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漫画紹介「魔法陣グルグル」

「魔法陣グルグル」は、スクエアエニックス「月刊少年ガンガン」に連載していた漫画で、作者は衛藤ヒロユキ先生です。

現在「ガンガンオンライン」にて正統派続編「魔法陣グルグル2」が連載中です。これもまた、初代に負けず劣らずの名作です。

・あらすじ

世界征服を目論む魔王ギリの登場を打倒するため、勇者募集のおふれが出された。お触れを見た勇者マニアの男は、自分の息子ニケを勇者として、半ば強引に旅立たせる。父に言われるがままに勇者を目指す事になってしまったニケは、旅立ちの際に一人の少女と旅の仲間になる。

その少女ククリは、謎の魔法「グルグル」の使い手にして、世間知らずの勇者信望者。

ククリに振り回されながら、あるいは支えられながら、旅の中で少しずつ成長していく二人の少年少女。そして二人の仲は、こじれながらも親密になる。

王道ファンタジー世界を舞台にした恋愛と冒険の物語。

・魅力その1、ゲーム的システムとギャグの親和性

この漫画は王道ファンタジーな世界観ながら、「レベル」や「職業」や「経験値」といった、ゲーム的システムが採用されています。実際にそれらは作中において表示されるウィンドウで表されるなど、ファンタジーというよりもRPGモノという印象を強く受けます。

ゲーム的なファンタジー世界というのはちょっと賛否が分かれがちかもしれませんが、この漫画に限ってはあまり不快感はありません。ゲーム的パラメーターの多くは物語の縦軸を大きく左右せず、ギャグの一つとして雑に処理されるからです。

この漫画はファンタジー世界であり、非常に濃密なギャグ漫画でもあります。ファンタジーだからこそ現実離れしたシュールなギャグが成立するという、計算高い展開が続き、独特の面白さを演出しています。

ギャグ漫画として同方向の類似作品は、まあ無いと言ってもいいでしょう。それくらい独特ですが、笑いの質は非常に高いです。

それも、爆笑するタイプの破壊力のギャグです。必見です。

・魅力その2、ポップで夢のある物語展開

作中では魔王と勇者との戦いとして、非常に苛烈な戦闘が繰り広げられます。

ですが、その中で、戦闘を除いた展開はとてもポップです。

どうポップかは……文字に起こすと陳腐に見えてしまうかもしれないので、詳しくは語りません。ただ、作中における重要な部分の数々に、ほろ苦く甘酸っぱい、そして切ないお話がファンタジー世界独特の不思議さとともに点在しており、子ども心をくすぐります。

勢いのあるギャグや白熱した戦闘に隠れがちですが、この要素は見逃せません。ファンタジーという世界観を十二分に生かした素晴らしい構成だと思います。

・魅力その3、恥ずかしくなるくらいにまっすぐなラブコメ

この物語は、勇者ニケと魔法使いククリのラブコメディーです。

ククリはニケの事を勇者として尊敬しながら、旅の中でその人間性やかっこよさに惹かれ、露骨な好意を隠さなくなります。

ニケもまた、ククリの事を頼もしい仲間だと思いながら、その純真さに惹かれます。

ですが二人は肝心なところで一歩踏み込めない性格で、それが周りに伝播してトラブルの元となる事も。

ですがこの二人の仲は非常に重要です。二人の仲が進展するほどに、少なくともククリの方は大きく精神的な成長を果たし、それが魔法に反映されていくのですから。

愛の力が悪を討つという構図は、恥ずかしくなるくらいまっすぐで王道で、どうしようもなく美しい物語だと思います。

総評

90年代のガンガン作品を代表する漫画という触れ込みですが……それは真実だと思います。ギャグ、冒険、戦闘、ラブコメ、どの要素を取っても非常にクオリティーが高く、単体でも成立するものが上手く調和していて、とてつもない面白さを演出していると思います。

漫画通の中にも、この漫画を至高だと数える方は何人もいます。

オススメというなら、何よりオススメしたい逸品です。

私的好感度:96/100、オススメ度100/100

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