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ゲーム紹介「春ゆきてレトロチカ」【ネタバレなし】

・概要

ここ最近やった面白いゲームを紹介します。

【ゲームタイトル】春ゆきてレトロチカ
【ハード】    PS4/PS5/Nintendo Switch
【ジャンル】   ミステリ

一言で言い表すのは難しいのですが、非常に先鋭的なゲームです。とりあえず興味がありましたら、この記事を読み進めてみてください。

なお、このゲームは公式サイトにて【ネタバレ厳禁】とされています。よってこの記事は抽象的な表現が多くなりますが、なにとぞご了承ください。

・あらすじ

推理作家の河々見はるかは、友人の四十間永司から依頼を受け、白骨死体が見つかったという彼の実家「四十間邸」を訪れる。そこではるかが聞いたのは、10年ごとに四十間の一族を襲う連続怪死事件の存在と、不老の果実「トキジク」の伝説、さらに百年前の小説家「四十間佳乃」が残した殺人事件の記録
そしてはるかの目の前で、凄惨な殺人事件が繰り広げられる。

・ゲームの特色

①実写によるフルムービー

このゲームは実写です。
キャラクターは全て俳優・女優で、もちろんフルボイス。ムービーシーンは実写特有の間や緩急により没入感が得られ、さながら映画を観ているかのようです。
ゲーム内に実写ムービーが挿入されるゲームは時々ありますが、完全実写ストーリーというのは非常に珍しいと思います。少なくともわたしは他に知りません。
非常に前衛的ですね。

②思考空間の中で行われる「仮説」の組み立て

このゲーム独自のシステムとして、「思考空間」というのがあります。
シナリオ内で集めた手がかりを主人公の脳内で組み合わせ、主人公が持った疑問と手がかりを組み合わせ、「犯人はおそらくこうした」「こういう理由で疑わしい」「こういう背景があるのだろう」などといった仮説を展開し、その中からプレイヤーが正しい答えを導き出す……というものです。
もちろん仮説は一本道ではなく、プレイヤーを惑わせるミスリードも数多く存在します。もちろんそこがこのゲームの醍醐味なのですが……
面白いのは、ミスリードも含めたあらゆる仮説に対し、人形による再現シーンがある事です。イメージがつきやすいので、プレイヤー側でも推理を組み立てやすく、親切な仕様となっています。

③キャストに感情移入しやすいマルチロールシステム

このゲームでは「マルチロールシステム」採用されています。
これは手塚治虫に代表される「スターシステム」のようなものです。このゲームでは過去と現代の事件をザッピングするように行き来する事になるのですが、過去の事件に関しては現代の主人公であるはるかの想像により、現代のキャストをそのまま当てはめるかたちで物語が展開されます
これによりキャストに感情移入しやすくなるので、より物語に入り込むことができます。

・評価点

ここからはゲームのレビューと感想です。面白かった点をネタバレにならない程度に語ります。

①引き込まれるストーリー

このゲーム、ストーリーがすごく凝ってます。
目玉である推理部分がしっかりしているのはもちろんですが、それを彩る物語も非常に魅力的です。
大正浪漫や高度経済成長期を思わせる過去編の時代背景、「トキジク」をはじめとするファンタジックな要素、不気味な陰謀や正体不明の殺人者の暗躍による薄暗い雰囲気等、まるで江戸川乱歩の小説を読んでいるようにさえ感じられます
「十角館の殺人」や「Another」で有名な新本格派の推理作家、綾辻行人先生もストーリーを高く評価されています
この要素は実写というこのゲームの特色と非常によくマッチしており、すさまじい没入感が期待できます。

②細部まで作りこまれたゲーム性

このゲーム、細かい部分まで凝っています。
たとえば推理の失敗シーン。普通のゲームだと簡単なペナルティーとともに推理をやり直すだけですが、このゲームでは基本的に一発でゲームオーバーです。
厳しい印象を受ける反面、ゲームオーバー時にはきちんとしたムービーとともに失敗シーンが挿入されます。そしてそのムービーはいずれも汎用的なものではなく、場面に応じたものがその都度挿入されます。
簡単に言うと、非常に種類が豊富なマルチバッドエンドシステムといったところでしょう。
途中まで滅茶苦茶自信満々に推理を進めておきながら、急に他の登場人物達からツッコミを受けて狼狽えだす主人公の様子は、いつもどこかコミカルで面白いです。時には仲間からコメントがあったりして、くすりと笑わされます。
他にもいろんなところで頬が緩む要素があるのですが……ネタバレ抜きだと語れないのであしからず。
ともあれ、細々した要素は期待してもよいでしょう。

③親切な解説あり

推理モノ……とりわけ特殊な時代背景があると、事前知識を求められる事があります。それでなくとも実写かつリアルな世界観であるこのゲームでは、そうした知識によってより深くストーリーを楽しめたりするものです。
このゲームではそれらの情報や用語についての解説がきちんとあります。しかもそれらはストーリー中のほとんどの場面においてメニューから振り返る事ができるため、非常に親切な設定となっています。
その他、それまで集めた情報や仮説についても同じように振り返る事が出来るので、ゲームとしてのインターフェースは抜群です。余計なストレスが無いのは良い事です。

・賛否両論点

褒めてばかりでは説得力が無くなるので、否定的な面も見ていきます。

①探索シーンがない

先述した通り、このゲームは基本的にフルムービーです。
ゲームとして操作が可能になるのは手がかりを集め終えて思考空間に入るところからであり、それまではただムービーを見ている事しかできません。
「逆転裁判」で言うと第一話でお約束の法廷パートから始まる感じです。
ノベル系ゲームの一種だと思えば気にするほどの点ではありませんが、やはり情報を集めるのも推理ゲームの楽しみの一つ。ちょっと残念ではあります。

②ミスリードに対する解説がない

思考空間の中で構成された推理の中には、登場人物の不自然な動向についても言及がなされます。
しかしその人物が犯人ではなかった場合、事件の後にその不自然な動向についての解説が不十分な場合が稀にあります
もちろんそれは結果的に事件とは関係のないミスリードだったわけで、作劇上解説の義務はありません。
ただ、「結局あれはなんだったのか」という疑問が残ってしまいます。しょうもない理由でもいいので、その辺の解説は欲しかったところです。

・問題点

ゲームとして、明らかに問題があった部分についても触れます。

①推理パートにおけるゲーム性の悪さ

思考空間で推理を組み立てるのは面白いです。
が、ゲーム性には非常に難があります。
思考空間では前述した通り、主人公が抱いた疑問に対して手がかりを提示し、それを組み合わせる事で仮説を作ります。
それはパズルのようなもので、「疑問」の枠の中に「手がかり」のピースをはめ込むような感じなのですが……これが非常に面倒です。
手がかりのピースはムービーシーンの中にあるのですが、この時ムービーシーンは細かく分割されており、全てのピースを閲覧するためには何度も画面をロールする必要があります。また、手がかりのピースに書かれている手がかりは似たようなものが複数ある反面、正解は一つしか無いので、答えが分かっている場面でもミスは頻発されます。さらにピースを動かす手はかなり遅く、何度もミスを繰り返すと面倒さが勝ってきてしまいます
結局のところその作業が面白いかと言われると難しく、この辺りは先鋭的なゲームゆえの問題点でしょう。

・総評

この記事では書ききれないネタバレありきの魅力的な要素を含めると、読み物としてはほとんど言う事が無いくらい面白かったです。
ゲームとしては気になる点があったものの、結局物語の没入感の方が上回ったので、それほど気になりませんでした。
是非プレイしてみてください。

オススメ度:99/100

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