見出し画像

TRPGシナリオ-異界への扉

注意

このシナリオはTRPGのようなものをやりたくて、とりあえず作成してみたシナリオである。ゲーム設定が不十分なところがあるため、私的な記録程度にnoteにした。

・ゲームを始める前に

このゲームはTRPGに関する雑な理解を元に作られた、TRPG"もどき"である。謎解きの要素が濃く、プレイヤー自身の判断力が試される。もちろん、RPするキャラクターのステータスを用いて解決の為のヒントを得ることも出来る。

自身のキャラクターを設定したらひとまず『体格(小,中,大)』を教えてほしい。この情報はゲーム中に使うかもしれないし使わないかもしれない。

次に、プレイヤーのステータスを設定する。『SAN値(1d10+5)』『調査力(1d10+20)』『知力(1d10)』『体力(1d10)』『直感力(1d10)』の5つだ。このゲームでは、ダイスを振るごとにターンが消費し、消費回数によって危険なイベントが発生するかもしれない。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

・プロローグ

君たちの共通の友人「野口くん」が行方不明になった。東京に下宿する大学生1年生だった。幼い頃から習っている空手を続けるため空手サークルに所属し、大学の講義も真面目に出席していた。たまに遅刻することはあったが、何の変哲もない普通の大学生だったように思える。

しかし、春の麗らかな雰囲気も薄れ、夏の予感が色濃く見えてきた5月のある日、彼は居なくなった。彼のとある友人は心配になって下宿を訪ねたが彼の住むワンルームはもぬけの殻で、実家にも帰っていないらしい。失踪の噂を聞きつけた君たちは「野口くん」宅に調査に向かった。

「野口くん」の住処は、駅から少し離れた住宅街にある2階建てのワンルームアパートにあった。鉄骨造で築20年といったところだろうか。彼の部屋は2階の端、201号室だった。まずはチャイムを鳴らす。当然反応はない。戸を叩いて声をかける。やはり反応はない。通路に面した窓は閉め切られていて、中は暗く、部屋の様子を覗くことはできない。一行には残念さとある種の安堵が混じったような空気が広がる。

しばらくして、君たちのうち1人がふと気付き、ダメ元で丸いドアノブに手をかける。鍵は掛かっていなかった。5月中頃のその日は、文句なしの晴天だった。わざわざこんな暑い中しばらく歩いてきたのだ。開いてしまった以上、確かめないわけにはいかない。君たちはそのワンルームに入っていった。

●KP用情報

ロール部屋に入ると、何かが蠢いている悪寒を全員が共有する。プレイヤーはこれに関してロールを行う。プレイヤーの1人はふと、玄関を開けて外に出ようと試みる。しかし扉はビクともしない。鍵が掛かっているというよりも、何かに押さえつけられているような感じだ。プレイヤーはこれに関してロールを行う。

ーーーーーーーーーーーーーー

・調査イベント

部屋の中には『ベッド』『机』『クローゼット』『キッチン』があるようだ。プレイヤーは『ベッド』『机』『クローゼット』『キッチン』の様子を調べることができる。

●KP用情報

以降、5ターン消費するごとに後述『隠れイベント』に移行する。3ターン終了後に「ゴソゴソという音が大きくなり始めたようだ。」4ターン終了後に「そろそろ何かが出てきそうな予感がする。」と警告すること。ただし、『隠れイベント』が強制的に発動された場合は、ターン消費のカウントをリセットし、そこから5ターン消費するごとに『隠れイベント』に移行する。

ーーーーーーーーーーーーーー

▼『ベッド』を選択した場合

ベッドの表面には特に何もないようだ。プレイヤーは続けて『ベッドの中』『ベッドの下』を調べることができる。(それぞれ調査ごとに『調査力』を使う。1d30を振り成否を判定する。)

▽『ベッドの中』には何もなかった。体格が(小)または(中)のプレイヤーはここに隠れることができそうだ。

▽『ベッドの下』には『人形』が落ちていた。『人形』は洋風で、カールした金髪の美しい少女の見た目をしている。体格が(小)のプレイヤーは『ベッドの下』に隠れることができそうだ。

ーーーーーーーーーーーーー

▼『机』を選択した場合

机の上にはペンや定規、ハサミといった文房具が散乱している。机上のカレンダーはちゃんと5月までめくられている。プレイヤーは続けて『机の上』『引き出しの中』を調査することができる。(それぞれ調査ごとに『調査力』を使う。1d30を振り成否を判定する。)

▽『机の上』には魔法陣が書かれているようだ。さらに、2枚のメモが置いてあった。

●KP用情報

メモを見ることができるのは調査したプレイヤーのみである。

ーーーーーーーーーーーーー

メモには以下のように書かれている。

「大学生になり一人暮らしを始めて自由になるかと思っていたが、そんなことはなかった。僕らは未だに社会のレールの上を走っている。僕はこの何の面白みもない社会から脱する決意をした。ただし自殺するわけではない。異世界に生きたいのだ。」

