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11月13日はうるしの日

「うるし」というのはつまり漆です。漆器とかに使われるアレですね。

古くは平安時代の皇族である惟喬親王が、虚空蔵菩薩から漆の製法を授かった日が11月13日だと言われています。

せっかくの記念日なので、漆についてちょっと知っておきましょう。

漆といえば「触りがたい」イメージが強いですよね。漆に触ったらかぶれるというのはやたら有名です。

その原因は、漆に含まれる「ウルシオール」という成分です。冗談みたいなネーミングですが、本当です。このウルシオールが水分を含むと、人体にアレルギー反応を与え、結果的にかぶれるのだとか。漆器なんかは乾燥処理が施されているため、そういう心配は無いそうですが。

漆のかぶれは場合によっては全身にまで広がり、実際の症状以上に痛々しい外見になってしまいます。経緯を知らない人からすると、皮膚炎の感染症にでも見えてしまいそうです。実際、そういうのをネタにした映画もありますし(ネタバレになるので詳細は語りませんが)。

また、漆には防腐・防虫作用もあります。それを利用した「作品」が登場する漫画を一つ紹介します。

「境界のRINNE」や「MAO」の高橋留美子先生の過去作「犬夜叉」は戦国時代を舞台にした魅力的な妖怪バトル漫画です。アニメ「半妖の夜叉姫」はこの漫画の続編という事なので、今最もオススメできる漫画の一つです。

さてこの漫画、主人公である犬夜叉一行の前に立ちはだかる敵の中に、「白心上人」という人物がいます。

100年ほど前に人々のために力を尽くした高尚な僧侶である彼は、死後に敵の親玉である奈落という妖怪によって復活し、明らかに悪の存在である奈落に協力します。けれどそれでも、彼は一貫して善人です。

実際、彼は作中においても並ぶ者のいないほどに徳の高い聖人です。徳の強さが法力として戦闘力に現れるこの漫画において、すさまじい規模の舞台装置として大いに活躍しました。そのあまりの強さはラスボスである奈落さえもかすみかねないほどでした。

そんな彼の死は、壮絶なものでした。

飢饉と疫病に苦しむ人々を救うため、彼は生きながらにして仏となる事を選択したのです。空気穴だけが通された地中に身を置き、一切の飲食を絶ってひたすら念仏を唱え、そして仏として奉られる。

つまり、即身仏です。

即身仏は亡骸をそのまま仏として祀るため、腐食を防ぐために死の直前に漆を飲むそうです。仏教に苦行はつきものとはいえ、想像もつかないほどに凄惨な最期が予想されます。宗教というのは、とてつもない概念ですね。

話が逸れましたが、即身仏となった聖人、白心上人。そんな彼が一体どうして奈落の手下として蘇ったのか。

これは物語の本筋からは少し外れる身の上話なのですが、ものすごく興味深いです。ここでは深く語りませんが、白心上人というキャラクター造形は、人間心理の微妙な部分を鋭く突いている部分があって、少年漫画らしからぬ深さを感じます。この部分だけでも、もう一つ記事を書きたいくらいです。時間が無いので書きませんが。

ともあれ最高に面白い漫画です。全56巻、オススメです。

そういうわけで、明日はうるしの日。漆器を愛でてみましょう。

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