現代の恋愛や結婚の傾向

0.はじめに

現代の恋愛や結婚の傾向に対する認識がある程度まとまってきた。ここでは恋愛という感情、結婚したいという欲望に関する話題について記し、結婚後の生活の在り方などについては記さない。

1.恋愛の分解

恋愛には様々な欲望・感情が関与しているだろうが、大きく以下の3種に分けられると思う。

①承認欲・所有欲・怠惰欲[高い利己性、対象を選ぶもの]

②性欲・親和欲・貢献欲[低い利己性、対象を選ばないもの]

③親愛[基本的に無害、対象がいて初めて発生するもの]

美形な、あるいはハイスペックな人物と交際したいといったものが所有欲、そういった人物と交際できるくらい自身に価値があると認められたいといったものが承認欲、異性に養われたい、家事を任せたいといったものが怠惰欲である。これらは極めて利己性が高い上に、評価対象の価値の高低が激しく対象を選ぶ。

性欲は言うまでもない。孤独を恐れ人間と共にいたいといったものが親和欲、他者の役に立ちたいといったものが貢献欲である。これらは過度でない限り比較的対象を選ばない点で、欲望を満たす難度はそこまで高くない、もしくは代替が効くものである。

親愛は対象がいて初めて発生するものであり、過度でなければ害はない。見返りを求めるならばそれは承認欲であり、真の意味での親愛とは一方的な感情であると思う。

2.現代的な恋愛への疲弊と違和感

現代一般化しつつある恋愛は①が肥大化し、③で表面を取り繕っているように見える。近年勢力を伸ばすマッチングアプリでは、①の可視化・明文化が進んでいるが、これは対象を選ばない②や対象がいて初めて発生する③は後からついてくるものであるため、出来るだけ①を最大化したいという現実主義に基づくものだと思う。選り好みされることや、容易に乗り換えられる不安定さへの疲弊を感じる人も少なくないだろう。

また、旧来的な恋愛は②や③に由来する激情として描かれることが多い。こちらには根強い支持があるように思うが、この旧来的な恋愛は今やフィクションの中の存在と化し、現実とのギャップに違和感を覚える人もいるかもしれない。

3.結婚欲の分解

結婚したいという欲望には大きく4種の要素が関与していると思う。

(恋愛と同じ)①承認欲・所有欲・怠惰欲[高い利己性、対象を選ぶもの]

(恋愛と同じ)②性欲・親和欲・貢献欲[低い利己性、対象を選ばないもの]

④外的圧力からの解放

⑤内的圧力からの解放

親族や友人、勤務する会社の仲間などから「まだ結婚しないのか」といった言動が外的圧力である。

また、そういった周囲の目を意識する自分自身からの焦燥感や、社会に植え付けられた常識観や理想像に由来する強迫観念が内的圧力である。

恋愛の3要素の一つ③親愛は、見返り求めないものであり、直接的に結婚欲に結びつかないとした。

結婚欲は恋愛と共通する部分はあるにせよ、外的・内的な圧力も相当に影響しているだろう。

4.恋愛結婚の崩壊

恋愛の結果としての結婚という価値観が一般的であるが、現代はむしろ結婚の手段としての恋愛になっていると推測している。つまり、恋愛において利己的欲求の最大化を促すものの正体は、この結婚欲であると思う。現代の恋愛は現実主義的で合理主義的な面が強いと思える。この期に及んで恋"愛"などと愛を標榜することが嘆かわしいほどに。個人主義社会の末路である。

この合理主義は同時に結婚のハードルを押し上げた。利己的欲求を最大化するためには、結婚という身を固める行為はデメリットが大きく、極めて慎重になるべき選択となる。

激情としての恋愛が形骸化し、合理性の塊としての新たな恋愛が幅を利かせた現代では、結婚などという「リスクの高い安定的選択」は価値が薄まる一方だ。

結婚は元来必要なエネルギー量が多く、かつてはお見合い文化をはじめとする外的圧力がそれを担ってきた。自由恋愛が主流化してきた当初は激情に身を委ねる人も多く、その後任としてある程度の働きをしていたのかも知れない。しかし、現代の恋愛は結婚へのエネルギー源たり得ないどころか、むしろより困難な障壁をなす要因となっている。恋愛結婚は事実上崩壊した。

5.おわりに

むろん、恋愛を構成する欲望や感情は人によってその程度が異なり、恋愛の在り方は十人十色と言えよう。一方で、全体の傾向として利己的欲求の増大があるように見えるのも事実だろう。

結婚後の生活の在り方に関する考え、私自身がどういった欲望を持ち合わせているか、などについては今後別の記事として投稿するかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?