「異世界への行き方は偶然ネットで見つけた。実に簡単な儀式だ。魔法陣を書き、人形と"火"を用意する。人形は肉体、"火"は生命の灯火、魔法陣は異世界への扉。魔法陣の上に人形と"火"を置き、呪文を唱えることで扉が開く。呪文は『イカイノマモノヨキタレ ワガミヲササゲル』だ。この儀式で"奴"は異界の扉を開き現れる。本来ならば代償が必要となるが、"奴"は人形と"火"を"ワガミ"と勘違いするため、僕の命は取られないらしい。バカめ。そして僕は"奴"が開いた扉の先へ行く。」

プレイヤーは他プレイヤーにメモを共有するかどうか選択できる。

●KP用情報

共有した場合、強制的に『隠れイベント』に移行する。共有しなかった場合、何も起こらない

ーーーーーーーーーーーーー

▽『引き出しの中』にはお札が1枚と、メモが2枚入っていた。メモには以下のように書かれている。

「注意点があった。念のため、この呪文は儀式まで唱えてはならない。もし近くに"奴"がいたら姿を見せてしまう。もちろん、通常は現世にいるはずもないが。」

「そういえば"奴"には普通にお札が効くらしい。ただし直接貼ることは出来ない。人間は"奴"を見ただけで正常な判断が出来ないためだ。退治するためには"奴"が代償として持っていく肉体の中に、一緒に詰めておく必要がある。」

プレイヤーは他プレイヤーにメモを共有するかどうか選択できる。

●KP用情報

共有してもしなくても特別なイベントは起こらない。

ーーーーーーーーーーーーー

▼『キッチン』を選択した場合

コンロやシンク、冷蔵庫がある。いずれも正常に機能するようだ。プレイヤーは続けて『キッチンユニットの中』『冷蔵庫』『冷蔵庫の中』を調べることができる。(それぞれ調査ごとに『調査力』を使う。1d30を振って成否を判定する。)

▽『キッチンユニットの中』には、鍋や包丁といった調理器具、皿や箸といった食器、他にはキッチンペーパーやロウソクといった小物がある。隠れられるスペースはここにはない。

▽『冷蔵庫』には、メモが1枚貼ってある。冷蔵庫のメモには以下のように書かれている。
「奴に人形を肉体と思わせる為には、人形の中に"身体の一部"を入れなくてはならない。」
プレイヤーはメモを共有するかどうか選択できる。

●KP用情報

メモを共有してもしなくても特別なイベントは起こらない。

ーーーーーーーーーーーーー

▽『冷蔵庫の中』には何も入っていないようだ。体格が(小)の人物は中に隠れることが出来そうだ。ただし寒くて凍えてしまうかもしれない。

ーーーーーーーーーーーーー

▼『クローゼット』を選択した場合

クローゼットには服が掛かっているようだ。
プレイヤーは続けて『クローゼットの中』を調べることができる。(『調査力』を使う。1d30を振り成否を判定する。)

▽『クローゼットの中』
クローゼットの中は広く、どんな体格のプレイヤーでも2人隠れることが出来そうだ。また、中には1枚のメモがあった。メモには以下のように書かかれている。

「儀式の参加者が複数の場合は、"身体の一部"は人数分必要だ。ロウソクもだ。人形は一つでいいらしい。僕は一人で儀式を行うつもりなので関係ないが。」

プレイヤーはメモを共有するかどうか選択できる。

●KP用情報

メモを共有してもしなくても特別なイベントは起こらない。

ーーーーーーーーーーーーー

・隠れイベント

"奴"が現れた。人や動物の類ではない。明らかにこの世のものとは思えないおぞましい雰囲気だ。プレイヤーは直ちに隠れなくてはならない。

●KP用情報

KPはダイスを振るごとにターンをカウントする。5までカウントし、そのターンを終えた後に『隠れイベント』が発生する。隠れ場所が発見できていない場合、また、隠れ場所が既に埋まっている場合は隠れることができない。隠れ場所には体格による制限があり、注意が必要だ。隠れ場所は『ベッドの中(小,中)』『ベッドの下(小)』『冷蔵庫の中(小)(体力-1)』『クローゼットの中(小,中,大)(2人まで)』であり、既に発見できている場所を使用できる。

