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anime回論【転生したらスライムだった件】【転スラに学ぶ組織力】

転生したらスライムだった件の主人公、リムル・テンペスト。

彼は、他の多くの異世界チート系主人公とは違った才を持ってる。

多くの異世界チート系の主人公の多くは、チートスキルをメインにストーリーが進んでいく。しかし、転スラは違う。

結論、リムル・テンペストの長所は、組織力だろう。

とりわけ、「人事」という点では、他作品のキャラで、リムルに並ぶものはいない。

リムルの組織の作りの概要は、

①リムルの庇護のもとで「衣・食・住」を提供し、優秀な人材を集める

➁優秀な魔物や人には、最大限に権限を委譲する

といったものだが、これは1面に過ぎない。

リムルは、国家運営を合議制で行っている。これは、転スラの世界観では信じられないことだ。

なぜなら作中にもあったが、魔物の唯一の共通認識は「弱肉強食」であり、であれば組織は、トップダウン型でなければならない。事実、餓狼族、オーク族、大鬼族、リザードマン族の全てが、ワントップの組織だった。

しかし、リムルの国は合議制であり、これは、江戸幕府と同様の組織になる。

この理由は2つ

1つは、リムルが庇護する全ての魔物に名前をつけ、高度な知性をもたらしたことにより、弱肉強食以外の価値観を全員が持てるようにしたこと。

もう一つは、各部族の集合組織であるためだ。たとえると、各、餓狼族、オーク族、大鬼族、リザードマン族は、それぞれ、縄張りを持っていた。これは、江戸幕府でいう諸藩にあたり、リムルは、将軍に当たる。

江戸幕府は、将軍のワントップ型だと思われることがあるが、実際は、家老や老中がルールを考え、最終決定を将軍が行っていた。転スラの中でも、ベニマルやカイシンが意見をいい、それに対してリムルが判断をしている場面がよく出てくる。

だからこそ、国の名前が、ジュラテンペスト王国ではなく「ジュラテンペスト連邦国」になのだろう。

また、合議制で決めた内容を各団体が従順に従っていることも組織力の強さだろう。これは、リムルへの信頼もあるだろうが、魔物の弱肉強食の価値観が、結果的に「上意下達」を作っていることが大きな要因だろう。(各国が牽制状態であれば、強固な国が求められる。人族から忌み嫌われる魔物ならなおさらである。)

江戸幕府は、典型的な上意下達の組織だ。これは、貴族を中心とした西洋の組織とは異なる。

西洋社会にとっての戦いは、よそからの傭兵を雇って行うものである。対して江戸幕府は、そもそも武家がまとまってできたものだ。だからこそ、決まり事には従順なる特性を持っている。

いうなれば、リムルの強さは、チートスキルよりも、今まで力だけだった魔物を集め、江戸幕府的な強固な組織を作ったことだろう。

これに、いち早く気づくことができたのは、ガゼル王だけだったかもしれない。これは、ガゼル王が秀逸な人物だったこともあるが、ハクロウを師に持っていることも要因の一つだろう。

魔物の中では高い知性を持ち、唯一、組織だった傭兵活動を行っていた大鬼族の存在を脅威に感じていたからかもしれない。

だからこそ、援助と貿易により、友好関係を作るという方向なのだろう。

リムルの組織力は、国の安定だけでなく成長の柱にもなっている。優秀な人材に、権限を最大限に譲渡しているゆえだ。

カイシン・ドワーフ三兄弟・ベスタ―・ベニマル達そして、ガビルにゲルド。

「技術力」=カイシン、ドワーフ三兄弟、ベスタ―、シュナ、クロベイ

「武力」=ベニマル、ソウエイ、ハクロウ

「公共事業」=ゲルド、ガビル

など、適材適所といえる。

また、リムルは内政だけでなく、対外政策も抜かりがない。

最初は他国から目を付けられないためなのか、「村をつくっている」という名目だった。そして、技術力・武力・人材力を確保し、ドワルゴンという後ろだてを得て初めて「ジュラテンペスト連邦国」と言っている点も抜け目がない。

これがもし、最初から国を興していたら、魔物を敵視する西方聖教会と帝国が、テンプルナイツやヒナタ・サカグチを率いて、リムル諸共に滅ぼしていただろう。


一方でリムルの弱点は、楽観主義だった点だろう。

ガゼル・ドワルゴンなどから警告されていたファルムス王国を甘く見ていたことは言うまでもないが、転生者やミュウランなどの工作員を入れてしまったのは、出入国管理がザルであったからだろう。

魔物と人の開かれた国を目指していたこともあるだろうが、こればかりは、失策と言わざるおえない。

先ほども書いたが、人々が信仰している西方聖教会は魔物を敵視している。であれば、人々が根底に持つ魔物への不信感や恐怖はもっと理解しておくべきであっただろう。

しかし、この失敗を糧にリムルがより優れた統治者になるのは、言うまでもない。事実、ファルムス王国には、ヨームを統治者とした傀儡国家を作る運びとなっている。

2期後半が、楽しみだ。

noteでは、よく見るアニメ考察ではなく、社会的、経済的、哲学的といった「学」の視点から、アニメ論を書いています。マガジンとして投稿しているので、登録してくれると嬉しいです。

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