夢小説のようなもの2

もう金ラジオで夢小説コーナーができたのとてもうれしい。
自分の妄想を推しに声を当てて読んでもらうという目標ができてしまった。
それは朗報なのか悲報なのか、どっちなんだろうね。
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休日、地元の街に買い物に出る。
暑い。天気予報では最高気温は37℃らしい。体温より高いとかばかじゃないの。
建物の中では冷房がかかっているが、一歩出ると地下でも汗が出てくる。
たまらず予定を変更し、喫茶店へ逃げ込む。
ここの喫茶店は駅ビルからは少し離れているため比較的空いているのがうれしい。チェーン店でもなく、カフェというより喫茶店という言葉が似あう雰囲気のお店は今時珍しい。

ソファー席の壁沿いの端が空いていたのでそこに座りアイスコーヒーを注文する。
すぐに出てきたそれを飲みながら涼み、スマホでnoteを読んでいると、
視界の端に背がすっと伸びたスタイルのいいショートカットの女性の姿が映る。
あれ…。なんか見たことある。多分どこかで会った人だ…。どうしよ…気まずいな…。こちらに気が付かないといいな…。そもそも誰だっけ…。仕事関係か?
なんてことを考えながら横目でチラチラ見ていると女性が一つ離れた席に座り、店員に声をかける。
「すいません。アイスコーヒーを一つお願いします。」

声を聴いて分かった。青木瑠璃子さんだ。どおりで見たことあるはずだし、
スタイルもいいはずだわ。なら大丈夫。向こうはこちらの顔を知らないし。

と目線を正面に戻し、アイスコーヒーを飲む作業に…

戻れない。

は???瑠璃子さん??なんで??ここ東京じゃないうちの地元やぞ??
イベント?なんかあったか??ライブとか。
いや、そもそも一人?移動とかならマネージャーさんとかいるもんじゃないの??え、本物か?自分の脳、暑さで幻覚を生み出すようになったか?
病院か??

一瞬のうちに、いろいろなことが考えつくものだと思いながら、華麗な二度見を決める。
青木瑠璃子である。瑠璃子さんが間違いなくそこに座っていて、アイスコーヒーを注文し終わり、タブレットを取り出し眺めていた。

さすがにここまで全力で二度見をしたら向こうも見られていることには気づいているだろう。
過去の番組でずっとチラチラ見られたり、ひそひそされるならいっそ声をかけてほしいと言っていたのを思い出す。
覚悟を決め少し近寄り声をかける。

〇「あの…すいません。青木さんですか?」
小声なのに声が上ずり、震える。
る「えっ、は…い…ええと…」
こちらを営業スマイルとも警戒しているようにも見える顔で見ながら返事をしてくれる。
〇「あっ、すいません。知り合いとかじゃないです。ファンです。えっと、◆◆のアイコンで〇〇という名前で配信を見たりしてます」
る「あぁ!えっ!おお。。。〇〇さん!!いつも見てくれてありがとね。そっか。住んでるの▲▲の方だ。前にくれたメールに書いてた。」
以前ご当地のおいしいものについてメールをしたことがあったが、そんなことまで覚えてるのか、と驚愕する。
る「いやー。誰かチラチラみてくんなぁー。とは思ってたけど、完全オフのモードで気抜いてたわ。よくわかったね。」
比喩でもなんでもなくここ数年では親の顔よりみた顔である。
いや、あの、そのー。と照れながら適当にごにょごにょ言っていると

店員「お待たせしました。」
アイスコーヒーが運ばれてくる。
完全オフらしいし、あまり話すのもどうかと思うので、会釈して自分の席に戻る。

瑠璃子さんが近くにいて、至近距離で話した。
もうパニックである。本音をいうと今すぐ店をでてどこかに走り去りたい。
でも、そんなことをしたら逆に瑠璃子さんに失礼ではないか?
もはや味も香りもわからなくなったアイスコーヒーを飲みながら、さっきの会話を脳内で反芻し、反省会を開き、これからどうすればいいのか考えていると

る「ねぇ。」
今度は向こうから少し近づいてきて、明らかに自分に声をかけている。
距離ちっか!顔ちっさ!!
る「〇〇さん、甘いもの大丈夫な人だっけ?ここさ、チョコバナナのケーキがあるっぽいんだけど、食べたことある?大きさ結構でかい?」
〇〇「あっ、えと、ケーキ類はたぶん、けっこうおおきいです。」
る「そうか~~…。これ食べたいんだけど、そこまではおなかすいてなくて。半分食べてくんない?」
〇〇「えっ、あっ、いいんですか?」
る「多分〇〇さんなら、そんな変なことしないと思うけど。念のため口止め料な?私と会ったことネットに書いたり誰かに言ったりすんなよ?」
そういうといたずらっぽく微笑み、自分の席に戻ると、彼女は店員さんを呼びケーキと、食器類を追加で注文する。

もうこちらの頭は真っ白で思考も行動も停止している。
彼女はそんなことも気にせずタブレットでなにかを見る作業に戻っていた。
しばらくしてケーキが運ばれてくる。
彼女は適当なところでそれを切り分け、追加でもらったお皿をこっちに渡してくる。

る「ほれ。女性声優が切ったケーキやぞw心して大事に食べろよww」
彼女なりの冗談なのはわかるが、返す言葉も浮かばず
〇「うっす、ぁざっす」
中学生のようなゴニョニョいう返事をしながら、お皿をうけとる。
それでも彼女は満足そうに笑い、自分の席に帰り、ケーキをおいしそうに食べ始めた。

自分も、もらったケーキを食べ始める。本当はこのケーキの写真も撮りたいし、なんなら食べずに持ち帰り、そのまま冷凍保存しときたいが、さすがに気持ちの悪いことを実行するわけにもいかない。
変わらずの緊張でコーヒーだけでなく、ケーキも味がわからない。
ただ優しい甘さだけは感じられた。

ケーキと格闘していると一人の女性が入ってきて瑠璃子さんの前に座る。

る「おつかれさまです。早かったですね。大丈夫でした?」
??「次の新幹線すぐ取れましたからね。」
る「おーよかった。コーヒーでも飲みます?ケーキも食べたけどおいしかったですよ」
??「いや、大丈夫です。タクシー駅前で拾えそうなので、さっそく出発したいんですけど、青木さんは大丈夫です?」
る「大丈夫です。よし、じゃあいきましょうか」
??「ここアトモンで払います。うちの手配ミスなんで」
る「あ~。じゃあケーキもう2~3個頼めばよかったな~w」
笑いながら二人は席を立った。
話の内容からすると、後から来たのはアトモンのマネージャーさんとかだろうか?

スマホを見ると自分が入店して20分ほどしかたっていない。
今見てたのは現実か?やっぱり暑さにやられたのか?

自分の机をみると食べかけのチョコバナナケーキがおいてある。
どうやら現実のようだ。

ふわふわした気分のまま、写真を一枚撮る、食べかけの断面が映った崩れたケーキ。
落ち着いて一口食べてみる。
さっきよりはチョコの風味もバナナの味も感じられる。
今更だが、チョコバナナは実はそんなに好きじゃない。
それでも自分は何回もこれを食べるんだろうな

そう思いながらさっきとったケーキをそっとスマホの待ち受けに設定する。
誰にも話さないと約束し、約束した本人もすぐに忘れてしまうであろう20分を閉じ込めるように。


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