▼隠れなかった場合

SAN値が1削られる。

▼隠れた場合

SAN値は削られない。『冷蔵庫の中』に入ったプレイヤーは体力が1削られる。

ーーーーーーーーーーーーー

・推理イベント

全プレイヤーが『調査イベント』を十分に終えたと納得し、『推理イベント』に進むと『調査イベント』には戻れないことを確認した上で進むことが可能になるイベントである。

プレイヤーは与えられた情報をもとに自由に推理を行い、発言することができる。この際にはターンは消費されない。

推理に行き詰まった場合は、『知力』『直感力』を使ってKPによるヒントを得ることができる。1d10を振り成否を判定する。ダイスを振るごとにターンが消費され、『調査イベント』同様に、カウントが5のターンの後に『隠れイベント』が発生する。

●KP用情報

ED1(グッドエンド)条件は以下の手順を全てこなすことである。

①プレイヤーそれぞれの身体の一部を入手する

ここで、身体の一部としては、髪や爪のようなプレイヤーのダメージにならないものと、血や指のようなダメージになるものが考えられる。後者の場合は1d5を振ってダメージを与える。身体の一部の入手には、包丁やハサミを使用すると良い。

②お札を入手する

③①と②を人形に詰める

④ロウソクをプレイヤーの人数分入手する

⑤ロウソクにコンロで火をつける

⑥③と⑤を魔法陣に並べて呪文を唱える

KPはこの情報に沿ったヒントを与えることができる。

ーーーーーーーーーーーーー

・儀式イベント

全プレイヤーが『推理イベント』を十分に終えたと納得し、『儀式イベント』に進むと『推理イベント』には戻れないことを確認した上で進むことが可能になるイベントである。

プレイヤーは『推理イベント』での情報をもとに儀式を執り行う。この際にターンは消費されない。

呪文を唱えたら『儀式イベント』は自動的に終了される。『儀式イベント』の内容によってエンディングが決定する。

ーーーーーーーーーーーーー

・エンディング

ED1条件は以下の手順を全てこなすことである。
①プレイヤーそれぞれの身体の一部を入手する
②お札を入手する
③①と②を人形に詰める
④ロウソクをプレイヤーの人数分入手する
⑤ロウソクにコンロで火をつける
⑥③と⑤を魔法陣に並べて呪文を唱える

その他EDの条件は以下のようである。
❶プレイヤーいずれかの身体の一部を詰めなかった場合、そのプレイヤーはED2へ。
❷❶判定後、火のついたロウソクをプレイヤーの人数分並べなかった場合、足りなかった数だけプレイヤーをKPが選び、ED2へ。
❸❷判定後、お札を詰めなかった場合、残った全プレイヤーはED3へ。

▼ED1

儀式は完璧に成功した。君たちの肉体や生命が奪われることはなく、霊験あらたかなお札の力で"奴"は排除された。ワンルームの扉は何事も無かったかのように開けることができ、足早にアパートを後にした。帰りの道中は皆、終始無言だった。
時が経ち、「野口くん」のいない日常に慣れてきた頃、それまで頑として話題にしなかったその日の恐ろしい出来事について、君たちの中の誰ともなく話し始めた。「野口くん」は何処へ行ってしまったのか、結局のところ分からず仕舞いであった。何故なら、儀式は成功したものの、異界の扉は開かれなかったからだ。最終的にこう、結論づけた。
まず、"奴"は異界にいたわけではない。初めから現世にいたのだ。故に彼の儀式の際も異界の扉は開かれなかった。さらに、彼は儀式を一つだけしくじった。お札を入れなかったことだ。お札を人形に詰めたなら、部屋に残っているはずがない。彼はお札を貼らずとも、"奴"の隣をすり抜けて異界へ旅立てば問題ないと考えたのだろうが、異界への道は存在していなかった。そして正気を失い、部屋を出て失踪したのだ。これで部屋の鍵が開いていたことも説明がつく。
しかし、肝心の「野口くん」の行き先は誰にもわからない。精神病院にでも入れられたか、はたまた、のたれ死んだか。いや、案外うまくやっているのかもしれない。そもそも、彼は特別異界に行きたかったわけではないかもしれない。ただ、レールを外れる言い訳が欲しかっただけなのかも知れない。(完)

▼ED2

数日後の朝のニュースで、このような報道があった。「本日、東京都三鷹市の住宅街のアパートの一室で遺体が発見されました。警察によりますと、死亡したのは、この部屋を借りていた野口一郎さんの友人の(プレイヤー名)さんと見られております。また、野口一郎さんも行方不明となっており、警察は引き続き捜査を進めていく方針です。」(完)

▼ED3

とある住宅街の掲示板には「探しています」の張り紙が並んでいた。行方不明者の名は、野口一郎、(プレイヤー名)だった。日本の行方不明者数は、年間で9万人弱にも上るとされている。そのうち1/3以上は10代20代である。彼らはその中のごく一部でしかなく、近しい人以外のほとんどの人々にとっては事件としてすら扱われないだろう。(完)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?