見出し画像

言葉が出ないという困り感を考える

言葉がなかなか出ない子という困り感から、支援を求める方がいます。
言葉が出ないという一例に、様々な背景や要因が隠れているのでアセスメントも支援方法も様々です。

画像1

1.聞く機能に困難が生じている

赤ちゃんは胎児の状態から聞くという機能を使うことができます。そのため、お腹に向かって話しかけるなどの様子はそれを踏まえたものと考えます。
また、お母さんの心音を聞いて育っているので砂嵐の音を聞くと泣き止む等の実証もされていますよね。
しかし、中には聞く機能に困難が生じて音に耳を傾けることが難しい子もいます。
赤ちゃんの遊びで音が鳴るおもちゃが多いのですが、音を鳴らしても反応しないことや目を向けることがない場合には聴覚検査が必要です。

2.発声、構音に困難が生じている

 舌の動き、口唇周りの筋肉にまだ不器用さがあることや、息の吐き方などさまざまな機能が総合的に使われることで言葉を発している私たちの身体。
咀嚼が発達中で飲み込みに時間をかけていたり、噛みちぎりが難しそうだったりするなど食事の様子をよく見ると気づきがあると思います。
 またそれに付随して、日頃からよだれが出ている子は口唇周りの筋力がうまく使えていないかもしれません。そのような子はラ行やタ行などをハッキリと発声できなかったりすることで相手が聞き取りにくさを感じているということがあります。そういう経過がある事で言葉を話すのに自信が無いという姿もみられるかもしれません。

3.対人への緊張感が高い

 以前、家では話すのに園や療育施設では話せないと言う子を3人ほど担当しました。元々持った気質なのか、家庭の環境なのか、はたまたどちらもなのか原因は様々かと思いますが人の視線が気になるなどして、話が出来なくなるという子でした。
 首を傾げたり、頷いたりというノンバーバルなコミュニケーションによる表現で意思の疎通ができていたので、言葉への受け取りは理解しているようでした。
 しかし、表出言語がほぼ無いという様子でした。
話しかけても表情も変わらない、頷きや拒否の仕草もない子もいました。場面緘黙と言われる症状なのかもしれません。

画像2

どんな支援が保育士や放デイとしてできるのでしょうか?

1.医療機関につなげてあげること

 読んでも振り向かない、大きな音にも反応しないなどの聞くこと自体に困難が生じている場合には聴覚検査が必要となります。

 近年は発達障害による聴覚過敏の問題も注目されるようになりました。聴覚には問題がないけど、「音がゆがんで聞こえる」「音が大きく聞こえる」「水の中にいるような聞こえ方になる」等 一般的な音の受け取り方と違ったりする方も中にはいるそうです。どちらにせよ、まずは聞こえているかどうかを確認する必要があると思います。耳鼻科や小児科、保健師さんへ相談すると良いでしょう。

2.子どものまわりの環境を知ること

 どんな習い事をしているか、土日の過ごし方、保護者がどのような人であるか、親せきや友人などと交流しながら生活しているか、保護者の仕事の環境、夫婦間の関係性など、保護者の生い立ち、出生時からある不安など「保護者」という人的環境を知ることも必要です。

 ある家庭では母子家庭であることを引き目に感じている保護者が、子どもはきちんと育てなきゃならないという思いで厳しく育児をしてきたいうケースがあった。さらにその背景には離婚したことを実親に責められ頼れる状態でないことがわかった。そのため子どもには自立してほしいという気持ちが強くなり、いじめや成績の悪さも叱って指導するようになっていました。その結果、知的発達の緩やかさにも気づけず、子どもも二次障害的に人と話すことが難しくなっていたということもありました。

 もっと早くに保護者の置かれた環境を保育園や学校が知っていて、適切な対処をしていたらまた違ったのかもしれません。また、知的発達のスピードに関しては保護者だけでの問題でなかったはずなのでいかに連携がとれていなかったかも悔やまれます。このようなことが起きないように保護者を一人の人として関わっていくことが福祉には必要と考えています。

3.発達段階を学び、それに合わせた関り・活動を行う

 何度も私のnoteにはしつこく書いているのですが、専門職として倫理的知識に基づく技術を必要とされている立場を理解し、訓練・教育をしていくことが必要と考えています。その一つとして最低限でも定型発達段階を学び、実年齢に合わせた関りだけでなく、身体や情緒の発達それぞれに合わせた関りをするべきだと思っています。

 介護でも障害の特性に合わせて介護します。子どもも発達の特性に合わせて保育や教育をするのが当たり前になってほしいです。このことが結果的に「自信の無さ」「対人過敏」を軽減することにつながっていくことも多くあります。求めすぎない人間関係を作るコツでもあります。

画像3

 まだ下の動きが左右に動けていないと分かれば、頬を舌で押す遊びを歌に合わせて提供したり、食事で海苔巻きを出してかみちぎりの練習をしたり等、関わる側の迷いも少なくなります。

 1つの困り感に対してどう考えるか、氷山の一角モデルを「言葉が出ない」というケースで考えてみました。大まかな発達段階はこちらのマガジンにまとめております。ぜひ、ご覧ください。

https://note.com/himizu815/m/m6350f5bca1c2



お掃除係の実習を体験した保育士さん、きちんとした指導・教育を受けられずも頑張る支援者さん…など現場に困り感を持っている方へサポートすることで、子どもたちに還元されるものがあるのではと信じています。よろしくお願いします。