分ではないと感じていたから)
②、①のように感じていて、アサヒ側(光・ダンプリ側)に居場所がないと思っていたから
(③、アサヒくんから発せられる光が眩しすぎて、アサヒくん自身が見えなくなってしまっていたから)

つまり、コーちゃんが

①、本当の自分になることができ、
②、アサヒくん側に居場所を見つけ、
③、アサヒくん自身をもう一度見つめる

ことができれば「ヒリヒリしてうっとうしい」は解消されると考える。

 ここで少しうっとうしいくらいに友達思いでお節介な三鷹アサヒの話をさせてくれ。前述した通り三鷹アサヒはうっとうしいくらいに友達思いでお節介な男だ。だからきっと、過去のアサヒくんの一連の行動も全て、『コーちゃんは俺の友達だから』『コーちゃんのために』行動していたのではないかと思う。
 だが、コーちゃんのためを思っての行動ならば、当時は本当に闇プリが本当の居場所だと思っていたコーちゃんとまた一緒にライブがしたいというアサヒくんの想いは果たしてコーちゃんのためになるだろうか。
 いや、三鷹アサヒは違う、そうじゃない。もちろん、根底にはまたコーちゃんとライブできるのを信じていただけでなく、『したい』という気持ちもあったろう。でもアサヒくんの一番の目的は『友達のコーちゃんの悩みを解決すること』だったのではないだろうか。「友達の悩みは迷惑じゃないっしょ!」とも言っているように、コーちゃんの悩みが解決されればまたダンプリでライブしたくなるかもしれない!と。きっと、あくまで闇プリのコーちゃんは否定しないまま。寂しい、はやく一緒にライブしたい、そうは思いつつもアサヒくんは闇プリのコーちゃんも肯定し続いていたのだと思う。


本題に戻ります。

 では、①本当の自分になる は、どうしたら達成されるのか? そもそもコーちゃんが今の俺は本当の俺じゃないと感じたのは、闇プリという新たな可能性を示唆されたからというのも一因だと思う。ので、ここで一旦ヒリヒリ問題から離れてダンプリと闇プリについて考える。

 そもそも、何故「全部薄っぺらいんだよ」と感じていたコーちゃんは(さっき軽く触れたけど)シンヤに誘われるがままに闇プリに赴き、半年間本当の居場所だと感じ活動していたのか?
 そしてさらにそもそも、男プリとは闇プリとは。闇プリについては、作中でもシンヤが「欲望剥き出しの闇プリステージ」と言っている。そもそも、この光とか闇とかはなんなのか? コーちゃんが見た小五のショウゴの”本当のキラキラ”とはなんなのか?

 ではまず、男プリとは、闇プリとは。

闇プリ(闇)=本当の自分を晒け出し自分の気持ちを表現する、自己を中心とした欲を満たす場所
(例:俺の歌を聞け、俺はこういうことを伝えたいんだ等)

男プリ(光)=誰かのためにステージに立ち誰かを笑顔にする、他者を中心とした欲を満たす場所
(例:みんなを笑顔にしたい、みんなに楽しんでもらいたい等)

なのかな、と。

 そして幼馴染の見たショウゴくんの本当のキラキラとはつまり、楽しい気持ち、夢や希望そのものではなく、”誰かを笑顔にしたり夢を与えたり、誰かに影響を与えられることができる想いや力”なのではないだろうか。
 アイドルタイムプリパラ6話でも、めが兄ぃが、「ライブに来てくれたお客様には、どんな時でもマジ楽しんでもらう」が男プリ精神だと言っていたように。つまり、誰かのためにステージに立ち誰かのために歌い、誰かに夢を与えることで自分自身が誰かの夢そのものになれるのが真の男プリアイドルなのではないだろうか。そりゃショウゴくんダンプリの申し子なんて言われるわ。
 申し子はさておき、コーちゃんはそこで初めて本当のキラキラを知った。つまりコーちゃんが信じられなかった、それまで思っていたキラキラは夢とか希望とかそのものだったのだと思う。
 コーちゃんが言っていた『水増しされた味噌汁』とは、『本当はそんなに価値がないのに上部だけ価値があるように見せかけ、しかも本来の価値が損なわれている』のことだと思う。それが、愛情、友情、ダンプリ、キラキラ。アサヒくんの純粋な友達を思う心も、アサヒのお節介も水増しされてるんだと卑屈に考えちゃったりしたのかな。

 そして、欲望剥き出しな闇プリに惹かれたコーちゃんの欲望とはなんだったのか。きっと、愛されたいがコーちゃんの欲望だったのだと思う。闇プリに赴いた理由も元を辿れば家族の愛情不足だろうしね。(コーちゃんがこの愛されたいという欲求を自分で認識してたどうかについては、あくまで闇プリに居場所を見つけたきっかけなだけだから強い欲求ではあったけれどそこまで自覚はなかったかなと個人的には思う)
 シンヤの誘いに応じたのは、いい子の自分じゃない、本当の自分(だと思っていた)暴れ拳銃な自分を見て誘ってくれたからなのだろう。欲望剥き出しの闇プリに惹かれたのは、居場所だと思ったのは、今までのいい子の自分なんて嘘だ、偽りだと思っていたからだろう。欲望剥き出しの闇プリで、本当の自分でありたかったからだろう。
 
 さて、一旦ヒリヒリから離れて闇プリについて考えたわけだが、お気付きだろうか。またWITHがWITHになるためには当然コーちゃんが光側、アサヒくん側に戻ってくる必要がある。
 長々とヒリヒリの要因や闇プリについてつらつらと語ったが、コーちゃんが闇プリから男プリに戻るということは、光側に自分の居場所を見つけるということだ。そしてこれは、ヒリヒリ解消の条件でもある。

 そう、闇プリでなら本当の自分になれる、闇プリにこそ居場所があると思っていたコーちゃんが、アサヒくんの隣に居場所を見つければヒリヒリも解消されWITH元通りになり万事解決なのだ。当然ですね。

 ではコーちゃんが、

①本当の自分になる(見つける)ことができ、
②その居場所をアサヒくん側に見つけ、
③アサヒくん自身をもう一度見つめる

はどう達成されたのか、そもそも達成することができたのか。それについては、後編で。長。


 

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