お料理奮闘記

お料理奮闘記 ~闇の力を喰らったじゃがいも~

お料理奮闘記を話す前に私の料理スキルについて簡単に話しておきます。
私は料理が苦手です。

よく見かける『誰でもできる!』『簡単!』とか書いてある料理本のことを信じていません。クックパッドも信じていません。
基本的にああいうものは結局料理ができる人間に向けたもので、本当に料理ができない人間のことをわかっていないと思っています。

なのでいつも“何を作るか”ではなく、“自分が操れるこの食材ならなにができるか”というのを検索しています。
かつその中からさらに自分ができそうな料理工程・材料があるものを探して作っています。

というのも、そもそも調味料をそろえていないんですね。みりんとか買いません。
なぜなら調味料がたくさんあっても使いこなせない上に腐らせるから。

次に計量カップ・計量スプーンも持っていません。まあこれは買えよという話なんですけど。
今のところは無印のカレー用のスプーンとお米の計量カップでなんとなくやってます。母親が使ってなかったからなんとなくまだ買わなくていっかーと思っているうちに一人暮らしして二年が経過しました。
二年経っても私が作れるものは本当にわずかなものなのですが、ここ最近はお金がなさすぎて節約のために毎日のように鍋を作って食べていました。毎日一人鍋パーティーです。

ある日、稽古が終わりお腹を空かせた私。
今晩は鍋の残りの汁にうどんを一玉入れてお肉と卵入れて食べるか~なんて考えながら電車に乗られている途中でふと、そういえばうちにじゃがいもがあったなと思い出しました。
そういやじゃがいも買ったはいいものの使っていないままの子が五個くらいあったなと。
料理ができない私は考えました。馬鹿でもできるじゃがいもを使った料理はなにか。そして思いついたのがじゃがバターです。
ふかしたじゃがいもにバターをかけただけなのにあんなに美味しくなる、しかもわりとお腹が膨れる、コスパのいい料理。

ですが、料理ができない人間が蒸し器など持っているはずがありません。
そのとき思い出しました、確かじゃがいもは電子レンジでふかせるはずだということを。

すぐにインターネットで「じゃがバター 電子レンジ」で検索です。そして出ました。「レンジで簡単 じゃがバター」というページです。
工程はこちら。


材料
じゃがいも
水 適量
有塩バター


作り方
準備 じゃがいもはよく洗い、芽を取り除いておきます。
1.じゃがいもは皮付きのまま、キッチンペーパーで包みます。
2.水を入れたボウルに1をくぐらせ、ラップで包みます。
3.600W電子レンジで、7分程じゃがいもに中まで火が通るまで加熱します。
4.ラップとキッチンペーパーを外し、十字に切り込みを入れます。
5.お皿に盛り付け、切り込みに有塩バターを乗せて完成です。

簡単そうじゃないですか?しかも動画まで載ってたものだからこれなら猿でもいけるなと、私でも作れそうだなと、意気揚々とじゃがいもの芽をとり、キッチンペーパーを巻いて水でたっぷり濡らしてラップで巻きました。
そしてそれを電子レンジに投入して待つこと七分。

電子レンジを開いてじゃがいもを持ったら、なんだか異常に軽いんですよ。発泡スチロールか?ってくらいの軽さ。
そして恐る恐るキッチンペーパーを剥がしてみると、砂漠のように乾ききったじゃがいもが現れました。

私の目の前に現れたじゃがいも


私は、こんなに萎びたかわいそうなじゃがいもを未だかつて見たことがありません。化粧品の広告のビフォーだってここまでしなしなじゃないよ。
しかも固すぎてまったく包丁が通らないんです。通る気配もない。

驚きすぎて動揺した私はすぐに友人に連絡をして、この呪いを受けたかのようなじゃがいもの写真を送り、次に友人がこのレシピ通りにじゃがバターを作ってみることに。

友人が作成したじゃがバター


この差って何ですか?に応募したいくらいの差である。
いやまじでなんの差?ハーブソルトまでかけておしゃれかよ。


友人曰く、恐らく私の家の電子レンジのワット数が高いために(うちの電子レンジは730Wある)加熱しすぎて水分が抜けたのではないか、ということだったので、もう一度念入りにじゃがいもとキッチンペーパーを濡らし、今度は5分だけ加熱してみました。
その結果がこちら。

さっきよりはまだまし。
ましだけど、まるでおばあちゃんの顔を縦に切ったかのような感触でした。いや切ったことないけど。
料理ができない私にもこれは食べられないものだなと瞬時に理解することができる感触でしたね。

節約するはずのレシピでまさかのじゃがいもを二個も無駄にするという所業に深く落ち込んだ私は泣きながらうどんを食べて夕食を終えました。
悲しかった。
悲しみのあまり別の友人にもこのじゃがいもの写真を送ったところ、「ヴォルデモートに見えてきた」と返ってきました。
ご丁寧に参考画像までくれた。

なるほど。確かに似ている。
きっとうちの電子レンジの中で闇の力をもろに喰らってしまったのだろう。そうに違いない。そういうことにしてください。

そして私は学んだ。じゃがバターはお祭りの屋台で食べるに限る。

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