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<入院医療等分科会のまとめ>

こんにちは!さりゅの干物です。

2022年診療報酬改定の議論も第1ラウンドが終了し、いよいよ第2ラウンドへと突入間近となりました。ここで、これまでの流れを大まかにまとめていきたいと思います。何かの参考になりましたら幸いです。

10月21日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(入院医療分科会)で、2022年度診療報酬改定に向けた「入院医療改革」の最終とりまとめが行われました。

今後は、議論の場を中央社会保険医療協議会に移し「どういった見直しを2022年度改定で行い、どういった点を今後の検討課題にするか」というの「決定」フェーズに入ってきます。

資料を添付しておりますが・・・全部読破するには多少の時間が掛かり気味なので、要点に絞って解説して参ります。

入院医療について

今回の第1ラウンド(仮)では、高度急性期~急性期・回復期・慢性期までの入院医療や救急医療管理加算等の検討結果についてとりまとめが行われ、議論が重ねられてきました。

ここでは、看護必要度のことに関してお伝えします。

「重症度、医療・看護必要度」

(令和3年度第7回)入院医療等の調査・評価分科会【別添】資料編 2021.9.8

①看護必要度とは「急性期入院医療提供が相応しい患者」を抽出するための指標として活用されています。

A項目(モニタリング・処置等)/B項目(患者の状態等)/C項目(手術等の医学的状況)の3つを合わせて急性期入院医療の提供患者を定義し、その受け入れ割合をもって「急性期入院医療提供を行うに相応しい病院」の基準としています。ただし、「急性期入院医療提供が相応しい患者」の側面を切り取るものであり、ズレが出てきます。

例を挙げるとA項目(モニタリング・処置等)では「患者に実施する」ことが評価されているため、「必要性が低い患者にも当該処置を行う」(本来は行ってはいけないが)ことで 評価点を獲得できるケースもあります。このため、毎改定ごとに「改善・改良」が図られてきているのが現状です。

ここでは、A項目の【心電図モニターの管理】【点滴ライン同時3本以上の管理】、B項目の【相関関係】、C項目の【期間妥当性】についてお話して参ります。

心電図モニターの管理】

急性期一般入院料1~5に限定となるが、看護必要度Ⅰ・Ⅱともに心電図 モニターの管理が最も該当患者割合が高い傾向を示しています。  

(令和3年度第7回)入院医療等の調査・評価分科会【別添】資料編 2021.9.8

(令和3年度第7回)入院医療等の調査・評価分科会【別添】資料編 2021.9.8

また、退院日及び退院前日に心電図モニターを実施している患者が一定程度いることも判明しています。

(令和3年度第7回)入院医療等の調査・評価分科会【別添】資料編 2021.9.8

(令和3年度第7回)入院医療等の調査・評価分科会【別添】資料編 2021.9.8

(令和3年度第7回)入院医療等の調査・評価分科会【別添】資料編 2021.9.8

(令和3年度第7回)入院医療等の調査・評価分科会【別添】資料編 2021.9.8

心電図モニター管理に関しては、▼「専門的治療」の該当は4~6割弱、C項目該当割合は1~2割弱にとどまる▼退院日やその前日にも心電図モニター管理を行っている患者が1~2割いる―ことが問題視されました。

診療情報・指標等作業グループにおける検討内容について

厚労省がさらに詳しくデータ分析を行ったところ、例えば「退院前日・退院日ともに心電図モニターを装着する例が多く、退院日にのみ装着する割合は小さい」「自宅退院患者数が多い病院では、退院日・退院前日の心電図モニター装着割合が多いように見える」ことなどが明らかになりました。

この退院日前日モニター管理については「心電図モニター管理が必要なほど重篤な患者を退院させてよいのか?それとも、退院可能なほど回復した患者に、心電図モニターを装着してA項目1点を獲得しようとしているのか?」といった疑問が生じます。自宅退院可能な患者は、医療の必要度が相対的に小さい(医療の必要性が高ければ回復期病棟などへの転院が多くなると考えられる)患者に心電図モニター装着割合が高いことは、やはり問題なのではないかとの議論になるのは容易に考えられます。

