イルカとゴリラのたび
空洞が響く。
風の音が洞窟の壁をかすめては耳触りの良い優しい音を細長い空間いっぱいに拡げていく。
水の音。
僕らの歩みに合わせて、足元からピアノのような民族楽器のようなピチャピチャが加わる。
視界が真っ黒になってどのくらいになるだろう。
聴覚と触覚に頼り始めてどのくらいになるだろう。
悪くはない、水と土の深い匂いが続いた。
肌寒い、といっても清められているような、マイナスイオンに包まれているような洞窟だった。
僕らはお互いの片側の手のひらだけに温もりを感じて、ひたすらに進む。
不思議と怖くはなくて、
それはイルカがいるからなのか、
いつだって夜もそうだったからなのか、
最近、太陽の方が目に染みていたからなのか、
まっくらは意外に優しく感じた。
いつかこの暗さも目に染みるようになるのか。
太陽がぼくらの体を貫くようになるのか。
楽しみなような、寂しいような。
ひとまず、何も言わず、イルカと歩く。
たまにイルカは喋るけど、意味はわからない。
ただとても楽しそうなことだけ、わかる。
僕は応えない。応え方を知らない。
ただ体温を伝えるだけ。
そして、その楽しそうな空気を、洞窟中にぼにゃりと広がる空気を、感じて、とうとうと歩くだけだ。
どこまでも行こう。
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