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明後日朝顔プロジェクト in 姫路/「明後日のアートの学校」アーカイブ

明後日朝顔プロジェクトとは

 2003年「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」の参加アーティストとして日比野が新潟県松代町(現十日町市)莇平の住民たちと始めたプロジェクト。<アート>に馴染みのなかった住民たちが、それでも日比野を歓迎するために花壇に植えてくれたパンジーを見て、日比野は「想いをかたちにして伝える」という表現活動の原点を感じ、既に廃校となっていた旧莇平小学校で住民たちとともに朝顔を育てることになりました。木造2階建ての校舎の屋根まで張られたロープをつたって朝顔は蔓を伸ばし、花を咲かせ、秋には種を実らせました。「大地の芸術祭」の会期は終わっても、皆と一緒に育てた朝顔の種は手元に残っている。これを来年植えてまた朝顔を育てよう。こうして、莇平の住民たちの記憶と想いが詰まった種は翌年も芽を出し、蔓を伸ばし、花を咲かせ、また種を実らせました。2005年には莇平で育てられた朝顔の種が水戸へ、2006年には福岡、大宰府、岐阜へ、そして2007年には横浜や熊本など新たに8地域に運ばれ、そのうち金沢では金沢21世紀美術館主催「日比野克彦アートプロジェクト『ホーム→アンド←アウェー』方式」において、莇平をはじめ全国の13の地域から種が集められ、円形の美術館をぐるりと囲むように植え育てられました。「明後日朝顔」がプロジェクトとしての輪郭をあらわす契機となったのが、「明後日朝顔プロジェクト21」と名付けられたこのプロジェクトでした。さらに金沢21世紀美術館は、会期中に日比野が制作した99点の《明後日の種》と併せて、「明後日朝顔プロジェクト21」のコンセプト・ドローイングをも収蔵することで、プロジェクトから生まれた<モノ>のみならず、プロジェクトという<コト>そのものを美術館のコレクションとするに至ったのです。その後も明後日朝顔の種は全国へと運ばれ、2021年現在、全国28地域+1団体で取り組まれています。
 「明後日朝顔プロジェクト」は、花を咲かせることを目的としているわけではありません。明後日朝顔の育成を通じて、人と人・人と地域・地域と地域のコミュニケーションを促すこと、そして明後日朝顔を育てるひとりひとりが、その体験から自分の内面に生じた様々な気持ちを見つめることが大切なのです。「明後日朝顔プロジェクト」においては、種が極めて重要な存在となっており、その種がこれまで「いつ・どこで」収穫されてきたかを示す「種の履歴」が記録・管理されています。種こそが、明後日朝顔を育てる過程で生まれた多様な交流の記憶やひとりひとりの想いが詰まったかたちであり、次の年・新たな土地へとそれらをつなげてくれるからです。この考えは、日比野が語る「明後日朝顔の7つの気持ち」にもあらわれています。「種を収穫したときに芽生える、記憶を形にした不思議な気持ち」から始まり、種を他の地域に送るとき、土に植えるとき、蔓がロープに巻きついたとき、花が咲いたときの気持ちが続いたのち、最後に「種の房ができた時に生まれる、これまでとこれからが繋がる気持ち」が挙げられています。種で始まり種で終わるこれらの気持ちは、一年草である朝顔の発芽から種をつけるまでの1サイクルに対応していますが、「明後日朝顔プロジェクト」は種に着目することで、時間と空間を超えてこれらの気持ちを紡ぎ続けるのです。

姫路での取組について

 姫路では、書寫山圓教寺を拠点に市内各地で「明後日朝顔プロジェクト」が展開されました。2021年3月~5月にかけて、姫路市内の全ての市立幼稚園・小学校・中学校高等学校等や県立・私立の各種学校、そして各種民間企業・団体に、日比野のメッセージを添えて明後日朝顔の種を配布し、参加を呼びかけたところ、95件(2021年11月時点)の学校・企業・団体等が参加しました。
 ここでは、拠点となった圓教寺・摩尼殿での明後日朝顔プロジェクトの展開の様子をご紹介いたします。

@書寫山圓教寺・摩尼殿

6月4日(土)| 摩尼殿での会場設営

6月6日(日)の「苗植え式」に向けて「明後日朝顔プロジェクト」の実施(展示)に必要な会場設営を行いました。

6月6日(日)| 苗植え式

美術館からの呼びかけによる参加者たちが自ら育てた明後日朝顔の苗を持参。明後日朝顔に取り組んでいる全国の地域から送られてきた苗と合わせて、計20種類の種の履歴をもつ明後日朝顔が、摩尼殿から垂らされた100本のロープのもとに植えられました。

photo: 喜多直人
photo: 喜多直人

~11月5日(金)| 摩尼殿での展示

photo: 喜多直人
photo: 喜多直人
photo: 喜多直人
photo: 喜多直人
photo: 喜多直人
photo: 喜多直人
photo: 喜多直人

10月24日(日)| 根切り式

種の収穫に向けて蔓を枯らすための「根切り式」。
はじめに、加持した水で行う清めの仏教儀式である「洒水(しゃすい)」が、圓教寺の僧侶により執り行われました。

photo: 喜多直人
photo: 喜多直人
photo: 喜多直人

11月6日(土)| 収穫祭


photo: 喜多直人
photo: 喜多直人
photo: 喜多直人
photo: 喜多直人
photo: 喜多直人

@姫路市立美術館

美術館での「朝顔プロジェクト」は、友の会主催により「明後日朝顔プロジェクト@みんなの美術館・姫路~思い、記憶をつなぐ種をまく~」として取り組まれました。

7月17日(土)・24日(土)| 苗植え式
11月7日(日)| 根切り式
11月27日(土)・28日(日)| 収穫祭

photo: 喜多直人
photo: 喜多直人
photo: 喜多直人
photo: 喜多直人
photo: 喜多直人
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