この点、入院医療分科会の下部組織である作業グループでは…

▼ 看護必要度の他項目該当割合との掛け合わせ結果

▼ 看護必要度から「心電図モニター管理」を除外した場合の影響

等を見て、心電図モニター管理が急性期入院医療の評価指標として相応しいかどうかを検討すべきとの考えを明示、端的に心電図モニター管理をA項目から除外して重症患者割合などを試算し、その影響を見て「心電図モニター管理を、このままA項目に残すのか、除外するのか」を中医協などで決すべきとの提案をされています。

以上のことから作業グループや入院医療分科会では、心電図モニター管理の妥当性に疑問を持つ声が少なくなく、中医協総会での議論の結果が待たれます。

【点滴ライン同時3本以上の管理】

使用薬剤が2種類以下であるにも関わらず、ライン3本以上管理に該当するケースが一定程度存在しています(大体1~2割強)

(令和3年度第7回)入院医療等の調査・評価分科会【別添】資料編 2021.9.8

点滴同時3本以上の管理」に該当する患者の使用薬剤数について分析すると、4種類が最も多かった一方で、同時3本以上という要件でありながらも2種類以下という患者が存在し 、評価指標として適切か検討が必要との指摘があります。中には投与薬剤が2種類以下で中にはゼロの患者もいます。

一体、何を点滴しているのだろうか?という疑問を思い浮かべるのは私だけでしょうか?(これには「薬剤の記載漏れ」の可能性や評価の間違えが一定数あるやもしれませんが・・・)

その結果、心電図モニターの管理と共に評価指標として適切か検討が必要との指摘があります。

以上により除外した際の分析が行われた結果、医療機関に与える影響などを考慮し、議論が進められることとなりますが、いざ「除外」となった時に焦ることのないように自院での分析も急がれるところと言えます。

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B項目・C項目

B項目の衣服着脱・口腔清潔・食事摂取(とりわけ衣服着脱と口腔清潔)には強い相関関係がある(1項目に該当すれば、自動的に他項目にも該当してしまい、B項目について「3点以上」という基準を設けた意味が失われてしまいかねない)→「B項目の相関関係を考慮すれば、項目の整理を行うべき(例えば衣服着脱と口腔清潔は1項目に整理するなど)」

C項目の「骨の手術」は術後3日目から「A項目ゼロ点」となる患者が過半数となる(現在は11日間「C項目1点」を獲得できるが長すぎる可能性がある)→「骨の手術はC項目該当日数の適正性を考慮していくべき」

などの議論が進められています。

上記のB項目の基準変更やC項目の日数短縮による自院への影響がどれぐらいなのかも分析が必要です。

また、ICUの看護必要度、A4点患者の98%はB3点獲得しており、B項目の存在意義は小さいとの見方から、「看護必要度から除外すべきか否か」で議論もあります。

診療情報・指標等作業グループにおける検討内容について

「看護必要度から除外すべき」

▼ICUでは「A項目4点以上・B項目3点以上」で重症とカウントされる(重症患者割合8割以上等の施設基準あり)が、「A項目4点以上」に該当すれば、98%以上が「B項目3点以上」であり、B項目の存在意義が極めて小さい

▼多忙な看護職員の負担を少しでも軽減する必要がある

であることから提案され。さらにA項目について、一般病棟と同様にDPCのEF統合ファイルを用いた看護必要度Ⅱを導入することで、さらなる看護職員の負担軽減が図れるとの考えも同時に提唱されています。

これに対して…

▼ICUでは2対1以上の看護配置をしており看護必要度の評価に係る負担は大きくない

▼高度急性期から回復期まで「B項目」という統一指標で患者の状態を見ることで、看護量や看護の成果を把握することは重要である

ことから「B項目の存続」を訴えています。また、「看護の成果把握」という視点でも「B項目存続」の考えを示しています。

ICU看護必要度において「B項目を存続すべきか否か」の議論は、今後、中医協に場を移して行われますが、牧野委員が引き合いに出した「A項目4点以上を獲得すれば、自動的にB項目3点以上もほぼ獲得されている」というデータを踏まえると、ICUに限っては「B項目を存続させる意義は小さい」と判断される可能性もありそうです。

なお、「現場でB項目のうち、「患者の状態」と「介助の有無」を掛け合わせることとなった測定は継続でよいとの議論もありました。

長文になりましたが、参考になれば幸いです。



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