134 / ローズ
まだ5歳くらいだった頃、母親の実家で柴犬を飼っていた。ローズという名前だった。よく一緒に散歩をした記憶がある。
ある日丸いガムを手のひらに盛ってローズにあげようとしたら、ローズは思いっきりぼくの手に噛みついた。
「ふざけるな!こんなもの食べれるわけないだろ!」というローズなりの意思表示だったのだろう。
たくさん血が出たし、痛くて泣き喚いた。なかなかのトラウマで、それ以来ぼくは犬に対して恐怖心を抱いて生きるようになった。
中学生になると、近所に犬を飼っている人がいて、学校へ登校するたびに吠えられた。家に帰る時はなぜかその犬はリードに繋がれていなかったので、毎日のように気づかれないようソロソロと歩き、気づかれたらダッシュで逃げるという日々を送っていた。
追いかけられて、噛みついてくるのをジャンプしたり蹴ったりして交わすことも何回かあった。
「なんなんだよ!なんで追いかけてくんだよ!ふざけんな!」ぼくにとって犬はいつしか嫌いな動物になったので、遠くから石を投げてみたり、イタズラをするようになった。
そんなこんなで『自分は犬に好かれないんだ』という思い込みを強くしていたので、犬を飼いたいなどとは一切思わなかったのだけど、25歳になった今、自分の子供を持つよりも犬を飼いたいと強く思っている。
大人になり、犬カフェにいってたくさんの犬と触れ合うことで、「なんだ、自分もちゃんと犬に懐いてもらえるじゃないか」と思えるようになったのだと思う。
今では犬に対する恐怖心は全くない。通りすがりの犬を撫でることだってできるし、犬を見るたびに「はぁ、犬飼いたいなぁ...」という思いが強くなる。
“犬から嫌われている”という思い込みをとっぱらったことで、犬を好きになれた。これは人に対しても同じことが言えると思う。
ついついネガティブな思い込みを強くしがちだけど、自分が人から嫌われた経験を思い出すばかりではなく、人から愛された記憶をちゃんと思い出すことで、「自分は愛される人間だ」と前向きな思い込みを強くできる。
なんてことを思った今日。
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